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父が亡くなり、車庫には父名義のままの車が残っている。売るにも廃車にするにも保険を引き継ぐにも、まず相続人へ名義を移さないと手が付けられません。ところが不動産の名義変更(相続登記)と勝手が違い、行き先も必要書類も別の窓口になります。ここでつまずく方は少なくありません。
判断の基準は大きく三つです。第一に、対象が普通自動車か軽自動車かで、手続きの窓口も書類も変わります。第二に、その車の価値が100万円以下かどうかで、相続人全員の実印を集める遺産分割協議書を省ける「簡易な手続き」が使えるかが決まります。第三に、平日に窓口へ行けるかどうかで、自分でやるか代行に頼むかが分かれます。この記事ではこの三点を順に整理し、価値を証明する査定証の扱いまで具体的に説明します。
相続 車 名義変更は義務ではないが、放置すると動かせなくなる

2024年4月から不動産の相続登記は義務化され、相続の開始と所有権取得を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象になります(法務省)。一方、車の名義変更(正式には「移転登録」)には、このような期限や過料の定めはありません。放置しても罰金が来るわけではないため、後回しにされがちです。
ただし名義が亡くなった方のままだと、実務上は困りごとが積み重なります。名義人でないと売却も廃車もできず、任意保険の名義や自動車税の納税義務者もそのままになります。相続人が複数いる場合、時間が経つほど連絡が取りにくくなり、いざ手続きしようとした時に全員の同意を取り直す手間が膨らみます。義務ではないからこそ、動ける相続人が早めに済ませておくのが結果的に安く済みます。
なお、家や土地の名義変更にかかる費用や全体像は、相続手続きの費用相場をまとめた比較記事で確認できます。車はその中の一つの財産という位置づけです。
車 相続 名義変更 費用の内訳
まず押さえておきたいのは、車の移転登録には不動産のような高額な税金がかからない点です。不動産の相続登記では登録免許税として「固定資産税評価額×0.4%(1000分の4)」がかかります(国税庁 タックスアンサー No.7191)。評価額1000万円の不動産なら4万円です。これに対し、車の名義変更にこの登録免許税はかかりません。実費は次のような項目にとどまります。
| 費目 | 目安・扱い | 備考 |
|---|---|---|
| 移転登録の手数料(登録印紙) | 700円(電子申請は600円) | 運輸支局の窓口で納付 |
| ナンバープレート代 | 公式サイトで確認 | 管轄が変わる・希望番号にする場合に発生 |
| 車庫証明(保管場所証明) | 都道府県の手数料条例で定められ、地域により異なる | 保管場所が変わる場合に必要(軽は地域により不要) |
| 戸籍謄本などの取得実費 | 1通あたりの発行手数料 | 出生から死亡までを集めると通数がかさむ |
| 査定証の取得費用 | 公式サイトで確認 | 価値100万円以下の簡易手続きで使う場合 |
| 代行を頼む場合の報酬 | 公式サイトで確認 | 行政書士やディーラーに依頼した場合 |
広告この記事の結論:相続手続きのnocos
車だけでなく預金や不動産もまとめて相続手続きが発生しているなら、専門家が在籍する窓口に一括で相談したほうが手間を減らせる場合があります。
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金額を空欄にしている項目は、地域や車種、依頼先によって変わるため、実際に手続きする運輸支局や依頼先で最新の金額を確認してください。ここで確実に言えるのは、税金の面では不動産の相続登記より大幅に負担が軽いということです。費用のほとんどは書類集めの実費と、頼む場合の代行報酬です。
100万円以下なら簡易手続き|査定証で協議書を省ける

