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独身の兄が亡くなり、両親もすでに他界している。子どももいない。残されたのは弟や妹である自分たちだけ——このように、相続人が兄弟姉妹だけになるケースは決してめずらしくありません。子や親が相続する場合と違い、兄弟姉妹の相続には「相続分の割合が独特」「甥や姪への引き継ぎに範囲がある」「相続税が2割上乗せされる」という3つの固有の論点があります。
兄弟のみで相続を進めるときにまず押さえるべきは、次の3点です。第一に、配偶者や子・親が本当にいないかを確認して相続人を確定すること。第二に、兄弟姉妹の法定相続分(民法が定める取り分の目安)と、亡くなった兄弟の子(甥・姪)が代わりに相続する「代襲相続」の範囲を知ること。第三に、兄弟が相続すると相続税額に2割が加算される点をふまえて税額を見積もることです。この記事は、この3点を民法と国税庁の一次情報にそって順に整理します。
兄弟姉妹が相続人になるのは「子も親もいない」ときだけ

民法は、配偶者以外の相続人に順位を定めています。配偶者は常に相続人になり、それに加えて次の順位のうち、上位の人がいれば下位の人は相続人になりません。
| 順位 | その順位に当たる人 | 兄弟姉妹への影響 |
|---|---|---|
| 第1順位 | 子(亡くなっていれば孫などが代襲) | 子がいると兄弟は相続人にならない |
| 第2順位 | 直系尊属(父母、いなければ祖父母) | 親がいると兄弟は相続人にならない |
| 第3順位 | 兄弟姉妹(亡くなっていれば甥・姪が代襲) | 子も親もいないときに初めて相続人になる |
判断フロー(条件から相続人を絞る)
- 亡くなった人に子(または孫などの直系卑属)がいるか。いれば兄弟は相続人にならない。
- 子がいないなら、父母や祖父母(直系尊属)が存命か。いれば兄弟は相続人にならない。
- 子も直系尊属もいない場合に、兄弟姉妹が相続人になる。配偶者がいれば配偶者と共同で相続する。
「兄弟のみ」で相続する典型は、亡くなった人に配偶者・子がなく、両親も先に亡くなっているケースです。判断を誤りやすいのは、離婚した元配偶者との間に子がいる場合や、認知した子がいる場合で、この子は第1順位の相続人になり、兄弟は相続人から外れます。相続人の確定は、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍をすべてたどって行うのが原則です。
兄弟のみ・配偶者と兄弟の法定相続分
法定相続分は、遺言がない場合に遺産分割協議(相続人全員の話し合い)の基準となる取り分です。兄弟姉妹が関わるときの割合は、民法900条で次のように定められています。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者の相続分 | 兄弟姉妹の相続分 |
|---|---|---|
| 配偶者と兄弟姉妹 | 4分の3 | 4分の1(兄弟姉妹の人数で等分) |
| 兄弟姉妹のみ | ― | 全部(兄弟姉妹の人数で等分) |
配偶者がいる場合、兄弟姉妹の取り分は全体の4分の1にとどまります。たとえば配偶者と兄弟2人が相続人なら、配偶者が4分の3、兄弟はそれぞれ4分の1を2人で分けて8分の1ずつです。配偶者がおらず兄弟だけなら、頭数で等分します。兄弟3人なら1人あたり3分の1です。
この割合はあくまで話し合いの目安であり、相続人全員が合意すれば異なる分け方も可能です。ただし、兄弟姉妹には遺留分(最低限の取り分を請求できる権利)が認められていないため、遺言で「全財産を特定の人へ」と指定されていた場合、兄弟は原則としてそれ以上を請求できません。この点は子や親が相続人になるときと大きく異なります。
甥・姪への代襲相続は「一代限り」で止まる

