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親から空き家を相続し、名義変更(相続登記)のために登録免許税と司法書士報酬で合わせて十数万円を払った。この費用は確定申告で経費にできるのか、それとも将来その家を売ったときの税金で差し引けるのか。同じ「相続登記費用」でも、扱いを間違えると引けたはずの費用を取りこぼしたり、逆に二重に計上して税務署から指摘されたりします。
判断の基準は一つで、その不動産を何に使うかです。人に貸すなど業務に使っている不動産なら、相続登記費用はその年の「不動産所得の必要経費」になります。一方、自分で住む家や、業務に使わずいずれ売る空き家なら、経費にはできず「譲渡所得の取得費」に回り、売却時の利益計算で差し引く形になります。以下でこの分かれ目を、費用の内訳と計算例で具体的に整理します。
相続登記でかかる費用の内訳を先に押さえる
扱いを考える前に、相続登記でどんな費用がかかるかを分けておきます。大きく「登録免許税(国に納める税金)」と「司法書士報酬(手続きを頼んだ場合の専門家への支払い)」、それに戸籍謄本などの実費です。
登録免許税は、不動産の固定資産税評価額に0.4%(1,000分の4)を掛けて計算します(国税庁 タックスアンサー No.7191)。たとえば評価額1,000万円の土地建物なら、登録免許税は次のようになります。
| 項目 | 金額の例 | 根拠 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 1,000万円 × 0.4% = 40,000円 | 評価額に応じて変動 |
| 司法書士報酬 | 約74,888円 | 下記の設例による平均 |
| 戸籍・評価証明などの実費 | 数千円程度 | 通数により変動 |
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相続登記費用は不動産を賃貸に使うか、自宅や売却予定の空き家かで必要経費か取得費かの扱いが分かれるため、相続に詳しい税理士に確認する方法があります。
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司法書士報酬の74,888円は、日本司法書士会連合会の2024年アンケート(有効回答1,109)で、土地1筆と建物1棟・固定資産評価額合計1,000万円・戸籍等5通の交付請求・遺産分割協議書と相続関係説明図の作成・登記申請代理という設例での平均です。相続人や不動産の数で大きく変わるため、あくまで目安です。相続登記の費用そのものの内訳は相続手続きの費用相場の記事で詳しくまとめています。
賃貸に使う不動産なら「不動産所得の必要経費」になる
相続した不動産を人に貸している、あるいは相続後に賃貸へ出す場合、その不動産は「業務の用に供している資産」です。この場合、相続登記でかかった登録免許税と司法書士報酬は、支払った年の不動産所得の必要経費に算入できます。家賃収入から差し引ける費用として、その年の確定申告で経費計上する形です。
ポイントは、業務用資産では登記費用を「取得した年の経費」として一度に落とすため、後述する譲渡所得の取得費には含めないという点です。同じ費用を必要経費と取得費の両方で使うことはできず、二重計上になります。
自宅や売却する空き家なら「譲渡所得の取得費」に回る
一方、相続した不動産を自分で住む家として使う、または業務に使わないまま保有していずれ売る空き家などの場合は、業務用ではない「非業務用資産」にあたります。非業務用の資産では、相続登記でかかった登録免許税や司法書士報酬は、その年の経費にはできません。代わりに、その不動産を売却したときの譲渡所得の取得費に加えることができます。
譲渡所得は「売った金額 − (取得費 + 譲渡費用)」で計算し、この取得費が大きいほど課税される利益は小さくなります。相続登記費用を取得費に含められれば、売却益にかかる税金を抑えられる可能性があります。取得費に含められる登記関係費用の具体的な範囲は、国税庁のタックスアンサー「取得費となるもの」および質疑応答事例で確認できます。
業務用か非業務用かで扱いが分かれる判断フロー
ここまでの分かれ目を、条件から結論へたどれる形に整理します。
- その不動産を人に貸している(賃貸・事業に使っている) → 業務用資産。相続登記費用はその年の不動産所得の必要経費。取得費には含めない。
- 自分で住む家である → 非業務用資産。その年の経費にはできない。売却時の取得費に算入する。
- 使わずに保有し、いずれ売る予定の空き家 → 非業務用資産。同じく取得費に回り、売却時に差し引く。
つまり「今、家賃などの収入を生んでいるか」で必要経費になるかどうかが決まり、収入を生んでいなければ売るときまで待って取得費として使う、という整理になります。相続登記の名義変更そのものは、2024年4月1日から義務化され、原則として取得を知った日から3年以内の申請が必要です(正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象)。経費の扱いを気にする前に、まず期限内の登記が必要な点も押さえておきます。
計算例:空き家を相続して売った場合
非業務用の空き家を相続し、登記後に売却したケースで、取得費への算入がどう効くかを見ます。前提は固定資産税評価額1,000万円、司法書士に依頼した相続登記です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 登録免許税(1,000万円 × 0.4%) | 40,000円 |
| 司法書士報酬(設例の平均) | 74,888円 |
| 取得費に加えられる相続登記関係費用の合計(実費除く) | 約114,888円 |
この約11万円を取得費に加算できれば、売却益がその分小さくなります。仮に譲渡所得にかかる税率を考えると、利益を圧縮できる金額は無視できません。ただし取得費に含められる項目の範囲や、相続で引き継いだ元の取得費(親が買ったときの価格)との合算など、計算には確認すべき点が複数あります。売却を予定しているなら、登記の領収書は必ず保管しておいてください。
よくある質問
自宅を相続して名義変更した費用は経費になりますか
自宅は業務用でも売却中でもないため、支払った年の必要経費にはできません。ただし将来その家を売る場合には、譲渡所得の取得費に算入できる可能性があります。売るまで領収書を残しておくことが大切です。
登録免許税と司法書士報酬で扱いは違いますか
基本的な考え方は同じです。どちらも、業務用資産なら不動産所得の必要経費、非業務用資産なら譲渡所得の取得費という同一の分かれ方をします。使途によって両方まとめて扱いが決まります。
賃貸に出している不動産の登記費用は全額その年の経費ですか
業務の用に供している資産であれば、相続登記でかかった登録免許税と司法書士報酬は、支払った年の不動産所得の必要経費に算入できます。この場合、同じ費用を将来の取得費に重ねて使うことはできません。
「相続税額の取得費加算」の特例とは別のものですか
別の制度です。相続税を納めた人が相続財産を一定期間内に売却した場合に相続税の一部を取得費に加算できる特例と、相続登記費用そのものの取得費算入は、それぞれ独立して考えます。混同しないよう分けて確認してください。
取得費が分からない古い不動産でも登記費用は足せますか
元の取得費が不明な場合の扱い自体は別の論点になりますが、相続登記でかかった登記費用は、非業務用資産であれば取得費に加える対象として整理されます。詳しい計算は税務署や税理士に確認するのが確実です。
確定申告で必要な書類は何ですか
登録免許税や司法書士報酬を裏づける領収書、登記完了後の登記事項証明書などを保管しておきます。必要経費として計上する年、または売却して取得費に算入する年の申告で使うため、いずれの場合も原本の保管が前提になります。
本記事の税金の扱いは制度改正で変わることがあります。情報は2026年9月時点のものです。実際の申告にあたっては、国税庁の該当ページや税務署、税理士など専門家への確認をおすすめします。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.7191(登録免許税の税額表・相続0.4%): https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
- 法務省「相続登記の申請義務化」(2024年4月1日施行・3年以内・10万円以下の過料): https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
- 日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施・相続登記の平均74,888円): https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/11/2a2e2c594bc4cd9ff2ca0f6d916db85e.pdf