普通自動車の名義変更では、原則として相続人全員が実印を押した遺産分割協議書と、全員分の印鑑証明書が必要です。ところが、その車の価値が100万円以下であれば、相続人の代表者一人が署名する「遺産分割協議成立申立書」で手続きでき、全員の実印集めを省けます。相続人が遠方に散らばっている場合や、価値の低い古い車を一人が引き継ぐ場合に負担が大きく減る仕組みです。
査定証の扱い(100万円以下をどう証明するか)
この簡易な手続きを使うには、車の価値が100万円以下であることを客観的に示す書類が必要です。ここで使うのが査定証です。日本自動車査定協会などが発行する査定価格が記載された書面、または中古車販売店による査定価格を証する書面を添えて、100万円以下であることを裏づけます。年式の古い車で明らかに低額の場合でも、口頭の申告だけでは通らず、価格を証明できる書面を求められるのが原則です。査定証の取得には所定の手数料がかかるため、簡易手続きで浮く手間と、査定証を取る費用を天秤にかけて判断します。
判断フロー
- 対象が軽自動車 → 後述のとおりそもそも協議書が原則不要。査定証の話は基本的に関係しません。
- 普通自動車で、価値が100万円を超える → 相続人全員の遺産分割協議書+印鑑証明が必要(簡易手続きは使えません)。
- 普通自動車で、価値が100万円以下 → 遺産分割協議成立申立書+査定証などで、代表者一人の手続きに簡素化できます。
普通自動車と軽自動車で違う必要書類
手続きの重さは車種で大きく変わります。普通自動車は運輸支局(陸運局)、軽自動車は軽自動車検査協会が窓口です。軽自動車は相続でも比較的簡単で、遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明が原則不要という点が普通車との最大の違いです。
| 書類 | 普通自動車(運輸支局) | 軽自動車(軽自動車検査協会) |
|---|---|---|
| 車検証(自動車検査証) | 必要 | 必要 |
| 被相続人の戸籍(出生から死亡まで)または法定相続情報一覧図 | 必要 | 死亡と相続人が分かる範囲で必要 |
| 遺産分割協議書 | 必要(100万円以下は申立書+査定証で代替可) | 原則不要 |
| 新所有者の印鑑証明書・実印 | 必要 | 原則不要(住民票等で可) |
| 車庫証明書 | 保管場所が変わる場合に必要 | 地域により不要または事後届出 |
| 申請書・手数料納付書・自動車税申告書 | 必要 | 必要(様式は協会所定) |
戸籍を一式そろえるのが面倒な場合は、法務局が発行する法定相続情報一覧図を使うと、戸籍の束の代わりに1枚で相続関係を示せます。取得方法は別の記事で扱っていますが、車以外の預金や不動産の手続きでも使い回せるため、複数の財産があるなら先に取っておくと効率的です。軽自動車の必要書類は地域や協会の運用で細部が異なるため、手続き前に管轄の協会へ確認してください。
手続きの流れと、自分でやるか代行に頼むかの分かれ目

普通自動車の大まかな流れは、戸籍などで相続人を確定する、遺産分割協議書または申立書で誰が引き継ぐかを決める、車庫証明が要る場合は先に取得する、必要書類をそろえて運輸支局で移転登録する、という順です。窓口は平日日中のみの受付が基本で、車庫証明も警察署への申請から交付まで数日かかります。
自分でやれば実費だけで済みますが、平日に複数回窓口へ行く時間が要ります。仕事の都合で平日に動けない、相続人が遠方で書類のやり取りが煩雑、査定証の取得や書類様式に不安がある、といった場合は、行政書士やディーラーに代行を頼むと手間を大きく減らせます。代行報酬は依頼先や車種で幅があるため、複数の見積りを取って比べるのが確実です。車1台だけでなく預金や不動産もまとめて相続手続きが発生しているなら、全体を一括で相談したほうが割安になることもあります。
よくある質問
名義変更をしないまま車に乗り続けても問題ありませんか。
罰則はありませんが、名義人でないと売却や廃車ができず、保険や自動車税の名義も亡くなった方のままになります。事故時の対応にも支障が出るため、乗り続ける場合でも早めの名義変更をおすすめします。
相続人が複数いる場合、全員の同意が必要ですか。
普通自動車で価値が100万円を超える場合は、原則として相続人全員が実印を押した遺産分割協議書が必要です。100万円以下であれば代表者一人の遺産分割協議成立申立書で手続きでき、査定証などで価値を示します。
査定証はどこで取れますか。
日本自動車査定協会や中古車販売店で、査定価格を記載した書面を発行してもらえます。100万円以下であることを客観的に示すために使います。取得には手数料がかかるため、簡易手続きで省ける手間と費用を比べて判断してください。
軽自動車の相続はなぜ簡単なのですか。
軽自動車は普通自動車と登録制度が異なり、相続の名義変更でも遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明が原則不要とされているためです。ただし地域や協会の運用で必要書類が変わることがあるので、事前に管轄の軽自動車検査協会へ確認してください。
ローンが残っている車も名義変更できますか。
所有者がローン会社やディーラーになっているケースでは、まずローンの清算や所有権解除が必要で、相続人がすぐに名義を移せないことがあります。車検証の所有者欄を確認し、ローン会社に手続きを問い合わせてください。
不動産の相続登記のように登録免許税はかかりますか。
車の移転登録に、不動産の登録免許税(評価額×0.4%)に相当する税金はかかりません。費用の中心は書類の取得実費と、代行を頼む場合の報酬です。
参考・出典
- https://laws.e-gov.go.jp/law/326CO0000000255
- 国税庁 タックスアンサー No.7191(登録免許税の税額表・不動産の相続登記0.4%)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
- 法務省「相続登記の申請義務化」(2024年4月1日施行・3年以内・10万円以下の過料)https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html

