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平日に法務局の窓口へ行く時間が取れず、「相続登記(亡くなった人の不動産の名義を相続人へ書き換える手続き)をパソコンから申請できないか」と考える方は少なくありません。実際、法務省のオンライン申請システム「登記ねっと」を使えば、自宅から相続登記の申請書データを送ることはできます。ただし、はじめに結論をお伝えすると、個人が一から自分でオンライン申請をするのは、書類作成そのものよりも「申請用総合ソフトの導入」と「添付書面(戸籍などの紙の書類)を別に郵送する運用」でつまずきやすく、窓口・郵送での申請と比べて必ずしも楽とは言い切れません。ここでは手順と、正直に面倒なポイントの両方を整理します。
相続登記のオンライン申請とは|「登記ねっと」と申請用総合ソフト

相続登記のオンライン申請は、法務省が運営する登記・供託オンライン申請システム(通称「登記ねっと」)を通じて行います。個人が自分で相続のような複雑な申請をする場合、ブラウザ上で完結する「かんたん証明書請求」ではなく、専用アプリの「申請用総合ソフト」をパソコンにインストールして申請情報を作成するのが基本です。
ここで押さえておきたいのが、オンライン申請といっても添付する戸籍謄本や遺産分割協議書、固定資産評価証明書などの原本は、データではなく紙のまま法務局へ提出する運用が一般的だという点です。申請データはオンラインで送り、紙の書類は別に郵送または持参する。この「半分オンライン・半分紙」の形が、個人にとってのわかりにくさの正体です。
相続登記をオンライン申請するやり方(手順)
自分でオンライン申請をする場合、おおまかな流れは次のとおりです。
- 申請者情報を登録して「登記ねっと」の申請者IDを取得する。
- 「申請用総合ソフト」をパソコンにインストールする。
- 相続する不動産を管轄する法務局や、対象不動産の情報(地番・家屋番号)を確認する。
- ソフト上で相続登記の申請書様式を選び、被相続人・相続人・不動産の内容を入力する。
- 必要に応じて電子署名を付し、申請データを送信する。
- 登録免許税(後述)を電子納付(インターネットバンキング等)または領収証書で納付する。
- 戸籍・遺産分割協議書などの添付書面を、別途法務局へ郵送または持参する。
- 審査後に登記が完了し、登記完了証・登記識別情報を受け取る。
入力する内容自体は、紙の相続登記申請書に書く事項とほぼ同じです。書き方の詳細は、法務局の様式にそって解説した別の記事も参考にしてください。オンライン化で減るのは「窓口へ行く回数」であって、集める書類の種類ではありません。
申請用総合ソフトの利用環境と電子署名の要否

