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親を亡くし、市区町村の届出を終えて、いざ実家の名義変更と銀行預金の解約に取りかかると、法務局では「評価証明書が足りない」、銀行では「うちの様式の相続届も要ります」、税務署では「残高証明を付けてください」と、窓口ごとに違う書類を追加で求められて何度も往復することになりがちです。相続の必要書類は「一式そろえれば全部通る」ものではなく、提出する窓口ごとに求められる組み合わせが異なります。
選び方の基準は単純です。まず全窓口で共通して要る「被相続人の戸籍一式」「相続人の戸籍と印鑑証明書」「遺産分割協議書」を先に集め、そのうえで戸籍の束を何度も出すことになるなら、法務局で法定相続情報一覧図(戸籍の内容を1枚に証明した公的書類)を作って戸籍束の代わりに使う。この順番で動けば、集め直しと往復を大きく減らせます。手続きの時系列は別記事に譲り、この記事は「どの窓口に何を出すか」を窓口別に整理します。
窓口別の相続 必要書類 一覧(法務局・金融機関・税務署・家庭裁判所)
代表的な4つの窓口で求められる書類を1表にしました。「○」は原則必要、「△」は窓口や事情により要否が分かれるもの、「不要」は原則求められないものです。
| 書類 | 法務局 (相続登記) |
金融機関 (預金の解約) |
税務署 (相続税申告) |
家庭裁判所 (相続放棄) |
|---|---|---|---|---|
| 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式 | ○ | ○ | ○ | △(申述人と被相続人の関係がわかる範囲) |
| 被相続人の住民票除票(または戸籍の附票) | ○ | △ | ○ | ○ |
| 相続人全員の現在の戸籍謄本 | ○ | ○ | ○ | ○(申述人の分) |
| 相続人全員の印鑑証明書 | ○ | ○ | ○ | 不要 |
| 遺産分割協議書(遺言があればそちら) | ○ | △(銀行の相続届で代替可) | ○ | 不要 |
| 固定資産評価証明書 | ○ | 不要 | △(土地評価に使用) | 不要 |
| 残高証明書・有価証券等の財産資料 | 不要 | △(通帳・カード) | ○ | 不要 |
| 各窓口の申請書・依頼書 | 登記申請書 | 相続手続依頼書(銀行様式) | 相続税申告書 | 相続放棄申述書+収入印紙800円+郵便切手 |
広告この記事の結論:相続手続きのnocos
法務局・金融機関・税務署・家庭裁判所で必要書類が違うため、まとめて相談できる窓口を使うと窓口ごとに調べる手間を減らせます。
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表で目立つのは、家庭裁判所への相続放棄だけは印鑑証明書も遺産分割協議書も不要という点です。放棄は「相続しない」意思表示なので、遺産を分ける前提の書類が要りません。一方で法務局・金融機関・税務署の3つは、共通書類(戸籍一式・相続人の戸籍・印鑑証明書・遺産分割協議書)が土台として重なります。この重なりを最初に押さえるほど効率が良くなります。
3窓口に共通する土台の書類
戸籍は「出生から死亡まで」が原則
被相続人の戸籍は、亡くなった時点の1通だけでは足りません。相続人が誰かを確定するため、出生までさかのぼった戸籍・除籍・改製原戸籍をつなげて集めます。本籍を移していると複数の市区町村にまたがるため、通数はまとまった数になります。参考として、日本司法書士会連合会の報酬アンケートの設例では、相続登記の代理に「戸籍等5通の交付請求」が含まれています(相続人3名・不動産2件という標準的なケース)。何通になるかは本籍の移動歴で変わります。
印鑑証明書と遺産分割協議書はセットで効く
遺産分割協議書には相続人全員が実印を押し、その実印が本物であることを印鑑証明書で証明します。この2つは法務局・金融機関・税務署で共通して求められる中心的な書類です。金融機関では独自の「相続手続依頼書」に相続人全員の署名と実印を求める形をとることが多く、遺産分割協議書そのものの提出を省ける場合もあります(対応は金融機関により異なります。全国銀行協会の案内も窓口ごとの様式差を前提としています)。
戸籍束を1枚に圧縮する法定相続情報一覧図

戸籍一式を法務局・銀行A・銀行B・税務署と何度も出し直すのは手間もコピー代もかかります。そこで使えるのが法定相続情報一覧図です。集めた戸籍一式を一度法務局に提出すると、相続関係を証明する一覧図の写しを無料で必要枚数交付してもらえます。以後は多くの窓口で、この一覧図1部が戸籍束の代わりになります。金融機関を複数まわる人や、登記と預金と申告が重なる人ほど効果が大きい書類です。取得方法や必要書類の詳細は専用の解説記事に譲ります。
集める順番の判断フロー
窓口をまたぐときに迷わないよう、集める順番を条件つきで並べます。
- まず全窓口共通の「被相続人の戸籍一式」「相続人全員の戸籍」「相続人全員の印鑑証明書」を集める。
- 戸籍束を複数の窓口で出すことになりそうなら、法務局で法定相続情報一覧図を作り、以後は一覧図1部で戸籍束を代替する。
- 不動産があるなら固定資産評価証明書を取り、評価額を確認する(相続登記の登録免許税は固定資産税評価額×0.4%で計算するため)。
