相続登記の免税措置|評価額100万円以下の土地

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相続した実家を整理していたら、母屋とは別に、亡くなった父の名義のままになった小さな山林や、家の前を通る細い私道(一般に複数の家で使う通路部分の土地)が残っていた、というケースは珍しくありません。相続登記(不動産の名義を相続人へ変える手続き)が義務になった今、こうした値のつきにくい土地も名義変更が必要です。ただ、価値の低い土地にまで通常どおり税金がかかると割に合いません。そこで用意されているのが、評価額の低い土地について登録免許税(登記のときに納める国税)を免除する制度です。

結論から言うと、判断の基準はひとつだけです。名義を変える土地の固定資産税評価額が100万円以下なら、その土地の相続登記にかかる登録免許税は免税になります(令和9年3月31日まで)。建物ではなく土地であること、価額が100万円以下であること、そして申請書に免税の根拠となる条文を書き忘れないこと。この3点がそろえば税負担はゼロです。以下で条件と手続きを具体的に見ていきます。

評価額100万円以下の土地は相続登記の登録免許税が免税になる

相続登記の登録免許税は、本来「不動産の価額(固定資産税評価額)×0.4%(1,000分の4)」で計算します(国税庁タックスアンサーNo.7191、2026年9月時点・公式サイト確認)。この0.4%が、相続で取得した土地の価額が100万円以下の場合には免除されます。租税特別措置法という法律にもとづく特例で、令和9年(2027年)3月31日までに登記を受けるものが対象です。

ここで重要なのは、免税の対象が「土地」に限られる点です。建物(家屋)やマンションの専有部分は対象外で、これらは価額が低くても通常どおり0.4%がかかります。実務で効いてくるのは、山林、原野、田畑、そして私道のように、一筆(土地の登記上の単位)あたりの評価額が小さい土地です。実家の敷地や母屋は評価額が100万円を超えて課税、隣接する山林や私道は免税、というように、同じ相続でも土地ごとに扱いが分かれます。

免税かどうかは土地一筆ごとに判断する

100万円以下かどうかは、原則としてその土地一筆の価額で判断します。複数の土地をまとめて相続する場合でも、免税になるのは価額100万円以下の土地だけで、100万円を超える土地には0.4%が課税されます。まず市区町村の固定資産評価証明書(土地・家屋の評価額を証明する書類)や名寄帳(同じ人が持つ不動産を一覧にした帳簿)で、筆ごとの評価額を確認するところから始めます。

自分の土地が免税になるかの判断フロー

免税の対象かどうかは、次の順で確認すると迷いません。

  1. 名義を変えるのは「土地」か。建物・マンションの建物部分なら対象外で、通常の0.4%がかかります。
  2. その土地一筆の固定資産税評価額は100万円以下か。100万円ちょうどは「以下」なので対象に含まれます。101万円なら対象外です。
  3. 登記を受けるのは令和9年3月31日までか。この期限を過ぎると、現時点の制度では免税は使えません。
  4. 相続による登記か。相続人への名義変更(相続・遺贈)が対象で、生前の贈与や売買は対象外です。

この4つすべてが「はい」なら、その土地の登録免許税は免税です。ひとつでも「いいえ」があれば、その土地は原則どおり評価額×0.4%を納めます。

免税額はいくらか(計算例)

免税で実際にいくら浮くのかを、評価額ごとに並べます。免税がなければ「評価額×0.4%」を納めるところが、条件を満たせば0円になります。

土地の例 固定資産税評価額 免税がない場合の登録免許税 免税適用後
私道 30万円 1,200円 0円
山林 80万円 3,200円 0円
宅地 100万円 4,000円 0円
宅地 120万円 4,800円 4,800円(対象外)

金額そのものは数千円で、決して大きくはありません。それでも、名義がつかないまま放置してきた低価値の土地ほど、この免税があることで「登記のたびに税金を払うのはもったいない」という心理的なハードルが下がります。相続登記が義務化された今、免税で税負担なく名義を整理できるのは実務上の利点です。なお、相続登記全体の費用感や、司法書士に頼んだ場合の報酬まで含めた目安は、相続手続きの費用相場をまとめた記事で確認できます。

申請書に免税の根拠条文を書かないと免税されない

この免税で見落としやすいのが、申請書への記載です。免税は自動では適用されず、相続登記の申請書に免税の根拠となる条文を明記して初めて認められます。土地の価額が100万円以下であることによる免税の場合、書くべき条文は「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」です(法務局の様式・案内で確認)。

申請書の登録免許税を記載する欄に、税額を書く代わりにこの一文を入れます。記載を忘れると、条件を満たしていても課税されて登記が進んでしまう、あるいは補正(申請の訂正)を求められることがあります。自分で申請する場合は、法務局の記載例で条文番号を一字ずつ照らし合わせておくと安全です。第2項が「土地の価額100万円以下」による免税の根拠で、条文番号を取り違えると免税が通りません。

免税の期限は令和9年3月31日まで

この免税は期限つきの特例です。現時点では令和9年(2027年)3月31日までに登記を受けるものが対象とされています。相続登記は令和6年(2024年)4月1日から義務化され、原則として取得を知った日から3年以内の登記が求められています。義務化の期限と免税の期限は別ものですが、放置している低価値の土地があるなら、免税が使えるうちに動くほうが得です。制度の延長や見直しがある可能性もあるため、申請の前に最新の取り扱いを法務局・国税庁の案内で確認してください。

よくある質問

評価額が100万円ちょうどのときは免税になりますか。

「100万円以下」なので、100万円ちょうどは対象に含まれます。101万円になると対象から外れ、その土地は評価額×0.4%の登録免許税がかかります。

建物も評価額が低ければ免税になりますか。

この免税の対象は土地だけです。建物(家屋)は価額が100万円以下でも対象外で、通常どおり評価額×0.4%を納めます。土地と建物をまとめて相続する場合は、土地部分だけ免税、建物部分は課税という形になります。

複数の土地を相続します。全部が免税になりますか。

免税になるのは価額100万円以下の土地だけです。土地一筆ごとに評価額で判断し、100万円を超える土地には0.4%がかかります。まず評価証明書で筆ごとの評価額を確認してください。

申請書に条文を書き忘れたらどうなりますか。

免税は申請書への記載が要件です。書き忘れると、条件を満たしていても課税されたり、補正を求められたりすることがあります。「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と登録免許税の欄に記載します。

贈与で受け取った土地でも免税になりますか。

この免税は相続(遺贈を含む)による登記が対象です。生前贈与や売買による名義変更は対象外で、贈与の場合は税率も0.4%ではなく2%になります。

免税を使うと戸籍などの費用もかからなくなりますか。

免税になるのは登録免許税だけです。戸籍謄本や評価証明書の取得実費、司法書士に頼む場合の報酬は別にかかります。免税は「登記のときの国税がゼロになる」制度と理解してください。

参考・出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.7191「相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
  • 法務省「不動産を相続した方へ 相続登記・遺産分割を進めましょう」(相続登記の申請義務化) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
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