固定資産評価証明書の取り方|名寄帳で漏れを防ぐ

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相続登記を自分でやろうと法務局の申請書を書き始めた人が、最初に手を止めるのが「課税価格」と「登録免許税」の欄です。ここに書く金額のもとになるのが不動産の評価額ですが、それは通帳や権利証には載っていません。市区町村が管理していて、請求して初めて分かります。さらに、亡くなった方が私道の持分やわずかな畑を持っていた場合、その一筆を見落としたまま登記すると、あとで登記のやり直しが必要になります。

この漏れを防ぐ順番は決まっています。まず名寄帳(なよせちょう=その人が同じ市区町村で持つ不動産を一覧にした帳簿)で「持っている不動産をすべて」拾い、そのうえで各不動産の固定資産評価証明書を取って評価額を確認する、という流れです。相続人であれば、亡くなった方の分をどちらも請求できます。以下、その根拠と具体的な取り方、評価額から登録免許税を出す計算例までを順に説明します。

固定資産評価証明書がないと登録免許税を計算できない

市役所の窓口で書類をやり取りする人の手元
窓口で手続きを行う様子(イメージ)

相続登記(不動産の名義を相続人に変える手続き)では、法務局に登録免許税(登記のときに国に納める税金)を納めます。この税額は決め打ちの定額ではなく、不動産の価額に税率をかけて出します。国税庁の案内では、相続による所有権移転の登録免許税は「不動産の価額×0.4%(1,000分の4)」とされています(国税庁 タックスアンサー No.7191)。

ここでいう「不動産の価額」は、売買価格や購入時の値段ではなく、市区町村が定める固定資産税評価額を使います。つまり固定資産評価証明書(評価額を市区町村が証明する書類)を手に入れないと、申請書の金額欄がそもそも埋まらないということです。評価証明書は登記の必要書類であると同時に、税額計算の出発点でもあります。

相続登記そのものの費用の全体像や、司法書士に頼んだ場合の目安を先に知りたい方は、相続手続きの費用相場の記事にまとめています。本記事は、その中の「評価証明書をどう取るか」に絞って掘り下げます。

名寄帳で「持っている不動産」を全部拾う

評価証明書は不動産を特定して請求するため、「どの不動産があるか」を先に把握していないと、持っている分の一部しか取れません。ここで役に立つのが名寄帳です。名寄帳は、同じ市区町村の中でその人が所有する土地・家屋を名義ごとにまとめた台帳で、課税されている不動産が一覧で並びます。

私道・共有持分・非課税の土地が漏れやすい

相続で見落としが起きやすいのは、次のような不動産です。

  • 自宅前の私道(近隣と共有していることが多く、権利証が別になっている)
  • マンションや分譲地に付いてくる集会所・ごみ置き場などの共有持分
  • 固定資産税が非課税・免税点未満で、毎年の納税通知書に金額が出てこない土地
  • 相続対象の市区町村にある、忘れられていた小さな畑や山林

納税通知書だけを頼りにすると、課税されていない不動産は通知書に出ないため、そのまま漏れます。名寄帳はその人の持ち物を課税・非課税を問わず載せているので、通知書と突き合わせると抜けを発見しやすくなります。私道を落としたまま自宅だけ登記すると、その私道は亡くなった方の名義のまま残り、将来の売却や再登記でつまずく原因になります。

固定資産評価証明書と名寄帳の取り方

役所の窓口で書類を提出する人の後ろ姿
窓口での手続きを進める様子(イメージ)

ここが記事の中心です。相続人が請求できる根拠と、窓口・郵送での手順を分けて説明します。

相続人が請求できる根拠

固定資産課税台帳に記載された事項の証明書は、原則として本人などに交付されますが、地方税法382条の3および各市区町村の条例により、相続人はその立場で亡くなった方の分の証明を請求できます。窓口では「相続人であること」を戸籍などで示すのが一般的な運用です。役所によって呼び方や様式は異なりますが、「相続人が被相続人の不動産について請求できる」点は共通しています。

窓口・郵送で必要になるもの

複数の市区町村で共通して求められるのは、おおむね次のとおりです。実際の様式や部数は各役所の案内で確認してください。

  • 交付申請書(市区町村の窓口や公式サイトにある様式)
  • 亡くなった方が死亡した事実と、請求者が相続人であることが分かる戸籍謄本など(法定相続情報一覧図で代える運用もある)
  • 請求する人の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
  • 交付手数料(金額は市区町村の条例で定められているため、窓口や公式サイトで確認)

実家が遠方の場合は郵送でも請求できます。郵送のときは、申請書・戸籍などの写し・本人確認書類の写し・手数料分の定額小為替・返信用封筒(切手貼付)を同封するのが一般的です。定額小為替の金額は手数料に合わせるため、事前に電話で確認しておくと往復のやり直しを防げます。

