遺留分侵害額請求|1年の期限と計算の仕方

\u907a\u7559\u5206\u4fb5\u5bb3\u984d\u8acb\u6c42\uff5c1\u5e74\u306e\u671f\u9650\u3068\u8a08\u7b97\u306e\u4ed5\u65b9 遺言と生前

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父が亡くなって遺言書を開けたら、「全財産を長男に相続させる」と書かれていた。次男である自分の名前はどこにもない。遺言がある以上、もう何も受け取れないのだろうか。そう感じて手続きを止めてしまう人は少なくありません。ですが、遺言で取り分をゼロにされても、配偶者・子・直系尊属(親や祖父母)には法律上の最低限の取り分が残っており、これを金銭で請求できます。この最低限の取り分が「遺留分(いりゅうぶん)」です。

判断の軸は二つだけです。ひとつは「自分に遺留分がある立場か、いくらの割合か」。もうひとつは「請求できる期限が過ぎていないか」。遺留分侵害額請求(侵害された分を金銭で返すよう求める請求)は、知った時から1年で時効消滅します。まずこの2点を押さえれば、遺言があっても動くべきかどうかを自分で見極められます。

遺言で「全部長男へ」でも、金銭で取り戻せる範囲がある

遺言は故人の意思として尊重されますが、残された家族の生活を守るため、法律は一定の相続人に最低限の取り分を保障しています。遺言や生前贈与でその最低限を下回る扱いを受けたとき、下回った分をお金で請求できるのが遺留分侵害額請求です。2019年の民法改正で、この請求は「不動産の持分を取り戻す」形ではなく「金銭を支払わせる」形に整理されました。つまり、長男が受け取った自宅そのものを共有名義に戻すのではなく、侵害された額に相当する現金を長男に請求する、という組み立てになります。

遺留分がある人・ない人

遺留分を持つのは、配偶者・子(亡くなっていれば孫などの代襲相続人)・直系尊属です。一方で、被相続人の兄弟姉妹には遺留分がありません(民法1042条)。ここは誤解が多いところで、たとえば子のいない夫婦で夫が「全財産を妻に」と遺言を残した場合、夫の兄弟姉妹は遺言に対して遺留分を主張できません。逆に、遺言で兄弟姉妹以外の相続人の取り分をゼロにしても、その相続人の遺留分までは奪えない、という関係になります。

1年で消える期限(民法1048条)

遺留分侵害額請求で最初に確認すべきは期限です。民法1048条は、遺留分を持つ人が「相続の開始」と「遺留分を侵害する贈与または遺贈があったこと」の両方を知った時から1年間行使しないと、時効によって消滅すると定めています。さらに、そうした事実を知らないまま時間が過ぎても、相続開始の時から10年を経過したときは請求できなくなります。

起算点は「亡くなった日」ではなく「侵害を知った日」です。たとえば相続開始から半年後に遺言の内容を初めて知ったなら、その知った日から1年がカウントされます。ただし10年の期限は相続開始が起点なので、「知らなかった」を理由に無期限に待てるわけではありません。1年は短く、遺産の調査や親族間の話し合いをしているうちに過ぎてしまいがちです。期限が近いと感じたら、まず時効を止める行動を先に取るのが安全です。

時効を止めるには意思表示を証拠に残す

遺留分侵害額請求は、相手に「遺留分を請求します」という意思表示を1年以内に行えば、時効の完成を防げます。実務では、いつ請求したかを後から証明できるよう、内容証明郵便(郵便局が文面と発送日を証明する郵便)で通知するのが一般的です。金額の計算や交渉はその後でも構いません。まず期限内に請求の意思を届け、証拠を残しておくことが最初の一手になります。

遺留分 侵害額請求の割合と計算の仕方

襖の隙間から見える和室の様子
静かな家屋の佇まい(イメージ)

請求できる金額は、「全体としての遺留分割合」と「自分の法定相続分」を掛け合わせて求めます。民法1042条は、全体の遺留分割合を次のように定めています。相続人が直系尊属だけの場合は遺産の3分の1、それ以外の場合(配偶者や子が含まれる場合)は2分の1です。この全体割合を、各相続人の法定相続分(民法900条の取り分)に応じて分けたものが、一人ひとりの遺留分になります。

式にすると、個人の遺留分=全体の遺留分割合(2分の1または3分の1)×その人の法定相続分です。侵害額は、この遺留分から「実際に受け取れた遺産」を差し引いて計算します。

計算例1:子2人で、遺言が長男に全部の場合

  • 相続人は長男・次男の2人。父が「全財産を長男に相続させる」と遺言
  • 遺産(預金と自宅)は合計4,000万円と仮定
  • 全体の遺留分割合は2分の1(子が含まれるため)
  • 次男の法定相続分は2分の1(子2人で等分)
  • 次男の遺留分割合=1/2×1/2=4分の1
  • 次男の遺留分=4,000万円×1/4=1,000万円

次男は受け取った遺産がゼロなので、侵害額はそのまま1,000万円です。次男は長男に対し、1,000万円の金銭を請求できます。

計算例2:相続人が親だけの場合

  • 独身で子のいない人が亡くなり、相続人は父だけ
  • 本人が「全財産を友人に遺贈する」と遺言。遺産は3,000万円と仮定
  • 相続人が直系尊属だけなので、全体の遺留分割合は3分の1
  • 父の法定相続分は全部(相続人が父のみ)
  • 父の遺留分=3,000万円×1/3=1,000万円

