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親の家を相続したものの、司法書士に頼むと報酬が数万円かかると聞いて、「そのくらいなら自分でできないか」と法務局のサイトを開いてみた。ところが戸籍だ評価証明書だと聞き慣れない書類が並び、どこから手を付ければいいか分からず手が止まる。相続登記を自分でやろうとする人が最初にぶつかるのは、費用よりもこの「手順と書類の全体像が見えない」という壁です。
結論から言えば、相続登記を自分でやる場合の費用は登録免許税(国に納める税金)と書類の取得実費だけで、司法書士報酬はまるごと消えます。つまり費用の大小はほぼ税額で決まり、あとは「必要書類を集めて申請書を作り、法務局へ出す」という作業を自力でこなせるかどうかの判断になります。本記事では、その費用の中身、手順、必要書類一覧、そして自分でやるべきか頼むべきかの線引きを順に示します。
相続登記を自分でやると費用はどこまで下がるか

相続登記でかかるお金は、大きく「誰に頼んでも同じ法定費用」と「頼んだ場合だけ発生する司法書士報酬」に分かれます。自分でやるという選択は、このうち後者をゼロにすることを意味します。
自分でやっても必ずかかる費用
- 登録免許税: 登記を申請するときに国へ納める税金です。相続による所有権移転登記の税率は固定資産税評価額の0.4%(1,000分の4)と決まっており(国税庁タックスアンサーNo.7191)、自分で申請しても専門家に頼んでも同額です。
- 書類の取得実費: 戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書などを役所で取る費用です。1通あたり数百円で、集める通数により合計で数千円程度になります。
自分でやると消える費用
司法書士に登記を依頼すると、上記に加えて報酬がかかります。日本司法書士会連合会が2024年3月に実施した「報酬に関するアンケート」では、戸籍収集から遺産分割協議書作成、登記申請代理までを含む設例の相続登記報酬は平均74,888円でした(有効回答1,109件、評価額1,000万円の設例)。自分でやれば、この報酬部分をまるごと節約できる計算になります。手続き全体や他士業を含めた費用の比較は相続手続きの費用相場にまとめているので、本記事は登記を自力で進める場合に絞って掘り下げます。
【明細例】自分でやった場合の費用を評価額別に試算
自分で登記する場合、総額は「登録免許税+実費」だけです。評価額別に見ると、費用感がはっきりします。ここでは実家(土地1筆+建物1棟)を1人が相続し、戸籍などの実費を約5,000円と仮定しました。
| 固定資産税評価額(土地+建物) | 登録免許税(評価額×0.4%) | 書類実費(目安) | 自分でやる合計の目安 |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 20,000円 | 約5,000円 | 約25,000円 |
| 1,000万円 | 40,000円 | 約5,000円 | 約45,000円 |
| 2,000万円 | 80,000円 | 約5,000円 | 約85,000円 |
| 3,000万円 | 120,000円 | 約5,000円 | 約125,000円 |
同じ設例を司法書士に任せると、この合計に報酬74,888円(設例平均)が上乗せされます。たとえば評価額1,000万円なら、自分でやれば約45,000円、頼めば約12万円という差になります。差額の約7万円が「書類集めと申請書作成の手間を自分で引き受けることで浮くお金」です。なお土地の評価額が100万円以下なら登録免許税は免税になります(令和9年3月31日までの特例。国税庁No.7191)。金額は2026年9月時点の税率と日本司法書士会連合会の設例平均に基づく試算で、相続人や不動産の数で変わります。
自分でやる相続登記の手順(4ステップ)

自力で進める流れは、書類を集める段階と、申請する段階に分かれます。おおまかに次の4ステップで進みます。
- 相続人を確定する: 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を集め、法律上の相続人を全員洗い出します。ここが最も手間のかかる工程で、転籍や結婚で本籍が動いていると複数の役所に請求することになります。
- 誰が相続するかを決める: 相続人が複数いる場合は、遺産分割協議で不動産を取得する人を決め、遺産分割協議書を作成します。相続人全員の実印を押し、印鑑証明書を添えます。遺言書がある場合はそれに従います。
- 登記申請書を作成する: 不動産の情報(所在・地番・家屋番号など)を登記事項証明書で確認し、法務局の様式に沿って申請書を作ります。登録免許税額もここで計算して記載します。
- 法務局へ申請する: 不動産の所在地を管轄する法務局へ、申請書と必要書類一式を提出します。窓口・郵送・オンラインのいずれかで申請でき、登録免許税は収入印紙などで納めます。
戸籍を大量に集める負担を減らしたい場合は、法定相続情報一覧図(戸籍一式をまとめて証明する制度)を先に取得しておくと、各種手続きで戸籍の束の代わりに使えます。この制度の取得方法は別記事で扱っています。
相続登記の必要書類一覧
自分で申請する場合にそろえる書類を、取得先とあわせて一覧にします。遺産分割で1人が相続するケースを想定した基本セットです。
| 必要書類 | 取得先・作成者 | ポイント |
|---|---|---|
| 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本 | 本籍地の市区町村 | 転籍があれば複数の役所に請求。相続人確定の中心書類 |
