相続放棄申述書の書き方|照会書が届いた後の対応

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家庭裁判所のサイトから相続放棄申述書(そうぞくほうきしんじゅつしょ=相続人でなくなることを申し出る書類)をダウンロードしたものの、「申述の理由」欄のどれに丸を付ければいいのか手が止まっている。あるいは、書類を提出したあとに裁判所から「照会書(しょうかいしょ=申述の内容を確認するための質問状)」が届き、答え方を一つ間違えると放棄が認められないのではと不安になっている。この記事はそうした場面のための実務ガイドです。

結論から言うと、受理の分かれ目は二つです。第一に、申述書は日付・続柄・被相続人(亡くなった方)の情報を戸籍どおり正確に書くこと。第二に、あとから届く照会書に、申述書と矛盾せず、かつ「相続財産を使った・処分した」と読める答えを書かないことです。照会書は形式的な確認に見えて、ここでの一言が単純承認(相続を承認したとみなされること)を疑わせると受理が揺らぎます。書式の入手から照会書の回答まで、順に見ていきます。

相続放棄申述書はどこで入手し、何を書くか

申述書の書式(用紙のひな形)は、裁判所のウェブサイトで配布されています。全国共通の様式で、成人用と未成年者用に分かれています。手続きの全体像(提出先や流れ)は相続手続きの費用相場をまとめた記事もあわせて確認してください。ここでは書類の中身に絞ります。

提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です(2026年9月時点・裁判所公式サイト確認)。住所地で管轄が決まるため、自分の住所ではない点に注意します。

申述書の主な記入項目と記入例

記入は難しくありませんが、戸籍・住民票と表記を一致させることが最優先です。よく迷う項目を整理します。

項目 記入の内容と注意点
申述先の裁判所・日付 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所名。日付は原則として提出日を書く
申述人(あなた) 氏名・住所・本籍・生年月日を戸籍と住民票どおりに。押印欄には認印でよい
被相続人 氏名・本籍・最後の住所・死亡年月日を戸籍(除籍)どおりに転記する
被相続人との続柄 「子」「配偶者」「兄弟姉妹」など。続柄で必要な戸籍が変わる
相続の開始を知った日 照会書の回答とも直結する最重要項目。後述する
申述の理由 放棄する理由を選択肢から選ぶ(下記)
相続財産の概略 把握している範囲で資産・負債の概算を書く。不明なら「不明」でよい

裁判所ごとに記入例のPDFが用意されていますが、公式の記入例PDFのURLは記事作成時点で確定できていないため、入手先は裁判所公式サイトの相続放棄のページから確認してください。

「申述の理由」欄と「知った日」の書き方

「申述の理由」は、被相続人の債務超過(借金が財産より多い)、生活が別で交流がなかった、遺産を分散させたくない、などから当てはまるものを選びます。実態に合うものを選べばよく、理由そのもので受理・不受理が決まるわけではありません。

むしろ神経を使うのが「相続の開始を知った日」です。相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に申述する必要があります(2026年9月時点・裁判所公式サイト確認)。この日付が3か月の起算点になり、照会書でも必ず聞かれます。死亡日ではなく「自分が相続人になったと知った日」で書ける場合がある点が、次の照会書対応の鍵になります。

照会書とは何か|届く時期と裁判所ごとの違い

申述書を提出すると、多くの家庭裁判所から後日「照会書」または「回答書」が郵送されます。これは、申述が本人の意思によるものか、期間内か、相続財産に手を付けていないかなどを書面で確認するための質問状です。届く時期は提出から一〜二週間程度が一般的ですが、裁判所によっては照会書を送らず書面審査だけで受理するところもあります。

重要なのは、照会書の様式・質問項目は裁判所ごとに異なるという点です。全国統一の様式ではないため、届いた照会書に書かれた質問文をそのまま読み、その裁判所が何を確認したいのかに沿って答える必要があります。ひな形の回答例を丸写しにすると、その裁判所の質問とかみ合わないことがあります。

照会書の回答で受理が左右されるポイント

書類にペンをかざし思案する手元
回答を検討する手元(イメージ)

ここがこの手続きで最も差がつく部分です。照会書は「届いたら記入して返送するだけ」と軽く見られがちですが、回答内容が申述書と食い違ったり、相続財産を処分したと読める記述があると、裁判所が単純承認を疑い、受理が遅れたり追加の照会が来ることがあります。

単純承認とみなされない答え方

単純承認とは、相続を受け入れたとみなされる状態で、これがあると原則として放棄できなくなります。照会書では、財産を処分・費消していないかがよく問われます。次のような答えは慎重に書きます。

