相続手続きの費用相場|実家の名義変更は約11万円が目安

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親が亡くなり、実家の土地・建物と預金を子3人で引き継ぐことになった。名義変更や相続税の申告を自分でやるのか、専門家に頼むのか、頼むならいくらかかるのか。見積もりを取ろうにも「相続の費用相場」がまとまった資料が見当たらず、比較の物差しがない。相続の費用でつまずくのは、たいていこの入り口です。

結論からお伝えすると、相続手続きの費用は「専門家に払う報酬」と「法律で決まっている実費(法定費用)」の二層で考えると整理できます。どの職種に頼むかは、依頼したい手続きの中身でほぼ決まります。不動産の名義変更なら司法書士、相続税の申告なら税理士、書類作成なら行政書士、相続人どうしで争いがあるなら弁護士、という対応関係です。この記事では4職種の報酬目安を手続き別に一覧化し、登録免許税などの実費と合わせて、比較の土台を1ページにまとめます。

相続手続きの費用は「専門家報酬」と「法定費用」の二層で決まる

専門家が相続関連書類を整理する手元
相続手続きの書類を整理する様子(イメージ)

相続にかかるお金は、性質の違う2種類が混ざっています。ひとつは専門家に支払う報酬で、事務所や職種によって金額が変わります。もうひとつは、誰が手続きしても同額かかる法定費用(実費)です。登録免許税や収入印紙、戸籍謄本の取得手数料などがこれにあたり、自分で手続きしても発生します。

見積もりを比較するときは、この二層を分けて見るのが大切です。ある事務所の「相続登記まるごと10万円」という提示に登録免許税が含まれているのか、報酬だけなのかで、実際の支払総額は大きく変わります。以下では報酬の目安、法定費用の順に一覧化し、最後に実際の数字で総額を組み立てます。

専門家4職種の報酬目安一覧(手続き別)

「相続手続き 費用」の中心になる専門家報酬を、手続き別に並べます。金額は各職種団体が公表している調査の平均値ですが、出典の年度も設例(前提条件)もそれぞれ異なるため、同じ条件での横並び比較ではない点に注意してください。相続人の数や不動産・口座の数で金額は大きく動きます。

職種 手続き 報酬の目安 出典・年度
司法書士 相続登記(不動産の名義変更) 平均 74,888円 日司連 報酬アンケート 2024年
司法書士 相続放棄の申述書作成 平均 40,892円 同上 2024年
司法書士 遺言公正証書のサポート 平均 62,193円 同上 2024年
司法書士 遺産承継業務(預金の解約・分配など) 平均 272,780円 同上 2024年
行政書士 遺産分割協議書の作成 平均 69,752円/最頻値 55,000円 日行連 令和7年度統計
行政書士 相続人・相続財産の調査 平均 61,722円/最頻値 50,000円 同上 令和7年度
行政書士 遺言書の起案・作成指導 平均 76,855円/最頻値 50,000円 同上 令和7年度
弁護士 遺産分割調停(着手金) 50万円が41%・30万円が31% 日弁連 2008年度アンケート
弁護士 遺産分割調停(報酬金) 100万円が31%・180万円が15% 同上 2008年度
税理士 相続税の申告 公的な相場統計なし 後述

司法書士の数値は日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施・2026年9月時点で公式サイト確認)によるもので、相続登記の設例は「土地1筆と建物1棟・固定資産評価額の合計1,000万円・戸籍等5通の取り寄せ・遺産分割協議書と相続関係説明図の作成・登記申請の代理」という前提です。この前提が変われば金額も変わります。

行政書士は日本行政書士会連合会「令和7年度報酬額統計調査」(消費税込・立替金は含まず)、弁護士は日本弁護士連合会「市民のための弁護士報酬ガイド」の値です。弁護士の数値は2008年度のアンケートで調査自体がやや古く、弁護士報酬は2004年以降は自由化されています。遺産分割調停の設例は「遺産総額1億円・遺言なし・相続人は妻と子2人・妻が5,000万円相当を取得」というケースで、現在の実額は各事務所の見積もりで確認してください。

