相続登記を放置するデメリット|売却できなくなる

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親が亡くなって半年、実家は空き家のまま。いざ売却しようと不動産会社に相談したところ、「登記の名義がお父様のままでは、この土地は売れません」と言われる。相続登記(亡くなった人の不動産の名義を相続人へ変える手続き)を後回しにした人が、あとで直面しやすい場面です。

相続登記の放置で本当に重いのは、2024年に始まった過料(罰金に近い行政上の金銭的ペナルティ)だけではありません。放置している間は「売れない・貸せない・担保に入れられない」状態が続き、他の相続人の借金で持分を差し押さえられることがあり、時間が経つほど相続人がねずみ算式に増えて手続きが複雑になります。判断の基準はシンプルで、相続する不動産の行き先が決まったら、使う予定の有無にかかわらず早く名義を移すことが、結果的に費用と手間を最も抑える選び方になります。

放置している間、実家は「売れない・貸せない」ままになる

手入れされていない日本家屋と庭
時が止まった実家(イメージ)

不動産を売る、貸す、住宅ローンの担保に入れるといった処分は、登記簿上の名義が現在の所有者になっていることが前提です。相続登記が終わっていないと、名義は亡くなった人のまま残ります。買主も金融機関も、名義が亡くなった人のままの不動産とは取引できません。

遺産分割協議(誰が何を相続するかを相続人で話し合って決めること)が終わるまで、不動産は相続人全員の共有状態です。この状態で売ろうとすると、その時点の相続人全員の合意と署名・実印がそろって初めて動き出します。放置は自分の代だけでなく、次の世代の処分も止めてしまいます。

他の相続人の借金で、あなたの実家が差し押さえられる

共有状態のあいだは、相続人の一人に借金があると、その人の法定相続分(法律で定められた取り分)にあたる持分だけを、債権者が差し押さえたり、本人が勝手に第三者へ売ったりできます。あなたが住んでいる実家であっても、他の相続人の事情で持分が外部に出ていくことがあるということです。

差押えや第三者への持分売却が一度入ると、その持分を買い戻すか、見ず知らずの相手と共有物分割(共有をやめて分ける手続き)の交渉をすることになります。放置しなければ避けられたはずの費用と時間が、まるごと上乗せされます。

時間が経つほど相続人が増える(数次相続)

広い和室に置かれた大きな座卓と複数の座布団
親族が集まる様子(イメージ)

もっとも後戻りしにくいのが、相続人の数が増えていくことです。名義を移さないうちに相続人の一人が亡くなると、その人の配偶者や子が新たな相続人として加わります。これを数次相続(相続が重なって発生した状態)といいます。

相続人が増える計算例

父名義のまま10年放置した場合を考えます。当初の相続人は母と子2人の3人でした。その間に母が亡くなると、母の相続分は子2人へ移ります。さらに子の一人が亡くなり、その配偶者と子3人が加わると、遺産分割協議のテーブルに着く人は一気に増えます。1回で済んだはずの手続きが、複数世代分の戸籍収集と、面識のない親族との協議に姿を変えます。

放置してよいか迷ったときの判断

  • 不動産を相続する人がすでに決まっている → 使う予定がなくても、早めに相続登記をして単独名義にする。
  • まだ決まっていない → まず相続人申告登記で義務だけ果たし、遺産分割協議を急ぐ。
  • 相続人の中に高齢者・遠方・疎遠な人がいる → その人が元気なうちに協議と署名を済ませる。先に亡くなると数次相続で一気に複雑化する。

放置で膨らむ費用の明細

放置しても税率そのものは上がりませんが、対象や関係者が増えることで実費と報酬がふくらみます。すぐ手続きした場合と、長く放置した後の違いを整理します。

項目 すぐ手続きする場合 長く放置した後
登録免許税(名義変更の税) 固定資産税評価額×0.4% 税率は同じ0.4%だが、対象不動産や持分が複雑化
戸籍収集 出生から死亡までの基本セット 数次相続分が上乗せされ通数が増える
司法書士報酬 設例で平均74,888円 相続人・不動産が増えるほど加算
協議の手間 相続人3人程度で完結 面識のない親族を含む多人数で難航

たとえば固定資産税評価額1,000万円の実家なら、登録免許税は1,000万円×0.4%=4万円です。司法書士へ登記を依頼する場合の報酬は、土地1筆・建物1棟・評価額合計1,000万円・戸籍等5通・法定相続人3名中1名が単独相続するという設例で、平均74,888円という調査結果があります(日本司法書士会連合会2024年アンケート、2026年9月時点で確認)。これは相続人や不動産の数で大きく変わり、放置して相続人が増えるほど上振れします。相続手続き全体でかかる費用の相場は、実家の名義変更は約11万円が目安とまとめた記事で確認してください。

放置を止める最初の一歩は「相続人申告登記」

木製の机で封筒に書類を入れる手元
最初の一歩を踏み出す様子(イメージ)

すぐに遺産分割がまとまらなくても、相続人申告登記(自分が相続人であることを法務局に申し出る簡易な手続き)をすれば、義務化で定められた基本的な申請義務は果たせます。ただしこれは名義を正式に移すものではないため、これだけでは売却も担保設定もできないままです。あくまで過料を避けるための暫定策で、最終的には遺産分割を終えて正式な相続登記をする必要があります。

なお義務化の期限(相続の開始を知り、かつ所有権の取得を知った日から3年以内)や、正当な理由なく怠った場合の過料(10万円以下)といった罰則面は制度上の論点なので、本記事では罰則以外の実害を中心に扱いました。

よくある質問

相続登記を放置しても、いつかは自動で名義が変わりますか。

変わりません。相続登記は相続人が申請しない限り、名義は亡くなった人のまま残り続けます。2024年4月からは3年以内の申請が義務化されているため、放置は過料の対象にもなります。

名義が亡くなった親のままでも、実家に住み続けられますか。

住み続けること自体は可能です。ただし売る、貸す、担保に入れるといった処分はできません。固定資産税の納税義務も相続人に引き継がれます。

相続人の一人が反対していて協議が進みません。放置するしかないですか。

まず相続人申告登記で義務を果たしたうえで、協議が難航するなら遺産分割調停など専門家への相談を検討するのが現実的です。放置は差押えや相続人増加のリスクをかえって高めます。

何十年も前の祖父名義のままです。もう手遅れですか。

手遅れではありません。ただし数次相続で相続人が多数になっているため、戸籍収集と協議の負担が大きくなります。早く着手するほど費用と手間は抑えられます。

放置していた土地の登録免許税は高くなりますか。

税率自体は評価額×0.4%で変わりません。ただし対象となる不動産や持分が複雑になり、司法書士報酬や戸籍の実費が増える傾向があります。なお土地の価額が100万円以下の場合は、令和9年3月31日まで免税とされています。

相続人申告登記をすれば、もう相続登記はしなくてよいですか。

いいえ。申告登記は義務を暫定的に果たすだけで、名義の移転ではありません。売却などをするには、別途あらためて正式な相続登記が必要です。

本記事の制度・費用に関する情報は2026年9月時点のものです。年度によって取り扱いが変わる場合があるため、実際の手続きの際は各公式サイトや専門家で最新の内容を確認してください。

参考・出典

  • 法務省「相続登記の申請義務化」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
  • 国税庁 タックスアンサー No.7191(登録免許税の税額表) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
  • 日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施) https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/11/2a2e2c594bc4cd9ff2ca0f6d916db85e.pdf
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