3種類の書類を混同しない

役所の窓口では似た名前の書類が並びます。目的で使い分けます。

書類 分かること 相続登記での使い道
名寄帳(固定資産課税台帳の写し) その市区町村で本人が持つ不動産の一覧 最初に取り、漏れがないか全件確認する
固定資産評価証明書 各不動産の評価額 登録免許税の計算と登記の添付書類
公課証明書 評価額に加えて課税標準額・税額 売買や税額の確認向け。登記では通常は評価証明書

相続登記のためだけなら、名寄帳で全件を確認したうえで、必要な不動産の評価証明書を取るのが基本の組み合わせです。

評価額から登録免許税を出す計算例

評価証明書がそろったら、登録免許税を計算します。相続の税率は0.4%です(国税庁 No.7191)。

基本の計算

たとえば土地の評価額が800万円、建物の評価額が200万円だったとします。合計は1,000万円です。

  • 課税価格: 1,000万円(1,000円未満は切り捨て)
  • 登録免許税: 1,000万円 × 0.4% = 4万円(100円未満は切り捨て)

複数の不動産をまとめて申請するときは、すべての評価額を合計してから税率をかけます。だからこそ、名寄帳で一筆でも取りこぼすと課税価格がずれ、正しい税額になりません。

私道など少額の土地は免税になる場合がある

相続登記には土地の免税措置があります。土地の価額が100万円以下の場合、その土地の相続登記の登録免許税は免税とされています(令和9年3月31日まで。国税庁 No.7191)。私道の持分など評価額の低い土地は、この免税に当たることがあります。免税を受けるには申請書に根拠となる条項を記載する必要があるため、対象になりそうな土地は評価証明書の金額を見て、法務局の案内で適用の可否を確認してください。

どの書類をいつ取るかの判断フロー

書類を前にチェックリストに書き込む手元
必要な書類を整理する様子(イメージ)

順番を間違えると二度手間になります。次の流れで進めると漏れにくくなります。

  1. 亡くなった方の不動産がありそうな市区町村を洗い出す(自宅のほか、出身地や別荘地なども)
  2. 各市区町村で名寄帳を請求し、持っている不動産を全件確認する
  3. 名寄帳と、毎年届いていた固定資産税の納税通知書を突き合わせ、通知書に出ていない非課税地・私道がないかを見る
  4. 登記する不動産が確定したら、その不動産の固定資産評価証明書を取る
  5. 評価額を合計し、0.4%で登録免許税を計算する(100万円以下の土地は免税の可否を確認)

相続登記には申請の義務があり、相続の開始を知り、かつ所有権を取得したと知った日から3年以内が期限とされています(法務省。令和6年4月1日施行)。書類集めには時間がかかるため、名寄帳の確認は早めに始めると安心です。評価額を先に把握しておくと、自分でやるか専門家に頼むかの費用比較もしやすくなります。

よくある質問

固定資産評価証明書は相続人でも請求できますか

できます。地方税法382条の3と各市区町村の条例により、相続人は亡くなった方の不動産について証明を請求できます。窓口では、亡くなった事実と相続人であることを戸籍などで示すのが一般的な運用です。様式は役所ごとに異なるため、公式サイトで確認してください。

名寄帳と評価証明書はどちらを先に取りますか

名寄帳が先です。名寄帳でその市区町村にある不動産を全件確認し、登記する不動産を確定してから、その不動産の評価証明書を取ります。逆にすると、持っている不動産の一部しか評価証明書を取れず、私道などを見落とす原因になります。

私道が非課税で評価額が出ていないときはどうなりますか

非課税の私道は名寄帳には載っていても、評価額が課税上は付いていないことがあります。登記に必要な価額の扱いは市区町村や法務局で決められた方法によるため、証明書の記載を確認し、法務局の案内に沿って処理してください。金額の自己判断は避けるのが安全です。

亡くなった年と今年で、どちらの年度の評価額を使いますか

相続登記の登録免許税は、申請する年度の評価額を使うのが原則です。評価額は年度ごとに見直されるため、古い証明書ではなく、登記する時点の最新年度のものを取り直す必要がある場合があります。年度の扱いは法務局で確認してください。

遠方の実家の分も郵送で取り寄せられますか

取り寄せられます。申請書、戸籍などの写し、本人確認書類の写し、手数料分の定額小為替、返信用封筒を同封して、その不動産のある市区町村に郵送します。手数料の額と必要書類は役所によって異なるため、送る前に電話で確認するとやり直しを防げます。

評価証明書はいつまで使えますか

相続登記では、申請する時点の最新年度の評価額が必要になるのが一般的です。前年度以前の証明書は使えないことがあるため、集めるタイミングと申請のタイミングが年度をまたぐ場合は、最新年度分を取り直せるよう余裕を持って準備してください。

参考・出典

本記事の情報は2026年9月時点のものです。制度や税率は改正されることがあるため、手続きの際は各機関の最新の案内を確認してください。

  • 国税庁 タックスアンサー No.7191(登録免許税の税額表・相続登記の免税措置): https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
  • 法務省「相続登記の申請義務化」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
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