父は友人に対し1,000万円を請求できます。相続人が親だけのケースは全体割合が3分の1に下がる点が、配偶者や子がいる場合との違いです。

相続人の組み合わせ別・遺留分の早見表

相続人の組み合わせ 全体の遺留分割合 各人の遺留分割合
配偶者のみ 2分の1 配偶者 2分の1
配偶者と子 2分の1 配偶者 4分の1/子(全体)4分の1
子のみ 2分の1 子(全体)2分の1
配偶者と直系尊属 2分の1 配偶者 3分の1/直系尊属(全体)6分の1
直系尊属のみ 3分の1 直系尊属(全体)3分の1
配偶者と兄弟姉妹 2分の1 配偶者 2分の1/兄弟姉妹 なし
兄弟姉妹のみ なし なし

子や直系尊属が複数いる場合は、表の「全体」の割合を人数で等分します。たとえば子2人なら、それぞれの遺留分は表の子の割合をさらに半分にします。

自分に請求できるかを見極める判断フロー

動くべきかどうかは、次の順で確認すると整理できます。

  1. あなたは配偶者・子(代襲の孫を含む)・直系尊属のいずれかか。 兄弟姉妹など、これに当たらない場合は遺留分がなく、請求はできません。
  2. 遺言や生前贈与によって、実際の取り分が遺留分割合を下回っているか。 下回っていなければ侵害はありません。上の早見表で自分の割合を確認します。
  3. 「相続の開始」と「侵害する遺贈・贈与」を知ってから1年以内か。 1年以内かつ相続開始から10年以内なら請求できます。1年を過ぎていると時効の可能性があります。

3つすべてが当てはまるなら、まず内容証明郵便で請求の意思を示して期限を止め、その後で金額を詰めていく流れになります。

請求の進め方と費用の考え方

机の上で書類を検討する手元のアップ
複数の書類を見比べる様子(イメージ)

手順の骨格は、財産の把握(遺産と生前贈与の洗い出し)、遺留分額の計算、相手への請求(内容証明郵便)、金額の交渉、まとまらなければ家庭裁判所での調停、という順です。内容証明を自分で出すだけなら実費は郵便料金程度で済みますが、生前贈与を含めた財産評価や相手との交渉で対立が深まると、弁護士に依頼する場面が出てきます。

弁護士報酬は2004年に自由化されており、公的に決まった料金表はありません。費用は事務所ごとに幅があるため、着手金と成功報酬の考え方を含め、複数の事務所で見積りを取って比較するのが確実です。遺産全体の名義変更や相続税など、遺留分以外にかかる相続手続き全体の費用感は、相続手続きの費用相場をまとめた記事で確認できます。

よくある質問

遺言があっても遺留分は請求できますか。

できます。遺言で取り分をゼロにされても、配偶者・子・直系尊属には最低限の取り分が法律で保障されています。侵害された分を金銭で請求するのが遺留分侵害額請求です。ただし兄弟姉妹には遺留分がありません。

1年の期限はいつから数えますか。

亡くなった日ではなく、「相続が始まったこと」と「自分の遺留分を侵害する遺贈・贈与があったこと」の両方を知った時からです(民法1048条)。この時点から1年で時効消滅します。あわせて、相続開始から10年を過ぎたときも請求できなくなります。

期限が近いとき、時効を止めるにはどうすればよいですか。

1年以内に「遺留分を請求します」という意思表示を相手に届ければ、時効の完成を防げます。いつ請求したかを証明できるよう、内容証明郵便で通知するのが一般的です。金額の計算や交渉は、その通知の後で進めても差し支えありません。

兄弟姉妹にも遺留分はありますか。

ありません(民法1042条)。そのため、子のいない人が配偶者などに全財産を渡す遺言を残しても、兄弟姉妹はその内容に対して遺留分を主張できません。

生前に贈与された財産も対象になりますか。

一定の範囲の生前贈与は遺留分の計算に含まれます。ただし、いつの贈与までが対象になるかは相手が相続人かどうかなどで変わり、判断が難しい部分です。生前贈与が絡む場合は、対象範囲を専門家に確認してから計算するのが安全です。

請求はお金でしか受け取れないのですか。

2019年の民法改正で、遺留分侵害額請求は金銭の支払いを求める形に整理されました。不動産そのものの持分を取り戻すのではなく、侵害された額に相当するお金を請求する仕組みです。相手がすぐに支払えない場合、裁判所が支払いの期限に猶予を与えることもあります。

本記事の情報は2026年9月時点の内容です。遺留分や相続に関する制度は改正されることがあるため、実際の請求にあたっては最新の条文と、個別の事情に応じた専門家の確認を行ってください。

参考・出典

  • 民法(遺留分侵害額請求の期間の制限=1048条、遺留分の割合=1042条、法定相続分=900条)e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  • 国税庁 タックスアンサー No.4152「相続人の数に応じた基礎控除」等(相続の基本用語の確認)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
  • 裁判所「相続の放棄の申述」(相続手続きの窓口の確認)https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
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