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親が亡くなり、実家の土地と建物、あるいは親名義のマンションをそのまま相続することになった。売る予定はないので急がなくてもいい気がするけれど、名義変更にいくらかかるのかが分からず手を付けられていない、という方は少なくありません。不動産の名義変更(正式には「相続登記」といい、法務局で所有者を書き換える手続きです)は、財産の種類によって費用の内訳が変わります。
結論から言えば、費用を左右する最大の要素は「その不動産の固定資産税評価額」です。国に納める登録免許税(登記のときにかかる税金)が評価額の0.4%で計算されるため、まず評価額を正確に調べることが、土地・家・マンションのいずれでも費用把握の出発点になります。ここでは財産別の計算例と、評価額の具体的な調べ方を整理します。
名義変更の費用は「登録免許税」「専門家報酬」「書類の実費」の三つ

不動産の相続登記でかかるお金は、大きく三つに分かれます。誰が手続きしても必ずかかるのが登録免許税で、これは固定資産税評価額×0.4%(1,000分の4)と国税庁が定めています(2026年9月時点・国税庁タックスアンサーNo.7191)。相続による取得であれば、遺贈で受け取った場合も同じ0.4%です。
二つめが、手続きを司法書士に依頼した場合の専門家報酬です。自分で申請すればここはゼロにできます。三つめが、戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書といった書類の取得実費で、必要な通数によって変わります。このうち評価額で金額が決まるのは登録免許税だけなので、財産別に見ていく際は登録免許税を中心に考えると分かりやすくなります。
手続き全体の費用相場や司法書士に頼んだ場合の総額イメージは、相続手続きの費用相場をまとめた記事で内訳ごとに整理しています。
土地・家・マンションで登録免許税はこう変わる
登録免許税は「その不動産の評価額×0.4%」なので、財産の種類そのものよりも評価額の大きさで決まります。ただし土地と建物は評価額の付き方が異なり、マンションは「専有部分の建物」と「敷地権(土地の持分)」の両方を合算する点に注意が必要です。評価額別の税額を並べると次のようになります。
| 不動産の例 | 固定資産税評価額 | 登録免許税(×0.4%) |
|---|---|---|
| 土地(戸建ての敷地) | 1,500万円 | 60,000円 |
| 家屋(戸建ての建物) | 500万円 | 20,000円 |
| 土地+家屋を合わせて相続 | 2,000万円 | 80,000円 |
| マンション(建物+敷地権の合計) | 1,200万円 | 48,000円 |
戸建てを相続する場合は、土地分と建物分の登録免許税を足すことになります。上の例では土地60,000円+建物20,000円で合計80,000円です。マンションは登記簿上、専有部分と敷地権が一体で扱われるため、両方の評価額を合算した額に0.4%を掛けます。専有部分だけで計算すると税額が過少になるので、敷地権の評価額を必ず含めてください。
なお、土地については免税の特例があります。相続する土地の価額が100万円以下であれば、登録免許税は免税です(令和9年3月31日までの措置・国税庁No.7191)。地方の狭い土地や持分だけを相続するケースでは、この免税に当てはまることがあります。
登録免許税を決める「固定資産税評価額」の調べ方

