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親が一人で暮らしていた実家を、離れて暮らす子どもが引き継ぐ。よくある相続ですが、同居していなかった相続人ほど「名義変更にいくらかかるのか」「同居していた場合と何が違うのか」が見えにくくなります。結論から言うと、実家の名義変更(相続登記)そのものにかかる費用は、同居していたかどうかで変わりません。変わるのは相続税の計算のほうで、その分かれ目になるのが「小規模宅地等の特例(居住用の土地の評価額を大きく下げられる制度)」を使えるかどうかです。まずは名義変更の実費を把握し、そのうえで相続税がかかる規模かを確認する。この順番で見ていくと、離れて暮らす相続人でも判断を誤りにくくなります。
実家の名義変更にかかる費用の内訳(同居・別居で変わらない)

実家の名義を故人から相続人へ移す手続きを相続登記といいます。ここでかかるお金は、大きく「登録免許税(国に納める税金)」「専門家に頼む場合の司法書士報酬」「戸籍などの実費」の3つに分かれます。いずれも、相続人が実家に同居していたか、離れて暮らしていたかでは金額が変わりません。名義変更の費用は住んでいた場所ではなく、不動産の評価額と手続きの内容で決まるためです。
| 費目 | 金額の決まり方 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 不動産の固定資産税評価額 × 0.4%(1,000分の4) | 土地の価額が100万円以下なら令和9年3月31日まで免税 |
| 司法書士報酬 | 平均 約74,888円(下の設例による目安) | 不動産や相続人の数で大きく変わる。自分で登記すれば0円 |
| 戸籍・住民票などの実費 | 1通数百円の積み上げ | 出生から死亡までの戸籍を集めるため数千円程度になりやすい |
司法書士報酬の「約74,888円」は、日本司法書士会連合会が2024年3月に実施した報酬アンケートの平均額です(2026年9月時点・公式資料確認)。設例は「土地1筆と建物1棟・固定資産評価額の合計1,000万円・戸籍等5通の交付請求・遺産分割協議書と相続関係説明図の作成・登記申請の代理、法定相続人3名のうち1名が単独で相続」というものです。実家の規模や相続人の人数が違えば金額も動くため、あくまで目安として見てください。
計算例:固定資産評価額1,000万円の実家を名義変更する
離れて暮らす子が、評価額1,000万円の実家(土地と建物)を一人で相続し、司法書士に依頼したケースで実費を積み上げてみます。
- 登録免許税:1,000万円 × 0.4% = 40,000円
- 司法書士報酬:約74,888円(上記アンケートの設例に近い条件)
- 戸籍・住民票などの実費:数千円程度
- 合計:おおむね11万円台
この「約11万円」という水準や、費目ごとの詳しい相場は、相続手続きの費用相場を扱った比較記事でまとめています。自分で登記をすれば司法書士報酬はかからず、登録免許税と実費だけになりますが、戸籍の読み取りや申請書の作成を自分で行う手間が残ります。この「名義変更の実費」は、同居していた相続人が継いでも、離れて暮らす相続人が継いでも同じ金額です。
同居していないと相続税で不利になりやすい理由

