遺産分割調停の費用|申立ての実費と期間

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親が亡くなり、実家と預金をきょうだいで分けることになったものの、話し合い(遺産分割協議)が半年たっても平行線のまま。感情的なもつれもあり、当事者だけでは決まりそうにない。かといって、いきなり弁護士に依頼して大きな費用をかけるのはためらう。そんなときに次の一手となるのが、家庭裁判所(相続などの家庭内の問題を扱う裁判所)に間へ入ってもらう「遺産分割調停」です。

ここで多くの人が気にするのが費用ですが、遺産分割調停の費用は「裁判所に払う実費」と「弁護士に払う代理人費用」の二つに分かれます。前者は自分で申し立てれば数千円ほどで始められ、後者は依頼するかどうかで大きく変わります。つまり、費用を抑えて動くこと自体は可能です。判断の基準はシンプルで、争いが金額の大小だけなら自分で申し立てて実費だけで進める余地があり、法律の主張が複雑にからむなら代理人費用をかける価値が出てきます。以下でその内訳と、もう一つの関心事である期間を具体的に見ていきます。

遺産分割調停の費用は「申立ての実費」と「代理人費用」に分かれる

日本の木製机の上で書類を整える手元
手続きを進める準備風景(イメージ)

費用を語るときは、この二つを混同しないことが第一歩です。

一つ目は、家庭裁判所に納める申立ての実費です。収入印紙(手数料を納めるための印紙)と、連絡用の郵便切手、それに戸籍謄本などの添付書類をそろえる取得費が中心で、金額は数千円の範囲におさまります。これは自分で申し立てても弁護士に頼んでも、裁判所に払う分としては変わりません。

二つ目は、弁護士に手続きを代わってもらう代理人費用(着手金と報酬金)です。こちらは依頼して初めて発生するもので、頼まなければゼロです。金額の相場は当サイトの別記事(相続で揉めた場合の弁護士費用)で扱っているため本記事では深入りしませんが、日本弁護士連合会が2008年度に行ったアンケート(やや古い調査)では、遺産総額1億円・相続人が妻と子2人という設例で、着手金は「30万円」または「50万円」との回答が多く、報酬金は「100万円」または「180万円」が上位でした。弁護士報酬は2004年以降自由化されているため、現在の金額は各事務所の見積りで確認してください。

本記事が主に扱うのは、費用を抑えたい人が知りたい一つ目、つまり自分で申し立てるときの実費です。

自分で申し立てる場合の実費の明細

遺産分割調停を自分で申し立てるときに必要になる実費の内訳は、おおむね次のとおりです。金額のうち収入印紙と郵便切手は家庭裁判所が公表している額に従います。

項目 目安 備考
申立手数料(収入印紙) 公式サイトで確認 亡くなった方1人につき定額
連絡用の郵便切手 公式サイトで確認 申し立てる家庭裁判所ごとに額と内訳が異なる
戸籍謄本・除籍謄本など 取得実費(市区町村により異なる) 被相続人の出生から死亡までと相続人全員分
住民票・戸籍の附票 取得実費 相続人の住所確認用
不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書 取得実費 遺産に不動産がある場合

収入印紙と郵便切手を合わせても、裁判所に直接納める分は数千円の範囲です。負担として大きくなりやすいのはむしろ戸籍集めで、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍を一続きでそろえる必要があり、本籍が何度も移っていると複数の市区町村に請求することになります。1通あたりの発行手数料は少額でも、通数が増えると取得費と手間がかさみます。

郵便切手の額と内訳(何円切手を何枚など)は、申し立てる家庭裁判所によって指定が異なります。準備の前に、管轄の家庭裁判所(相手方となる相続人の住所地を管轄する家庭裁判所か、当事者が合意で定める家庭裁判所)の案内を必ず確認してください。

遺産分割調停の期間はどれくらいか

古い木製のテーブルに置かれた様々な物品と人の手
複雑な遺産を前にした手元(イメージ)

費用と並んで気になるのが期間です。調停は月に1回程度のペースで期日(話し合いの日)が開かれ、当事者が交互に調停委員へ主張を伝えていく形で進みます。1回で終わることはまずなく、複数回を重ねるのが通常です。

裁判所が公表している司法統計を見ると、遺産分割事件の審理期間は、争点が少なく相続人の数も限られている場合と、不動産の評価や特別受益(生前に一部の相続人だけが受けた利益)などが争われる場合とで、大きく開きが出ます。