税理士の報酬に「相場」を書かない理由

相続税の申告を頼む税理士について、この記事ではあえて金額を書きません。日本税理士会連合会は報酬規定や報酬アンケートを公表しておらず(2026年9月時点・公式サイト確認)、公的な相場統計が存在しないためです。ネット上で見かける「遺産総額の0.5〜1%」といった数字も公式の裏付けがある値ではありません。実際には事務所ごとに遺産総額に応じた料金表があるので、複数の見積もりを取って比較するのが確実です。相続税申告の税理士費用は別記事の遺産額別の報酬目安で扱う予定です。

法定費用(登録免許税・収入印紙など)の一覧

落ち着いた木目の机で書類に印紙を貼る手元
大切な書類を扱う(イメージ)

次に、誰が手続きしても同額かかる法定費用です。年度で変わる項目もあるため、金額は2026年9月時点・官公庁サイトで確認したものです。

項目 金額・計算 根拠
相続登記の登録免許税 不動産の固定資産税評価額 × 0.4% 国税庁 タックスアンサー No.7191
登録免許税の免税 土地の価額100万円以下は免税(令和9年3月31日まで) 同上 No.7191
相続放棄の申述 収入印紙 800円(申述人1人につき)+郵便切手 裁判所「相続の放棄の申述」
相続土地国庫帰属の審査手数料 土地一筆 14,000円(却下・不承認でも返還なし) 法務省

相続放棄の郵便切手は家庭裁判所によって金額が異なります。相続土地国庫帰属制度(相続した土地を国に引き取ってもらう制度・令和5年4月27日施行)の負担金は、審査手数料とは別に、土地の種目・区域・面積で変わります。金額は法務省の自動計算シートで確認してください。相続税については、遺産が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に申告が必要で、申告・納付の期限は被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。

相続の費用相場を職種別に読む(計算例)

数字が並ぶと分かりにくいので、冒頭の「実家(土地・建物)と預金を子3人で相続」というケースで、相続登記の総額を組み立ててみます。

  • 前提: 土地・建物の固定資産税評価額の合計 1,000万円、司法書士に登記を依頼
  • 登録免許税: 1,000万円 × 0.4% = 40,000円(法定費用)
  • 司法書士報酬: 約74,888円(前掲の設例の平均)
  • 戸籍謄本などの実費: 別途(取得通数による)
  • 概算合計: 約114,888円+戸籍実費

このように、支払総額は「報酬(約7.5万円)」と「法定費用(4万円)」の二層でできています。評価額が2,000万円なら登録免許税は8万円、3,000万円なら12万円と、税額は評価額に比例して増えます。一方の司法書士報酬は不動産や相続人の数で増減します。見積もりを見るときは、この二層のどちらがいくらなのかを必ず分けて確認してください。

どの手続きを誰に頼むか(判断フロー)

職種選びは、抱えている状況を上から順にあてはめると絞り込めます。

  1. 相続人どうしで遺産の取り分に争いがある、または話し合いがまとまらない → 弁護士(代理人として交渉・調停ができる唯一の職種)
  2. 遺産が基礎控除を超え、相続税の申告が必要 → 税理士(税額の計算と申告書の作成)
  3. 不動産があり、名義変更(相続登記)が必要 → 司法書士(登記申請の代理)
  4. 争いはなく、遺産分割協議書や戸籍収集など書類の作成・調査を頼みたい → 行政書士

実務では複数の手続きが重なります。たとえば「相続税の申告あり+不動産の名義変更あり」なら税理士と司法書士の両方が関わり、税理士事務所が提携司法書士とまとめて受けることもあります。相続人の間で争いがある場合は、司法書士や行政書士は代理交渉ができないため、まず弁護士に相談する順番になります。依頼先の決め方は司法書士と税理士どっち?の考え方も参考にしてください。