名義変更の実費が同じでも、離れて暮らす相続人が注意したいのが相続税です。相続税には基礎控除があり、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」までは課税されません。たとえば法定相続人が3人なら、3,000万円+600万円×3=4,800万円までは相続税がかからず、この範囲に遺産全体が収まるなら、実家を継いでも相続税の心配は基本的に不要です。
問題になるのは、遺産が基礎控除を超える場合です。ここで効いてくるのが小規模宅地等の特例で、故人が住んでいた土地について、一定の要件を満たす相続人が引き継ぐと、その土地の評価額を大きく減額できます。ところがこの特例は、原則として配偶者か、故人と同居していた親族が取得する場合に使いやすい仕組みです。実家を離れて暮らしていた子が相続すると、この特例をそのまま使えないことがあり、同じ実家でも同居の家族が継いだ場合より相続税の負担が重くなり得ます。
ただし、別居していた相続人でも「家なき子」と呼ばれる例外に当てはまれば、この特例を使える場合があります。おおまかには、相続の前の一定期間、自分や配偶者などが所有する持ち家に住んでいなかったこと等の条件がありますが、要件は細かく、当てはまるかどうかの判断は専門的です。具体的な減額割合や面積の上限、家なき子の要件は、国税庁の該当ページや税理士への確認が欠かせません(特定居住用宅地等は330㎡まで評価額を80%減額、いわゆる家なき子は被相続人に配偶者がいないこと・相続開始前3年以内に自己や三親等内の親族等が所有する家屋に住んでいないこと・申告期限まで保有することなどが要件)。相続税がかかりそうな規模の実家では、名義変更を急ぐ前に、この特例の可否を先に確認しておくと判断を誤りません。
別居の相続人が費用で損しないための判断フロー
離れて暮らす相続人が実家を継ぐとき、どの費用を、どの順番で確認すればよいかを整理します。上から順にたどってください。
- 遺産の総額は基礎控除の範囲内か:「3,000万円+600万円×法定相続人の数」以下なら、相続税は基本的にかからず、必要なのは名義変更の実費(登録免許税+司法書士報酬+実費)だけです。
- 基礎控除を超えるなら、小規模宅地等の特例が使えるか:配偶者や同居親族が取得するのか、別居の自分が取得するのかで結論が変わります。別居の場合は家なき子の要件に当てはまるかを税理士に確認します。
- 特例が使えないなら、誰が何を取得するのが有利か:遺産分割の段階で、実家を誰が継ぐかによって世帯全体の相続税が変わります。名義変更(登記)を進める前に決めるべき論点です。
- 住む予定がなく空き家になるか:将来売却するなら、空き家を売ったときの3,000万円特別控除など、別の制度が関わります。詳しくは空き家の控除を扱った記事で確認してください。
実費の総額(名義変更費用)は1でほぼ確定しますが、2以降は相続税の話であり、実家を継ぐ人が変わるだけで世帯全体の税額が動くことがあります。順番を逆にして先に登記だけ済ませてしまうと、あとから「別の分け方のほうが有利だった」と気づいても戻しにくくなります。
実家 相続 名義変更 費用で見落としやすい注意点

費用の内訳がわかっても、離れて暮らす相続人が見落としやすい点が二つあります。
相続登記には3年の期限がある
相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化され、相続の開始を知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記しなければならなくなりました。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。施行より前に発生した相続も、令和9年3月31日までが期限です(知った日が令和6年4月以降なら、その日から3年)。実家から離れて暮らしていると手続きを後回しにしがちですが、期限を過ぎると過料のリスクが加わります。すぐに分け方が決まらない場合は、相続人申告登記という簡便な手続きで、ひとまず義務を果たす方法もあります。
誰も住まない実家は維持費と将来の売却も視野に
離れて暮らす相続人が継ぐと、実家がそのまま空き家になることが少なくありません。固定資産税や管理の手間が続くうえ、将来売却するなら税制上の扱いも関わります。名義変更の費用だけでなく、その後の維持や処分まで含めて考えると、実家を誰が継ぐか、あるいは売却して分けるかの判断がしやすくなります。
よくある質問
実家に同居していないと名義変更の費用は高くなりますか
いいえ。相続登記にかかる登録免許税や司法書士報酬は、不動産の評価額と手続きの内容で決まり、同居していたかどうかでは変わりません。同居の有無で差が出るのは相続税の計算のほうです。
実家の名義変更にかかる登録免許税はいくらですか
固定資産税評価額の0.4%(1,000分の4)です。評価額1,000万円なら4万円になります。土地の価額が100万円以下の場合は、令和9年3月31日まで免税とされています。
離れて暮らしていても小規模宅地の特例は使えますか
原則は配偶者や同居親族が使いやすい制度ですが、別居の相続人でも「家なき子」と呼ばれる例外の要件を満たせば使える場合があります。要件は細かいため、税理士や国税庁の該当ページで確認してください。
実家を相続すると必ず相続税がかかりますか
いいえ。遺産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下なら、相続税はかかりません。この範囲に収まるなら、必要なのは名義変更の実費だけです。
名義変更を後回しにするとどうなりますか
相続登記は義務化されており、相続の開始と所有権取得を知った日から3年以内に登記しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になります。分け方が決まらない場合は相続人申告登記で義務を果たす方法があります。
自分で名義変更すれば費用を抑えられますか
司法書士報酬(平均約74,888円の目安)はかからなくなり、登録免許税と戸籍などの実費だけになります。ただし戸籍の収集や申請書の作成を自分で行う手間が残るため、時間との兼ね合いで判断してください。
参考・出典
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.7191(登録免許税の税額表・相続登記の免税) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4152(相続税の基礎控除) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4205(相続税の申告と納税の期限) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3306(被相続人の居住用財産・空き家を売ったときの特例) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 法務省「相続登記の申請義務化について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
- 日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施) https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/11/2a2e2c594bc4cd9ff2ca0f6d916db85e.pdf