相続人になるはずの兄弟姉妹が、亡くなった人より先に(または同時に)亡くなっている場合、その子である甥・姪が代わりに相続します。これを代襲相続といいます。編集上とくに注意したいのは、兄弟姉妹の代襲は甥・姪までの一代限りで止まる点です。
子が相続人のケースでは、子が亡くなっていれば孫、孫も亡くなっていればひ孫へと下の世代へ代襲が続きます(再代襲)。これに対し、兄弟姉妹の系統では甥・姪までしか代襲せず、甥・姪も先に亡くなっているときにその子(大甥・大姪)へ引き継がれることはありません。民法が兄弟姉妹の相続について再代襲の規定を準用していないためです。
代襲の具体例
亡くなった人に子・親がなく、兄と妹の2人が本来の相続人だとします。兄がすでに亡くなっていて、兄に子(甥)が2人いる場合、相続人は「妹」と「甥2人」です。兄の相続分(この例では2分の1)を甥2人が代襲し、4分の1ずつを取得します。妹は2分の1です。もし甥も先に亡くなっていれば、その子へは引き継がれず、甥の分は他の相続人に回る形になります。
半血の兄弟(片方の親だけが同じ)は相続分が半分
父母の一方だけが同じ兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)は、父母の双方が同じ兄弟姉妹(全血)の2分の1の相続分になります。たとえば父の再婚により、父母の双方が同じ妹と、父だけが同じ異母兄がいる場合、異母兄の取り分は妹の半分です。全血の妹を「2」、半血の兄を「1」とする比で分けます。相続人に半血と全血が混在するときは、この調整を忘れると分割協議の数字がずれるため、戸籍で続柄をていねいに確認することが欠かせません。
兄弟が相続すると相続税額が2割加算される
相続税には、亡くなった人の配偶者と一親等の血族(子・父母)以外が財産を取得した場合に、その人の相続税額に2割を上乗せする「相続税額の2割加算」という仕組みがあります(相続税法第18条)。兄弟姉妹や、代襲した甥・姪はこの2割加算の対象です。同じ遺産額でも、子や親が相続する場合に比べて、兄弟が相続すると納める税額が重くなる点は、兄弟相続に固有の負担です。
もっとも、相続税は遺産の総額が基礎控除額を超えなければかかりません。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です(国税庁 タックスアンサー No.4152)。
基礎控除の計算例
亡くなった兄に配偶者・子・親がなく、相続人が弟と妹の2人だとすると、基礎控除額は3,000万円+600万円×2人=4,200万円です。遺産の総額がこの範囲に収まれば、相続税の申告・納付は原則として不要です。相続人が甥・姪の代襲で増えれば、その人数も法定相続人の数に含めて計算します。基礎控除を超えて相続税がかかる場合は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内が申告・納付の期限です(国税庁 No.4205)。この期限を過ぎると加算税・延滞税がかかる場合があります。
具体的な税額は、遺産の種類や評価額、控除の適用によって変わります。2割加算が絡む兄弟相続では、早めに税理士へ相談し、複数の見積りで比較して判断することが安全です。税理士報酬には公的な相場統計がないため、料金表は事務所ごとに確認してください。
兄弟だけの相続でつまずきやすい手続きと費用

兄弟相続では、相続人を確定するための戸籍集めが特に負担になりがちです。亡くなった人に子や親がいないことを証明するには、本人の出生から死亡までの戸籍に加え、両親それぞれの出生から死亡までの戸籍まで必要になり、取り寄せる役所が複数に及びます。兄弟姉妹や甥・姪の現在の戸籍も要ります。人数が多いほど書類が増え、遺産分割協議の日程調整も難しくなります。
不動産があれば相続登記(名義変更)も必要です。登録免許税は不動産の価額(固定資産税評価額)の0.4%が目安で(国税庁 No.7191)、司法書士に依頼する場合の報酬は手続きの内容や相続人・不動産の数で変わります。手続き全体でいくらかかるか、費用の内訳の考え方は、関連する費用の記事もあわせて確認してください。実家など不動産の名義変更にかかる費用の目安は相続手続きの費用相場の記事で整理しています。
よくある質問
兄弟だけで相続する場合、遺言があっても取り分を請求できますか
兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言で他の人に全財産を渡すと指定されていれば、原則としてそれ以上を請求できません。遺留分を主張できるのは配偶者・子・直系尊属に限られます。
亡くなった兄弟の子(甥・姪)も相続人になりますか
本来相続人になる兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、その子である甥・姪が代襲して相続人になります。ただし甥・姪までの一代限りで、甥・姪の子へは引き継がれません。
異母兄弟と実の妹では相続分は同じですか
異なります。父母の一方だけが同じ半血の兄弟姉妹の相続分は、父母の双方が同じ全血の兄弟姉妹の2分の1です。続柄は戸籍で確認して分割に反映します。
兄弟が相続すると税金が高くなるというのは本当ですか
兄弟姉妹や甥・姪が財産を取得すると、相続税額に2割が加算されます(相続税法第18条)。ただし遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下なら、そもそも相続税はかかりません。
相続人が兄弟だけかどうか、どうやって確認しますか
亡くなった人の出生から死亡までの戸籍をたどり、子がいないこと、父母や祖父母がすでに亡くなっていることを確認して初めて、兄弟姉妹が相続人と確定します。両親の戸籍まで必要になるため、書類の範囲が広くなります。
相続放棄すると兄弟の相続分はどうなりますか
相続人の一人が家庭裁判所で相続放棄をすると、その人は初めから相続人でなかったものとして扱われ、残りの相続人で分け直します。相続放棄には申述期間(自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内)があります。
この記事の内容は2026年9月時点の法令・公的情報にもとづきます。相続分や税額は個々の事情で変わるため、実際の手続きは戸籍で相続人を確定したうえで、専門家に確認しながら進めてください。
参考・出典
- 民法(e-Gov法令検索)相続分・代襲相続の規定 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 国税庁 タックスアンサー No.4152 相続税の基礎控除額 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4205 相続税の申告と納税(期限) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.7191 登録免許税の税額表(相続登記0.4%) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
- 裁判所「相続の放棄の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html

