相続 土地 放棄|相続土地国庫帰属制度の費用と条件

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親から相続した地方の土地。使う予定はなく、売ろうにも買い手がつかず、それでも固定資産税と草刈りだけは毎年続く。こうした「いらない土地」を国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度(そうぞくとちこっこきぞくせいど。相続や遺贈で得た土地を、一定の条件と負担金のもとで国のものにできる制度)を検討する人が増えています。ただし、どんな土地でも無料で手放せるわけではありません。

結論から言えば、選ぶ基準は「その土地だけを手放したいのか、相続そのものを引き受けたくないのか」の一点です。すでに相続した土地の一部だけを国に返したいなら国庫帰属制度、預貯金や他の財産も含めて一切を引き継ぎたくないなら相続放棄が入口になります。費用の面では、国庫帰属制度は審査手数料と負担金という実費が必ずかかり、条件を満たさない土地は申請しても引き取ってもらえません。まずは自分の土地が制度の対象になるかを見極めることが、費用を無駄にしない出発点です。

相続した土地の「放棄」で最初に整理すること

畳の部屋で書類を見つめる人の後ろ姿
どちらの選択肢か思案する様子(イメージ)

「土地を放棄したい」という言葉には、実は二つの意味が混ざっています。一つは相続放棄(家庭裁判所に申述して、はじめから相続人でなかったことにする手続き)で、これは土地だけでなく預貯金や借金も含めた相続財産すべてを手放すものです。相続放棄は自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、被相続人(亡くなった人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述します。費用は収入印紙800円と郵便切手で済みますが、「土地だけ要らない」という選び方はできません。相続放棄の詳しい進め方は個別の記事で扱っているため、ここでは深く触れません。

もう一つが、この記事の主題である相続土地国庫帰属制度です。こちらはすでに相続した土地のうち、不要な土地だけを国に引き取ってもらう制度で、令和5年4月27日に施行されました。預貯金は受け取ったうえで、山林や原野といった処分に困る土地だけを手放せるのが大きな違いです。ただし、手放すためには審査手数料と負担金という費用がかかり、土地が一定の条件を満たしている必要があります。

相続土地国庫帰属制度の費用の全体像

この制度でかかる費用は、大きく「審査手数料」と「負担金」の二つに分かれます。

審査手数料は、申請する土地一筆(いっぴつ。登記上の土地の数え方の単位)につき14,000円です。注意したいのは、審査の結果が却下や不承認になっても、この手数料は返還されないという点です。条件を満たさない土地を見切り発車で申請すると、14,000円が戻ってこないことになります。

負担金は、国が土地を引き取ったあとに管理していくための費用として、申請者が納めるお金です。法務省は「国有地の種目ごとに管理に要する10年分の標準的な費用」を考慮して算定するとしており、原則は面積にかかわらず20万円です。宅地や田畑、雑種地、原野などその他の土地は、面積が広くても狭くても一律20万円が基本になります。

専門家に承認申請の書類作成を頼む場合は、この実費とは別に報酬がかかります。日本行政書士会連合会の令和7年度報酬額統計調査では、相続土地国庫帰属の承認申請の報酬は平均113,111円という数字がありますが、これは回答が9件と少ない参考値である点に留意してください(2026年9月時点・公式サイト確認)。

負担金は原則20万円|面積で変わる計算例

人手の入らない雑種地の原野が広がる風景
静かに時が流れる土地(イメージ)

負担金は原則20万円ですが、例外として面積に応じて算定するケースが三つあります。市街化区域や用途地域内の宅地、一定区域内の農地、そして森林です。これらは面積が広いほど負担金も大きくなります。主な区分を整理すると次のとおりです。

土地の種類 負担金の算定方法
宅地・田畑・雑種地・原野など(その他) 面積にかかわらず原則20万円
市街化区域・用途地域内の宅地(50㎡以下) 面積×4,070円+208,000円
同上(50超100㎡以下) 面積×2,720円+276,000円
同上(100超200㎡以下) 面積×2,450円+303,000円
一定区域内の農地(250㎡以下) 面積×1,210円+208,000円
森林(750㎡以下) 面積×59円+210,000円

具体的な計算例を見てみます。地方にある雑種地の原野を1筆手放す場合、面積にかかわらず負担金は20万円です。ここに審査手数料14,000円を足すと、実費の合計は214,000円になります。

一方、市街化区域内にある100㎡の宅地を1筆申請する場合は、面積算定の対象になります。50超100㎡以下の区分にあたるため、負担金は「100㎡×2,720円+276,000円」で548,000円です。これに審査手数料14,000円を加えると、実費だけで562,000円かかる計算になります。同じ「土地1筆」でも、原則20万円のケースと市街地宅地のケースでは費用が大きく違うことがわかります。