費用を左右する要因と見積もりの取り方

複数の書類を見比べる手元と書斎の机
じっくり見積もりを検討する様子(イメージ)

同じ「相続登記」でも金額が違うのは、次のような条件が事務所の見積もりに反映されるためです。

  • 不動産の個数と所在地(複数市区町村にまたがると手間が増える)
  • 相続人の人数(戸籍の取り寄せ範囲と協議書の複雑さが変わる)
  • 戸籍を「出生から死亡まで」さかのぼる通数(数次相続だと大幅に増える)
  • 遺言の有無、遺産分割協議書の作成が必要かどうか

見積もりを取るときは、これらの前提をそろえて2〜3か所に依頼し、報酬と実費を分けた内訳を出してもらうと比較しやすくなります。「一式いくら」ではなく、登録免許税・戸籍実費・報酬の内訳が示されているかを確認してください。相続放棄のように期限(自分のために相続開始を知ったときから3か月以内)が決まっている手続きは、見積もりの検討に時間をかけすぎないことも大切です。

同じ条件で見積もりを取るためのチェック

比較する項目 確認する内容
依頼する手続き 登記、税務申告、預金解約、書類作成など、頼む範囲を分けて列挙します。
数と状態 相続人、不動産、口座の数、資料がそろっているかを同じ条件で伝えます。
追加報酬 戸籍収集、財産調査、補正対応、実費の立替が基本料金に含まれるか確認します。

よくある質問

相続手続きの費用は全部でいくらくらいですか。

内容によって幅があります。不動産の名義変更だけなら、評価額1,000万円のケースで登録免許税4万円と司法書士報酬7万円台の合計10万円強が目安です。相続税の申告や遺産分割の争いが加わると、税理士・弁護士の報酬でさらに大きくなります。まず必要な手続きを洗い出すのが先決です。

司法書士と行政書士は何が違うのですか。

不動産の名義変更(相続登記)を代理できるのは司法書士だけです。行政書士は遺産分割協議書の作成や戸籍収集、相続財産の調査を扱えますが、登記申請の代理はできません。登記が必要なら司法書士、書類作成中心なら行政書士という切り分けになります。

相続税の税理士費用の相場が見つからないのはなぜですか。

税理士の団体が報酬規定や報酬アンケートを公表していないため、公的な相場統計が存在しないからです。事務所ごとに遺産総額に応じた料金表があるので、複数の事務所から見積もりを取って比較するのが確実です。

相続登記はいつまでにすればよいですか。

令和6年4月1日から相続登記は義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。施行前に発生していた相続は、令和9年3月31日までが期限です。

自分で手続きすれば専門家報酬はかからないのですか。

報酬は不要になりますが、登録免許税や収入印紙、戸籍謄本の取得手数料といった法定費用(実費)は自分で手続きしても発生します。手間と時間、書類の正確さを考えて、依頼するかどうかを判断してください。

弁護士の報酬が幅広いのはなぜですか。

弁護士報酬は2004年以降自由化され、事務所ごとに設定できるためです。本記事の数値は日弁連の2008年度アンケートによるもので調査がやや古く、現在の金額とは差があります。実額は各事務所の見積もりで確認してください。

参考・出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.7191(登録免許税の税額表): https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
  • 国税庁 タックスアンサー No.4205(相続税の申告と納税): https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
  • 国税庁 タックスアンサー No.4152(相続税の基礎控除): https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
  • 裁判所「相続の放棄の申述」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
  • 法務省「相続登記の申請義務化」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
  • 日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施): https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/11/2a2e2c594bc4cd9ff2ca0f6d916db85e.pdf
  • 日本行政書士会連合会「令和7年度報酬額統計調査の結果」: https://www.gyosei.or.jp/about/disclosure/reward
  • 日本弁護士連合会「市民のための弁護士報酬ガイド(2008年度アンケート結果版)」: https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/publication/pamphlet/attorneys_fee_guide.pdf
  • 日本税理士会連合会(報酬規定・報酬アンケートの公表なし): https://www.nichizeiren.or.jp/
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