期間が延びやすいのは、次のような要素がある場合です。

  • 不動産が複数あり、評価額(いくらとみなすか)で意見が割れる
  • 生前贈与や介護の貢献をめぐって特別受益・寄与分の主張が出る
  • 相続人の数が多い、または連絡が取りにくい相続人がいる
  • 遺産の範囲そのもの(この財産は遺産か否か)に争いがある

逆に、分ける財産が預金中心で金額が明確、相続人も少人数という場合は、比較的短い回数でまとまることがあります。調停でも合意に至らなければ、手続きは自動的に「審判」(裁判官が分け方を決める手続き)へ移り、そこからさらに時間がかかる点は見込んでおく必要があります。

自分で申し立てるか、弁護士に頼むかの判断フロー

実費だけで進めるか、代理人費用をかけるかは、次の条件で切り分けると整理しやすくなります。

  1. 争っているのが「分け方の割合」だけか。法定相続分(法律が定める取り分)をベースに、誰がどの財産を取るかだけが論点なら、自分で申し立てて実費で進める余地が十分にあります。
  2. 特別受益・寄与分・遺産の範囲など法律論がからむか。これらは主張の組み立てと証拠が結果を左右するため、代理人費用をかけて弁護士に任せる価値が高まります。
  3. 相手方と直接やり取りする精神的負担に耐えられるか。調停委員が間に入るとはいえ、資料の準備や主張の整理は自分で行います。負担が大きいと感じるなら、費用をかけてでも代理を頼む判断が合理的です。
  4. 遺産の総額に対して代理人費用が見合うか。分ける財産が小さい場合、代理人費用のほうが取り分の増加を上回ることもあります。見積りを取ってから決めるのが安全です。

相続手続き全体でどこにいくらかかるのか(実家の名義変更などを含めた費用の目安)を先に把握しておくと、調停費用をかける判断もしやすくなります。全体像は相続手続きの費用相場をまとめた記事を参照してください。

申立ての流れと準備するもの

木製の机で公的な書類を整理する手元
必要書類を準備する手元(イメージ)

自分で申し立てる場合の大まかな流れは次のとおりです。

  1. 申立書(遺産分割調停の申立書)と、遺産の一覧(財産目録)を作成する
  2. 被相続人の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の戸籍・住民票をそろえる
  3. 不動産があれば登記事項証明書と固定資産評価証明書を用意する
  4. 収入印紙と連絡用の郵便切手を用意し、管轄の家庭裁判所へ提出する
  5. 裁判所から期日の連絡が届き、月1回程度のペースで話し合いが進む

申立書の書式や記入例は各家庭裁判所の案内に用意されているため、費用を抑えたい場合はまずその様式に沿って自分で作成してみる方法があります。作成の途中で法律論が絡むと分かった段階で、専門家への相談に切り替えても遅くはありません。

よくある質問

遺産分割調停は自分だけで申し立てられますか。

弁護士に依頼しなくても、当事者本人が申し立てることは可能です。費用は収入印紙と郵便切手、戸籍などの取得実費が中心で、数千円の範囲から始められます。ただし特別受益や寄与分など法律論が争点になると、主張の組み立てに専門知識が要る場面が出てきます。

調停にかかる期間の目安はどれくらいですか。

月1回程度の期日を重ねるため、数か月から1年以上に及ぶことがあります。不動産の評価や特別受益の主張がからむほど長引きやすく、逆に預金中心で相続人が少ないと短く終わることもあります。

裁判所に払う実費は弁護士に頼むと変わりますか。

収入印紙や郵便切手など裁判所に納める実費は、自分で申し立てても弁護士に頼んでも同じです。変わるのは、弁護士に払う着手金と報酬金(代理人費用)が上乗せされる点です。

収入印紙や切手の正確な金額はどこで分かりますか。

申立手数料の収入印紙は亡くなった方1人につき定額で、連絡用の郵便切手は家庭裁判所ごとに額と内訳が異なります。準備の前に、申し立てる家庭裁判所の案内で最新の金額を確認してください。

調停で合意できなかったらどうなりますか。

調停が不成立になると、手続きは自動的に審判へ移り、裁判官が遺産の分け方を判断します。審判ではさらに主張や資料の整理が求められ、期間も費用も増える傾向があるため、調停の段階で折り合える点を探ることが現実的です。

遠方に住む相続人が相手でも申し立てられますか。

申立て自体は可能です。管轄は相手方の住所地の家庭裁判所などになるため、遠方の場合は書類の郵送や期日への出席方法を事前に確認しておくと負担を見積もりやすくなります。

参考・出典

  • 日本弁護士連合会「市民のための弁護士報酬ガイド 2008年度アンケート結果版」 https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/publication/pamphlet/attorneys_fee_guide.pdf
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