  • 被相続人の預金を引き出して使った、と読める記述は避ける。葬儀費用などに充てた事情があるなら、その事実関係を正確に書く
  • 形見分けの範囲を超えて遺品や家財を売却・処分したと書かない。実際に処分していないなら「処分していない」と明記する
  • 「一部だけ相続したい」といった記述はしない。相続放棄は一部放棄ができない

事実を偽るのではなく、事実を正確に、誤解を招かない言葉で書くことが受理につながります。判断に迷う事情がある場合は、返送前に確認しておくと安全です。

3か月を過ぎている場合の書き方

死亡から3か月を過ぎていても、借金の存在を後から知ったなどの事情があれば、放棄が認められる余地があります。この場合、照会書の「相続の開始を知った日」や「なぜ今になって申述するのか」という質問への回答が受理の可否を大きく左右します。いつ・何をきっかけに債務を知ったのか、時系列を具体的に書くことが求められます。期間を過ぎたケースの詳しい考え方は個別の事情によるため、返送前に整えておくことをおすすめします。

記入から受理までの判断フロー

自分で進めるか、専門家に任せるかの目安を、条件で整理します。

  1. 死亡(相続開始)から3か月以内で、財産に一切手を付けていない → 申述書と照会書を自分で書いて進めやすい
  2. 3か月を過ぎている、または過ぎそう → 「知った日」の説明が必要。照会書の回答準備を早めに行う
  3. 預金を動かした・遺品を処分した心当たりがある → 単純承認の判断が絡むため、返送前に相談を検討
  4. 相続人の続柄が兄弟姉妹など、集める戸籍が多い → 書類収集の負担が大きく、代行の検討余地がある

費用と司法書士に頼む場合の目安

自分で申述する場合の実費は、申述人1人につき収入印紙800円と、連絡用の郵便切手です(2026年9月時点・裁判所公式サイト確認)。郵便切手の金額と組み合わせは裁判所によって異なるため、提出先の家庭裁判所に確認します。これに戸籍謄本などの取得実費が加わります。

書類作成を専門家に任せる場合、司法書士に相続放棄申述書の作成を依頼したときの報酬の目安は平均40,892円です(設例: 死亡後3か月以内・戸籍等5通の交付請求と申述書作成。日本司法書士会連合会2024年アンケート、有効回答752)。これは書類作成の報酬で、上記の印紙・切手・戸籍の実費は別にかかります。相続人や集める戸籍の数によって金額は変わります。

項目 金額の目安 備考
収入印紙 800円(申述人1人につき) 裁判所公式
郵便切手 裁判所により異なる 提出先に要確認
司法書士報酬(申述書作成) 平均40,892円 設例付き・実費別

よくある質問

照会書が届かないのですが、放棄は認められていないのでしょうか。

照会書を送らず書面審査だけで受理する家庭裁判所もあります。届かないこと自体は問題ではありません。心配なら提出先の裁判所に進捗を問い合わせてください。

照会書の回答は手書きでなければいけませんか。

様式は裁判所ごとに異なり、回答方法も指定に従います。多くは所定の用紙に記入して返送する形式です。届いた照会書の指示に沿って記入してください。

照会書に書いた内容を、あとから訂正できますか。

返送後の訂正は難しいため、返送前に申述書との整合性と、財産の処分に関する記述を必ず見直してください。迷う点があれば返送前に確認するのが安全です。

葬儀費用を被相続人の預金から支払いました。放棄できなくなりますか。

事情によっては問題にならない場合もありますが、単純承認の判断が絡むため一律には言えません。支払いの経緯を正確に説明できるよう整理し、必要なら返送前に相談してください。

返送期限を過ぎてしまったらどうなりますか。

照会書には回答期限が記載されていることが多く、遅れると受理が滞る可能性があります。間に合わないおそれがあるときは、早めに裁判所へ連絡してください。

相続放棄の申述先はどこの裁判所ですか。

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です(2026年9月時点・裁判所公式サイト確認)。自分の住所地ではない点に注意してください。

相続放棄の手続きはお金や法律に関わる事柄です。本記事は一次情報に基づいて一般的な流れを整理したものであり、個別の可否を保証するものではありません。判断に迷う場合は家庭裁判所や専門家に確認してください。情報は2026年9月時点のものです。

参考・出典

  • 裁判所「相続の放棄の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
  • 日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施) https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/11/2a2e2c594bc4cd9ff2ca0f6d916db85e.pdf
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