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親が亡くなり実家の名義を自分に変えたい。相続登記が2024年から義務になったと聞いて放置できなくなった。そんなとき最初に引っかかるのが「結局いくらかかるのか」です。ネットには「数万円」とも「数十万円」とも書いてあり、桁が違って見えるのは、税金の部分と専門家に払う報酬の部分がごちゃ混ぜに語られているからです。この2つを分けて理解できれば、自分のケースの費用はかなり正確に見積もれます。
結論を先に言えば、相続登記の費用は「登録免許税(国に納める税金)」と「司法書士報酬(頼む場合の手数料)」の2本立てで考えます。税金は不動産の固定資産税評価額で機械的に決まり、報酬は相続人や不動産の数で動きます。だからまず自宅の評価額を確認して税額を出し、そこに頼む場合の報酬を足す、という順番で組み立てるのが、過不足なく費用をつかむ最短ルートです。
相続登記の費用は「登録免許税」と「司法書士報酬」に分かれる

相続登記(不動産の名義を亡くなった方から相続人へ変える手続き)でかかるお金は、大きく次の2種類に整理できます。混同しやすいので、まずここを切り分けておきます。
誰に頼んでも同額の「法定費用」
- 登録免許税: 登記を申請するときに国へ納める税金。固定資産税評価額を基準に計算され、自分で登記しても司法書士に頼んでも金額は同じです。
- 戸籍・住民票などの取得実費: 出生から死亡までの戸籍や相続人の戸籍を集める実費。通数により数千円程度かかります。
頼む場合だけかかる「司法書士報酬」
司法書士に登記申請の代理を頼むと、そこに専門家への報酬が加わります。これは事務所ごとに設定が異なり、相続人の人数や不動産の筆数、戸籍収集や遺産分割協議書の作成まで含むかどうかで変わります。自分で法務局に申請すればこの報酬はかかりませんが、書類集めと申請書作成の手間が残ります。手続きの全体像や他士業との費用比較は相続手続きの費用相場にまとめているので、本記事は登記1点に絞って掘り下げます。
登録免許税の計算方法と評価額別の試算
費用の土台になるのが登録免許税です。相続による所有権移転登記の税率は固定資産税評価額の0.4%(1,000分の4)と法律で決まっています(国税庁タックスアンサーNo.7191)。ここでいう評価額は、購入価格や時価ではなく、毎年届く固定資産税の課税明細書に載っている「価格(評価額)」を使います。
計算式はシンプル
計算式は「固定資産税評価額 × 0.4%」だけです。土地と建物の両方があれば、それぞれの評価額を合計してから0.4%を掛けます(1,000円未満の端数は切り捨て、最低額1,000円などの端数処理はありますが、目安としてはこの式で十分です)。評価額別に試算すると、税額のイメージがつかめます。
| 固定資産税評価額(土地+建物) | 登録免許税(評価額×0.4%) |
|---|---|
| 500万円 | 20,000円 |
| 1,000万円 | 40,000円 |
| 2,000万円 | 80,000円 |
| 3,000万円 | 120,000円 |
| 5,000万円 | 200,000円 |
このように、税額は評価額に正比例します。評価額が高い都市部の不動産ほど税金も大きくなる一方、地方の低額な不動産では税額は数万円で収まることが多いです。なお土地の評価額が100万円以下の場合は登録免許税が免税になります(令和9年3月31日までの特例。国税庁No.7191)。使われていない山林や持分の小さい土地などで該当することがあるので、評価額が低い土地は一度確認する価値があります。
司法書士報酬の相場と内訳

