マンションの相続登記|敷地権と評価額の調べ方

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親が住んでいた分譲マンションを相続し、名義変更(相続登記)を自分でやってみようと登録免許税を計算し始めたところで、手が止まる方が多くいます。一戸建てなら「建物の評価額+土地の評価額」に税率を掛けるだけですが、マンションの土地は建物全体の敷地を住戸ごとに分け合う形になっていて、評価証明書に載っている敷地全体の金額をそのまま使うと、税額が何十倍も違ってしまうからです。ここでつまずくのが「敷地権割合(しきちけんわりあい=1棟の敷地のうち、その住戸が持つ持分の割合)」の扱いです。

結論から言えば、マンションの相続登記の課税価格は、専有部分の建物の固定資産評価額と、敷地全体の評価額に敷地権割合を掛けた土地の持分評価額を合算して求め、その合計に登録免許税の税率0.4%(1,000分の4)を掛けます(国税庁 タックスアンサー No.7191)。判断の起点になるのは、法務局で取る登記事項証明書の「敷地権の表示」に書かれた割合です。まずここを正しく読めるかどうかで、計算の正確さが決まります。

マンションの相続登記で「敷地権」がなぜ壁になるのか

分譲マンションの1住戸は、法律上「区分建物(くぶんたてもの=1棟の建物を住戸ごとに区切って別々に登記できる建物)」として扱われます。この区分建物には、住戸そのものである「専有部分」と、その住戸が持つ土地の権利である「敷地権」がセットになっています。多くのマンションでは、専有部分と敷地権を切り離して売買できないように「敷地権化」されており、建物の登記に土地の持分がひも付いています。

一戸建ての場合、土地は「〇〇番の土地1筆をまるごと」という形で持ち主が登記されます。ところがマンションの敷地は、1棟の住戸全員で共有しているため、1人の持分は「10000分の150」のように割合で登記されます。相続登記の登録免許税は不動産の評価額に対してかかるので、共有者全員分の敷地評価額(1棟の敷地全体の額)で計算してはならず、亡くなった方が持っていた割合分だけを取り出す必要があります。ここを見落とすと、本来より大幅に高い税額を計算してしまいます。

登記事項証明書で敷地権割合を読み取る

敷地権割合は、法務局で取得する登記事項証明書(登記簿謄本)で確認します。マンションの場合、証明書は大きく「一棟の建物の表示」「専有部分の建物の表示」「敷地権の表示」に分かれています。相続登記の計算で使うのは、このうち敷地権に関する部分です。

「敷地権の表示」の見方

専有部分の表題部(建物の基本情報が載る欄)の下に「敷地権の表示」という欄があり、そこに「敷地権の種類(所有権など)」と「敷地権の割合」が記載されています。たとえば「敷地権の割合 100000分の1500」と書かれていれば、その住戸は1棟の敷地全体の1500/100000(=1.5%)を持っている、という意味です。分母・分子はマンションごとに異なるため、必ず取得した証明書の実際の数字を使います。

あわせて「一棟の建物の表示」の下にある「敷地権の目的である土地の表示」で、敷地が何筆の土地から成っているかを確認します。敷地が2筆、3筆に分かれていることも珍しくなく、その場合は各土地の評価額それぞれに敷地権割合を掛けて合算します。

敷地権が登記されていない古いマンションの落とし穴

昭和58年(1983年)以前に建てられた古い区分建物などでは、敷地権化されていない(土地の持分が建物と一体化していない)ケースがあります。この場合、建物の登記事項証明書に「敷地権の表示」がなく、土地は別の登記簿で「共有持分」として登記されています。相続登記も建物と土地を別々に申請することになり、登録免許税も建物分と土地分をそれぞれ計算します。証明書に敷地権の欄が見当たらないときは、土地の登記簿(共有者欄に亡くなった方の名前と持分がある)を別途取得して確認してください。

登録免許税の計算例|敷地の持分割合を掛ける

手順は、(1)専有部分の建物評価額を出す、(2)敷地全体の評価額に敷地権割合を掛けて土地の持分評価額を出す、(3)両者を合算して課税価格とし、0.4%を掛ける、の3ステップです。仮の数字で計算例を示します(実際の金額は必ずご自身の評価証明書の数字に置き換えてください)。

項目 金額・割合 計算
専有部分(建物)の固定資産評価額 500万円 そのまま使う
敷地全体の固定資産評価額 3億円 1棟の敷地全体の額
敷地権割合 100000分の1500 登記事項証明書で確認
土地の持分評価額 450万円 3億円 × 1500 ÷ 100000
課税価格(建物+土地) 950万円 500万円 + 450万円
登録免許税 3万8000円 950万円 × 0.4%

この例で、もし敷地全体の3億円をそのまま計算に使ってしまうと、土地分だけで120万円という桁違いの税額になり、実際に納めるべき額と大きくかけ離れます。マンションで持分割合を掛け忘れる誤りが起きやすいのは、この差が原因です。