費用計算の前提になる固定資産税評価額は、次のいずれかで確認できます。相続登記では、被相続人(亡くなった方)名義の不動産の評価額が必要です。
- 固定資産税の納税通知書(課税明細書)。毎年春に市区町村から送られてくる書類で、土地・家屋ごとの評価額が記載されています。手元にあれば最も手軽です。
- 固定資産評価証明書。市区町村役場(東京23区は都税事務所)で取得します。相続登記に添付する書類でもあるため、名義変更の際は結局これを取ることになります。
- 名寄帳(なよせちょう)。同じ市区町村内で被相続人が持っていた不動産を一覧にした帳簿で、把握もれを防げます。
注意したいのは、登録免許税の計算に使うのは「固定資産税評価額」であって、購入価格や時価、相続税評価額(路線価)ではない点です。課税明細書には「固定資産税課税標準額」など似た欄が並ぶことがありますが、登録免許税の計算に使うのは評価額の欄です。1,000円未満は切り捨てて計算し、算出した税額に100円未満の端数があれば切り捨てます。
自分でやるか司法書士に頼むかの判断フロー
登録免許税と書類の実費は誰がやっても同じなので、差が出るのは司法書士報酬の有無です。日本司法書士会連合会の2024年のアンケートでは、相続登記の報酬は平均74,888円でした(2026年9月時点・同連合会公表)。ただしこれは「土地1筆+建物1棟・評価額合計1,000万円・戸籍等5通の取り寄せ・遺産分割協議書と相続関係説明図の作成・登記申請代理、相続人3名のうち1名が単独相続」という設例での平均で、不動産や相続人の数が増えれば報酬も上がります。
次の条件に当てはまる数が多いほど、司法書士へ依頼する価値が高くなります。
- 相続人が複数いて、遺産分割の話し合いや協議書作成が必要 → 依頼を検討
- 不動産が複数の市区町村にまたがる、または筆数が多い → 依頼を検討
- 戸籍を出生から死亡までさかのぼって集める必要がある → 依頼を検討
- 相続人が自分一人、対象は実家の土地・建物だけ、平日に法務局へ行ける → 自分で申請も現実的
単純な一件であれば自分で申請して報酬分を節約できますが、平日の窓口対応や書類の補正に時間が取れるかが分かれ目です。費用を抑えたい場合は、複数の司法書士から見積もりを取って比べるのが確実です。
3年以内に名義変更しないと過料の対象になる

不動産の名義変更は、以前は義務ではありませんでした。しかし令和6年4月1日から相続登記が義務化され、相続の開始を知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならなくなりました。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料(行政上の金銭的な制裁)の対象になります(2026年9月時点・法務省)。
施行前に発生した相続も対象で、その場合は令和9年3月31日までが期限です。遺産分割がまとまらず名義を決められないときは、「相続人申告登記」(自分が相続人であることを法務局に申し出る簡易な手続き)をすれば、ひとまず基本的な義務は果たせます。売る予定がなくても、期限があることを踏まえて早めに動くのが安全です。
よくある質問
登録免許税は現金で払うのですか
登録免許税は、金額分の収入印紙を申請書に貼って納めるのが一般的です。金額が大きい場合は現金納付(領収証書の貼付)も可能です。いずれにしても、法務局へ申請する時点で納める税金です。
土地と建物で申請は別々になりますか
同じ管轄法務局にある土地と建物なら、一つの申請にまとめられます。登録免許税は土地分と建物分の評価額を合算して0.4%を掛けて計算します。管轄が違う不動産は、それぞれの法務局へ申請が必要です。
マンションの敷地権の評価額はどこで分かりますか
マンションの敷地権(土地の持分)の評価額も、固定資産評価証明書や課税明細書に記載されています。専有部分の建物と敷地権が分かれて載っていることが多いので、両方の評価額を確認して合算してください。
評価額が分からないと費用は計算できませんか
登録免許税は評価額をもとに算出するため、まず固定資産評価証明書などで評価額を確認する必要があります。課税明細書が手元にない場合は、市区町村役場や都税事務所で評価証明書を取得すれば確認できます。
司法書士に頼むと登録免許税も高くなりますか
登録免許税は法律で決まった税額なので、自分で申請しても司法書士に頼んでも金額は同じです。依頼した場合に増えるのは司法書士報酬の分だけで、税金そのものは変わりません。
相続した土地の名義変更で免税になることはありますか
相続する土地の価額が100万円以下の場合は、登録免許税が免税になります(令和9年3月31日までの措置)。狭い土地や持分のみの相続で当てはまることがあります。建物にはこの免税はありません。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.7191(登録免許税の税額表・相続登記0.4%・土地100万円以下の免税) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
- 法務省「相続登記の申請が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
- 日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施) https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/11/2a2e2c594bc4cd9ff2ca0f6d916db85e.pdf