次に、司法書士に頼む場合の報酬相場です。ここは各事務所で自由に決められるため幅がありますが、業界団体の全国調査が一つの基準になります。日本司法書士会連合会が2024年3月に実施した「報酬に関するアンケート」では、標準的な設例に対する相続登記報酬の平均は74,888円でした(有効回答1,109件)。
この平均額が前提にしている設例
平均だけを見て安い高いを判断すると外れます。上記の74,888円は、次の条件をひとまとめにした作業に対する金額です。
- 土地1筆+建物1棟、固定資産税評価額の合計1,000万円
- 戸籍などの交付請求5通
- 遺産分割協議書と相続関係説明図の作成
- 登記申請の代理
- 法定相続人3名のうち1名が単独で相続するケース
つまり、単純な登記申請だけでなく、戸籍収集や協議書作成まで含んだ「相続登記まわりを一通り任せる」価格帯だと理解してください。相続人の数が増える、不動産が複数の市区町村にまたがる、遠方の戸籍を大量に集める、といった要素があれば加算され、逆に書類を自分で揃えて申請代理だけ頼めば下がります。報酬は司法書士の相場として幅がある前提で、複数の事務所に同じ条件で見積もりを取るのが確実です。
【明細例】評価額1,000万円の実家を相続登記した場合
税金と報酬を合わせて、実際の総額を組み立ててみます。相続人が子3名、そのうち1名が実家(土地1筆+建物1棟、固定資産税評価額の合計1,000万円)を単独で相続し、戸籍収集から登記まで司法書士に任せた想定です。使う数字は、登録免許税の計算式と日本司法書士会連合会2024年アンケートの設例平均です。
| 費用の項目 | 金額 | 内容・計算根拠 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 40,000円 | 1,000万円 × 0.4%(固定資産税評価額 × 1,000分の4) |
| 司法書士報酬 | 74,888円 | 戸籍5通の取得+遺産分割協議書・相続関係説明図の作成+登記申請代理(設例平均) |
| 戸籍・住民票などの取得実費 | 数千円程度 | 通数により変動(別途) |
| 合計の目安 | 約114,888円+実費 | 税金と報酬を合わせた金額 |
この明細のうち、司法書士に頼まなければ消えるのは報酬の74,888円の部分です。自分で登記すれば登録免許税40,000円+実費だけで済む計算になりますが、その分の書類収集と申請書作成を自力で行うことになります。金額は2026年9月時点・日本司法書士会連合会の設例平均に基づく試算で、相続人の数や不動産の内容で変わります。
司法書士に頼むか自分でやるかの判断フロー
報酬7万円強を払って任せるか、自分で動くか。金額だけでなく、手続きの難易度で決めるのが失敗しないコツです。次の順で当てはめてみてください。
- 不動産が1つ、相続人も少人数で争いがないか。評価額の低い実家1件を、もめていない相続人が単独で取得するだけなら、自分で申請できる余地が大きく、報酬を節約しやすいケースです。
- 不動産が複数の市区町村にまたがるか。管轄する法務局が分かれると申請も別々になり、書類も増えます。手間が跳ね上がるので専門家に任せる価値が上がります。
- 相続人が多い・遠方・関係が複雑か。戸籍が大量になったり、代襲相続や数次相続(相続が重なった状態)が絡むと、相続人の確定だけで難しくなります。ここは司法書士の領分です。
- 平日に法務局・役所へ動ける人がいるか。書類の取り寄せと申請は平日日中の作業が中心です。動ける人がいなければ、報酬は「時間を買う費用」として妥当になります。
相続登記は2024年4月から義務化され、原則として不動産の取得を知った日から3年以内の登記が求められます。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になるため(法務省)、費用を理由に先延ばしにせず、早めに「自分でやるか・頼むか」だけでも決めておくと安心です。自分で進める場合の具体的な手順や必要書類は別記事で詳しく扱います。
費用を正しく見積もるための注意点

相続登記の費用でつまずきやすいのは、見積もりの「範囲」があいまいなまま進めてしまうことです。次の3点を押さえると、金額の比較がぶれません。
- 報酬と税金・実費を必ず分けて確認する: 提示された金額が司法書士報酬だけなのか、登録免許税や戸籍の取得実費まで含むのかを確かめます。登録免許税は誰に頼んでも同額で、報酬とは別枠です。
- 評価額は課税明細書か評価証明書で確認する: 登録免許税は固定資産税評価額で決まります。手元の課税明細書、または市区町村で取る固定資産評価証明書の「価格」を使い、購入価格や時価と混同しないようにします。
- 依頼する作業の範囲を書き出して渡す: 戸籍収集から頼むのか、協議書作成も含むのか、申請代理だけかで報酬は大きく動きます。範囲をそろえて相見積もりを取れば、金額を正しく比べられます。
複数の司法書士に同じ条件で見積もりを依頼し、金額だけでなく含まれる作業と追加費用の条件まで並べて比較するのが基本です。
よくある質問
相続登記の費用は最低いくらから可能ですか。
自分で登記する場合は、登録免許税(評価額×0.4%)と戸籍などの取得実費だけで済みます。評価額の低い不動産なら税金は数万円、実費は数千円程度で、合わせて数万円台に収まることもあります。司法書士に頼む場合は、そこに報酬が加わります(金額は不動産や相続人の状況で変わります)。
登録免許税はどうやって計算しますか。
固定資産税評価額に0.4%(1,000分の4)を掛けて計算します。土地と建物があれば評価額を合計してから掛けます。評価額は固定資産税の課税明細書か、市区町村で取得する固定資産評価証明書に記載された「価格」を使います。時価や購入価格ではありません。
司法書士報酬の相場はいくらですか。
日本司法書士会連合会の2024年アンケートでは、戸籍5通の収集・遺産分割協議書と相続関係説明図の作成・登記申請代理を含む設例(評価額1,000万円)で平均74,888円でした。あくまで設例の平均で、相続人の数や不動産の筆数、頼む作業の範囲で変わります。
評価額が100万円以下の土地でも税金はかかりますか。
土地の評価額が100万円以下の場合は、令和9年3月31日までの特例で登録免許税が免税になります(国税庁No.7191)。使われていない土地や持分の小さい土地が該当することがあるので、評価額が低い土地は課税明細書で確認してみてください。
自分で登記すれば司法書士報酬はゼロになりますか。
ゼロになります。ただし登録免許税と戸籍などの実費は自分でやっても必要です。報酬を節約できる代わりに、戸籍の収集・相続関係の確定・申請書の作成・法務局への申請をすべて自分で行うことになります。不動産が1件で相続人が少なく争いがないケースほど、自力でも進めやすいです。
相続登記をしないままだとどうなりますか。
2024年4月から相続登記は義務化され、原則として不動産の取得を知った日から3年以内に登記しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になります。費用を理由に放置すると、後で相続人が増えて手続きがさらに複雑になることもあるため、早めの対応が安全です。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.7191(相続登記の登録免許税): https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
- 日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施): https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/11/2a2e2c594bc4cd9ff2ca0f6d916db85e.pdf
- 法務省「相続登記の申請義務化」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
情報は2026年9月時点のものです。登録免許税の税率や免税の特例、司法書士報酬の相場は制度改正や事務所の方針で変わることがあります。実際の登記にあたっては、固定資産評価証明書での評価額の確認と、司法書士など専門家への相談をご利用ください。