なお、課税価格は1,000円未満を切り捨て、算出した税額は100円未満を切り捨てて納めます。土地の持分評価額が低いマンション(敷地が狭い、住戸数が多いなど)では、土地1筆あたりの持分価額が100万円以下になることがあり、その場合は令和9年(2027年)3月31日までの相続登記に限り、土地分の登録免許税が免税になる特例があります(国税庁 No.7191)。建物分にはこの免税はありません。

評価額と敷地権割合の調べ方

計算に必要な「評価額」は、固定資産税評価額(市区町村が固定資産税を課すために定めた土地・建物の価格)を使います。調べ方は次の3つが代表的です。

  • 固定資産評価証明書:物件のある市区町村役場(東京23区は都税事務所)で取得します。相続登記で法務局に提出するのは、原則として申請する年度のものです。
  • 固定資産税の課税明細書:毎年春に届く固定資産税の納税通知書に同封されている明細で、評価額が確認できます。ただし免税点未満などで記載が省かれる場合があるため、正式には評価証明書で確認します。
  • 名寄帳(なよせちょう):同じ市区町村内で亡くなった方が持っていた不動産を一覧にした帳簿です。マンションのほかに駐車場や別の土地を持っていた場合の漏れを防げます。

マンションで注意したいのは、評価証明書に載る土地の金額が「敷地全体の額」なのか「持分に応じた額」なのかを取り違えないことです。自治体によっては証明書に持分相当額が印字されていることもあれば、敷地全体の額が載っていて自分で持分を掛ける必要があることもあります。どちらか判断がつかないときは、発行元の窓口で「この額は持分込みか、敷地全体か」を確認すると確実です。敷地権割合そのものは前述のとおり登記事項証明書で確認します。

自分でやるか司法書士に頼むか

マンションの相続登記は、敷地権割合の確認と持分計算さえ正しくできれば、必要書類(戸籍一式、遺産分割協議書、評価証明書など)をそろえて自分で法務局に申請することも可能です。実費は登録免許税(評価額×0.4%)と、戸籍・証明書の取得手数料が中心になります。

一方で、司法書士に依頼した場合の報酬は、日本司法書士会連合会の2024年アンケートによると、相続登記の報酬は平均7万4888円が目安です(設例:土地1筆+建物1棟・固定資産評価額合計1,000万円・戸籍等5通の取得・遺産分割協議書と相続関係説明図の作成・登記申請代理、法定相続人3名中1名が単独相続。有効回答1,109)。これはあくまで一定の条件での平均で、相続人や不動産の数が増えれば金額は変わります。この報酬とは別に登録免許税や戸籍の実費がかかります(2026年9月時点・公式資料で確認)。

敷地が複数筆に分かれている、敷地権化されていない古いマンション、相続人が多く戸籍収集が煩雑、といった事情があるほど、専門家に任せる価値は上がります。名義変更全体の費用の目安や内訳は、相続手続きの費用相場(実家の名義変更は約11万円が目安)で確認できます。

よくある質問

マンションでも登録免許税の税率は0.4%ですか

相続による所有権移転登記の税率は、一戸建てでもマンションでも同じ0.4%(1,000分の4)です(国税庁 No.7191)。違うのは税率ではなく、土地について敷地権割合を掛けて課税価格を出す点です。

敷地権割合はどこを見ればわかりますか

法務局で取得する登記事項証明書の「敷地権の表示」欄に「敷地権の割合」として記載されています。たとえば「100000分の1500」のように分数で書かれています。固定資産税の課税明細書には割合が載らないことが多いため、割合は登記事項証明書で確認します。

土地と建物で登録免許税を別々に払うのですか

敷地権化されているマンションでは、建物の登記に土地の持分がひも付いているため、原則として建物と土地を合算した課税価格に対してまとめて計算します。敷地権が登記されていない古いマンションでは、建物と土地を別々に申請し、それぞれ計算します。

敷地が複数の筆に分かれている場合はどう計算しますか

「敷地権の目的である土地の表示」に載っている各土地の評価額に、それぞれ敷地権割合を掛けて持分評価額を出し、すべて合算します。そこに建物評価額を足したものが課税価格です。

評価額が低いと免税になりますか

土地1筆あたりの持分の価額が100万円以下の場合、令和9年3月31日までの相続登記に限り、その土地分の登録免許税が免税になる特例があります(国税庁 No.7191)。建物分にはこの免税は適用されません。

マンションの相続登記はいつまでにする必要がありますか

2024年(令和6年)4月1日から相続登記は義務化され、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない場合10万円以下の過料の対象になります(法務省)。施行前に相続した分は令和9年3月31日までが期限です。

参考・出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.7191(登録免許税の税額表・相続登記0.4%・土地100万円以下の免税) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
  • 法務省「相続登記の申請義務化」(令和6年4月1日施行・3年以内・過料) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
  • 日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施・相続登記の報酬平均) https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/11/2a2e2c594bc4cd9ff2ca0f6d916db85e.pdf
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