| 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票) | 最後の住所地の市区町村 | 登記簿上の住所とのつながりを確認するため |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の市区町村 | 相続人であることと現在の生存を証明 |
| 不動産を取得する相続人の住民票 | その相続人の住所地の市区町村 | 新しい名義人の住所として記載される |
| 固定資産評価証明書(または課税明細書) | 不動産所在地の市区町村 | 登録免許税の計算に使う評価額を確認 |
| 遺産分割協議書 | 相続人が作成 | 相続人全員の実印+印鑑証明書を添付 |
| 相続関係説明図 | 申請者が作成 | 提出すると戸籍などの原本還付を受けられる |
| 登記申請書 | 申請者が作成 | 法務局の様式・記載例を利用 |
これらは相続の状況で増減します。遺言書があれば協議書に代えて遺言書を、相続人が1人だけなら協議書は不要になります。数次相続(相続が重なった状態)や代襲相続があると戸籍がさらに増えるため、書類の量が読みにくい場合は早めに専門家に相談する判断も現実的です。
自分でできるケース・頼んだほうがよいケースの判断フロー
費用が浮くとはいえ、すべてのケースを自力でやり切れるわけではありません。次の順で当てはめて、無理のない選択かを確かめてください。
- 不動産は1件、相続人は少人数で争いがないか: 評価額の低い実家1件を、もめていない相続人が取得するだけなら、自分で申請できる余地が大きいケースです。
- 不動産が複数の市区町村にまたがらないか: 管轄する法務局が分かれると申請も別々になり、書類も増えます。またがる場合は手間が跳ね上がります。
- 戸籍が複雑になっていないか: 被相続人が何度も転籍している、代襲相続や数次相続が絡む、相続人が多く遠方にいる、といった要素があると相続人の確定だけで難しくなります。
- 平日日中に役所・法務局へ動けるか: 書類の取り寄せと申請は平日の作業が中心です。動ける時間がなければ、報酬は「時間を買う費用」として妥当になります。
2024年4月以降、相続登記は申請が義務になり、不動産を取得したと知った日から原則3年以内に済ませる必要があります。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になるため(法務省)、自分でやるにしても頼むにしても、先延ばしにせず早めに方針を決めておくのが安全です。
よくある質問
相続登記は本当に自分でできますか。
不動産が1件で相続人が少なく、争いがないケースなら、自分で申請している人は少なくありません。法務局の窓口では申請書の書き方の相談にも応じています。ただし戸籍が複雑だったり不動産が複数の管轄にまたがると難易度が上がるため、その場合は専門家への依頼を検討したほうが確実です。
自分でやると費用はいくらになりますか。
司法書士報酬がかからないので、登録免許税(評価額×0.4%)と書類の取得実費だけで済みます。評価額1,000万円の実家なら登録免許税4万円+実費数千円で、合計およそ4万5,000円が目安です。評価額が低ければさらに下がり、土地の評価額100万円以下は登録免許税が免税になります。
必要書類で一番集めるのが大変なのはどれですか。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本です。過去に本籍を移していると、いくつもの市区町村にさかのぼって請求する必要があり、そろえるのに時間がかかります。法定相続情報一覧図を先に取得しておくと、その後の手続きで戸籍の束の代わりに使えて負担が軽くなります。
登録免許税はどうやって納めますか。
計算した税額分の収入印紙を申請書に貼って納めるのが一般的です(現金納付やオンライン納付も選べます)。税額は固定資産税評価額に0.4%を掛けて計算し、土地と建物があれば評価額を合計してから掛けます。評価額は固定資産評価証明書か課税明細書の「価格」を使います。
遺産分割協議書は自分で作れますか。
作れます。誰がどの不動産を取得するかを明記し、相続人全員が署名して実印を押し、各自の印鑑証明書を添えます。書式に決まった様式はありませんが、不動産は登記事項証明書のとおりに正確に記載する必要があります。相続人が1人だけの場合は協議書自体が不要です。
途中で難しいと感じたら切り替えられますか。
切り替えられます。集めた戸籍や評価証明書はそのまま司法書士に渡せるので、途中まで自分で進めて残りを依頼する形も可能です。義務化の期限(原則3年以内)が迫っている場合は、無理に自力で抱え込まず、早めに専門家へ相談したほうが過料のリスクを避けられます。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.7191(相続登記の登録免許税): https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
- 日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施): https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/11/2a2e2c594bc4cd9ff2ca0f6d916db85e.pdf
- 法務省「相続登記の申請義務化」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
情報は2026年9月時点のものです。登録免許税の税率や免税の特例、必要書類の詳細は制度改正や個別の事情で変わることがあります。実際の申請にあたっては、管轄法務局の記載例の確認や、必要に応じて司法書士など専門家への相談をご利用ください。