- 相続税の申告が要るかを基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)で判定する。要るなら、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に残高証明・評価資料をそろえて申告する。
- 借金が多く相続放棄を選ぶ場合は、印鑑証明書も遺産分割協議書も不要。相続を知ったときから3か月以内に、収入印紙800円と郵便切手を添えて家庭裁判所へ申述する。
相続登記は令和6年(2024年)4月1日から義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由なく怠った場合に10万円以下の過料の対象になります。書類集めを後回しにしにくくなった点も、順番を決めて動く理由になります。
登録免許税の計算例(不動産がある場合)

法務局の相続登記では、書類のほかに登録免許税がかかります。税額は固定資産税評価額に0.4%(1,000分の4)を掛けた額です。
- 固定資産税評価額の合計 1,000万円の場合:1,000万円 × 0.4% = 4万円
- 土地の価額が100万円以下のときは、その土地の登録免許税が免税(令和9年3月31日まで)
司法書士に依頼した場合の報酬はこれとは別で、標準的な設例(土地1筆+建物1棟・評価額合計1,000万円・戸籍等5通・遺産分割協議書作成・相続人3名中1名が単独相続)での全国平均は74,888円です(日本司法書士会連合会2024年アンケート)。自分でやる場合と専門家に頼む場合の費用の全体像は、相続手続きの費用相場を解説した記事で内訳ごとに確認できます。
よくある質問
戸籍は本籍地でしか取れませんか
従来は本籍地の市区町村ごとに請求する必要がありましたが、近年は最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できる仕組みも整ってきています。出生から死亡までを集める点は変わらないため、通数と本籍の移動歴を先に把握しておくと請求がスムーズです。
印鑑証明書は何通いりますか
提出先ごとに原本が必要になることが多く、法務局・各金融機関・税務署でそれぞれ求められます。相続人1人あたり複数枚が必要になる場合があるため、窓口の数を数えてから取得するとよいです。有効期限を設ける窓口もあるので、まとめて取ったのに期限切れにならないよう、集める順番に注意してください。
遺言書があれば遺産分割協議書は不要ですか
有効な遺言書があり、その内容どおりに分ける場合は、遺産分割協議書を作らずに手続きできることが多いです。ただし自筆の遺言書は家庭裁判所の検認が必要な場合があり、法務局の保管制度を使った遺言書などでは扱いが異なります。遺言の種類によって窓口の求めが変わる点に注意してください。
相続放棄をするのに印鑑証明書はいりませんか
家庭裁判所への相続放棄の申述には、印鑑証明書も遺産分割協議書も原則不要です。必要なのは相続放棄申述書、申述人と被相続人の関係がわかる戸籍、被相続人の住民票除票などで、収入印紙800円と郵便切手を添えます。相続を知ったときから3か月以内という期限があります。
法定相続情報一覧図はどの窓口でも使えますか
相続登記、多くの金融機関の預金手続き、相続税申告など、幅広い窓口で戸籍一式の代わりとして使えます。取得費用はかからず、必要枚数の写しを交付してもらえます。ただし窓口によっては原本の追加提出を求められることもあるため、事前に確認しておくと確実です。
相続税がかからなければ税務署の書類は不要ですか
遺産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下で、特例の適用を受ける必要もなければ、相続税の申告そのものが不要になり、税務署向けの書類は要りません。配偶者控除や小規模宅地の特例などを使って税額がゼロになる場合は、適用のために申告が必要な点に注意してください。
参考・出典
本記事の法令・費用に関する数値は、以下の官公庁・公的機関の資料に基づきます(情報は2026年9月時点)。書類の要否や様式は窓口ごとに異なる場合があるため、実際の提出前に各窓口でご確認ください。
- 国税庁 タックスアンサー No.7191(登録免許税の税額表・免税措置):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4205(相続税の申告と納税の期限):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4152(相続税の基礎控除):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
- 裁判所「相続の放棄の申述」(申述期間・費用・申述先):https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
- 法務省「相続登記の申請義務化」(施行日・3年以内・過料):https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
- 日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施・相続登記の設例と平均額):https://www.shiho-shoshi.or.jp/
- 全国銀行協会(預金者が亡くなった場合の相続手続きの案内):https://www.zenginkyo.or.jp/