オンライン申請を始める前に確認しておきたいのが、ソフトの動作環境と利用できる時間帯です。
- 動作環境:申請用総合ソフトはパソコン向けのアプリで、対応するOSやブラウザの条件があります。スマートフォンだけでは完結しません。
- 利用時間:「登記ねっと」は24時間いつでも使えるわけではなく、申請の送信ができる時間帯が決まっています。
- 電子署名:申請データに申請者本人の電子署名(マイナンバーカードの電子証明書などを使った本人確認)を求められる場合があります。個人が単独で申請するときに署名が必須か、添付書面を郵送する「特例(半ライン)方式」でどこまで省けるかは、事前に確認しておくべき点です。
ここが固まらないまま進めると、ソフトを入れたのに送信できない、電子証明書の準備で止まる、といった手戻りが起きます。着手前に法務局のオンライン申請の案内ページで最新の条件を確認してください。
添付書面を「別送」する運用の面倒さ
個人がオンライン申請で最も戸惑うのが、この添付書面の別送です。相続登記では、被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍、遺産分割協議書と印鑑証明書、固定資産評価証明書など、原本での提出が求められる紙の書類が多くあります。
これらをデータ化してオンラインだけで送れるわけではなく、申請データの送信とは別に、紙の束を法務局へ郵送または持参する必要があります。つまり「申請の送信」と「書類の到着」を両方そろえて初めて審査が進むため、次のような手間が残ります。
- どの書類を原本で送り、どれを還付(返却)してもらうかを整理する必要がある。
- 申請データと郵送書類の対応がずれると、補正(修正のやり直し)や差し戻しになる。
- 結局、郵送のための封入・発送作業が発生し、完全な「自宅完結」にはならない。
書類の不備は差し戻しの主な原因です。オンラインにしたからといって、集める書類や原本提出の負担が消えるわけではない、という点は正直に理解しておいたほうがよいでしょう。
費用の内訳|オンラインでも登録免許税は同じ
申請方法を窓口からオンラインに変えても、法律で決まっている税金(登録免許税)は変わりません。相続登記の登録免許税は、不動産の価額(固定資産税評価額)×0.4%(1,000分の4)です(国税庁 タックスアンサー No.7191・2026年9月時点)。
| 項目 | 内容 | 金額の例 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産税評価額×0.4% | 評価額1,000万円→40,000円 |
| 戸籍・評価証明などの実費 | 取得する市区町村・通数による | 数千円程度〜 |
| 専門家報酬 | 自分でやれば0円 | 司法書士に頼むと平均74,888円※ |
広告この記事の結論:相続手続きのnocos
オンライン申請の環境整備や郵送の運用が面倒に感じたら、司法書士が代理で申請できる窓口に相談する方法もあります。
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※日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施)の設例(土地1筆+建物1棟・固定資産評価額合計1,000万円・戸籍等5通・遺産分割協議書と相続関係説明図の作成・登記申請代理、相続人3名中1名が単独相続、有効回答1,109)における平均額です。相続人や不動産の数で大きく変わります。なお、土地の価額が100万円以下の場合は登録免許税が免税になる措置があります(令和9年3月31日まで、同No.7191)。
オンライン申請にしても、自分でやる限り専門家報酬はかかりません。逆に言えば、司法書士に頼んだ場合の差額は、上の書類集めと別送の手間を代わりにやってもらう対価だと考えるとわかりやすいです。全体の費用相場は相続手続きの費用相場をまとめた記事で確認できます。
自分でオンライン申請するか、専門家に頼むかの判断

次の条件に当てはまるほど、自分でのオンライン申請が向いています。
- 相続人が少なく、遺産分割の内容で揉めていない。
- 対象の不動産が1〜2件で、権利関係が単純である。
- パソコン操作に抵抗がなく、ソフトの導入や電子証明書の準備を自分で進められる。
反対に、相続人が多い、不動産が複数の市区町村にまたがる、相続が重なっている(数次相続)、期限が迫っているといった場合は、差し戻しのリスクや手間を考えると専門家に依頼する判断も合理的です。相続登記は令和6年4月1日施行の義務化により、相続の開始と所有権取得を知った日から3年以内の申請が求められ、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます(法務省・2026年9月時点)。期限との兼ね合いで、無理に自力にこだわらない選択も検討してください。
よくある質問
相続登記はスマートフォンだけでオンライン申請できますか。
個人が相続登記を申請する場合、パソコン向けの「申請用総合ソフト」を使うのが基本で、スマートフォンのみで完結させるのは現実的ではありません。ソフトの動作環境を事前に確認してください。
オンライン申請なら戸籍などの書類は提出しなくてよいのですか。
いいえ。申請データはオンラインで送れますが、戸籍や遺産分割協議書などの添付書面は原本を別に郵送または持参する運用が一般的です。集める書類の種類は窓口申請と変わりません。
オンライン申請だと費用は安くなりますか。
登録免許税(評価額×0.4%)や戸籍の実費は申請方法で変わりません。自分で行えば専門家報酬はかからず、それは窓口・郵送で自分でやる場合と同じです。
電子署名は必ず必要ですか。
申請の方式によって扱いが異なります。個人が単独で申請する場合の署名の要否や、添付書面を郵送できる範囲は、法務局のオンライン申請の案内で最新の条件を確認してください。
何時でも申請を送信できますか。
「登記ねっと」には利用できる時間帯が定められており、24時間いつでも送信できるわけではありません。利用時間とメンテナンス情報を事前に確認しておくと安全です。
相続登記には期限がありますか。
あります。令和6年4月1日の義務化により、相続の開始と所有権取得を知った日から3年以内の申請が求められます。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.7191(相続登記の登録免許税・免税措置) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
- 法務省「相続登記の申請義務化」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
- 日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施) https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/11/2a2e2c594bc4cd9ff2ca0f6d916db85e.pdf