法務省は負担金を自動で計算できるExcelシートを公開しているため、自分の土地の区分と面積を入れて事前に見積もっておくと安心です。

引き取ってもらえない土地の条件

相続土地国庫帰属制度は、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。条件を満たさない土地は、申請の入口で却下されるか、審査の途中で不承認になります。しくみを知らずに申請すると、返還されない審査手数料だけを失うことになるため、事前の確認が欠かせません。

申請できない土地(却下される土地)

  • 建物が建っている土地
  • 担保権や使用収益権が設定されている土地
  • 他人による利用が予定されている土地
  • 土壌汚染がある土地
  • 境界が明確でない、または所有権の存否や範囲に争いがある土地

承認されない土地(不承認になる土地)

  • 一定の勾配や高さのある崖があり、管理に過分な費用や労力がかかる土地
  • 地上に管理を妨げる工作物や樹木などがある土地
  • 地下に除去が必要な有体物(埋設物など)がある土地
  • 隣接する土地の所有者らと争訟が必要な土地
  • その他、通常の管理や処分に過分な費用や労力がかかる土地

老朽化した建物が残っている土地は、そのままでは申請できません。建物を解体してからでないと対象にならない点は、費用を考えるうえで重要です。

相続放棄と国庫帰属制度のどちらを選ぶか|判断フロー

和室の机で地図を見つめる人の後姿。
どちらの道を選ぶか思案する様子(イメージ)

不要な土地を手放したいとき、相続放棄と国庫帰属制度のどちらが向いているかは、次の条件で切り分けられます。

条件1:相続財産に受け取りたいものがあるか

預貯金や他の不動産など、受け取りたい財産があるなら相続放棄は使えません。相続放棄は全部を手放す手続きだからです。この場合は、相続したうえで不要な土地だけを国庫帰属制度で手放す方向を検討します。

条件2:相続を知ってから3か月以内か

相続放棄は原則3か月以内という期限があります。すでに期限を過ぎている、あるいは土地はすでに相続登記まで済ませているなら、選択肢は国庫帰属制度に絞られます。

条件3:土地が国庫帰属の条件を満たすか

建物が建っている、境界が不明確、崖があるといった土地は国庫帰属制度の対象外です。この場合は、解体や測量で条件を整えるか、売却や寄付など別の方法を探すことになります。相続放棄をしても、次の管理者が決まるまで一定の管理義務が残る点にも注意が必要です。

土地の名義変更や、相続全体でどこにいくらかかるのかを先に押さえたい場合は、費用の全体像をまとめた相続手続きの費用相場の比較記事もあわせて確認してください。

よくある質問

負担金の20万円以外に費用はかかりますか

審査手数料が土地1筆につき14,000円かかります。さらに書類作成を専門家に依頼する場合は、その報酬が別に発生します。建物が残っている土地では、申請前の解体費用も必要になります。

審査で却下されたら手数料は返ってきますか

返還されません。審査手数料14,000円は、却下や不承認の場合でも戻らないため、申請前に土地が条件を満たすかを確認しておくことが大切です。

相続放棄と国庫帰属制度はどう違いますか

相続放棄は預貯金や借金を含む相続財産すべてを手放す手続きで、費用は収入印紙800円と切手で済みます。国庫帰属制度は、相続した土地の一部だけを負担金を払って国に引き取ってもらう制度です。何を手放したいかで選ぶ手続きが変わります。

複数の土地をまとめて申請できますか

複数の土地を申請することはできますが、審査手数料は原則として土地一筆ごとにかかります。負担金も土地の種類や面積に応じて算定されるため、筆数が増えるほど費用は大きくなります。

山林や森林でも引き取ってもらえますか

森林も対象になり得ますが、負担金は面積に応じて算定されます。崖があり管理に過分な費用がかかる土地や、境界が不明確な土地は不承認になることがあるため、事前の確認が必要です。

手続きにどれくらい時間がかかりますか

申請から承認までには、土地の実地調査などを含めた審査期間が必要です。期間は土地の状況によって変わるため、余裕をもって法務局へ事前相談することをおすすめします。

情報は2026年9月時点のものです。制度の内容や費用は改正で変わることがあるため、申請前に法務省や管轄の法務局の公式情報で最新の内容を確認してください。

参考・出典

  • 法務省「相続土地国庫帰属制度について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html
  • 裁判所「相続の放棄の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
  • 日本行政書士会連合会「報酬額統計調査の結果」 https://www.gyosei.or.jp/about/disclosure/reward
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