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親が亡くなり、きょうだいで実家をどう分けるか話し合おうとしたところ、10年以上音信不通の弟がいて連絡が取れない。遺産分割協議(相続人全員で遺産の分け方を決める話し合い)は全員がそろわないと成立しないため、預金の解約も不動産の名義変更も止まったまま動かない。こうした「相続人が行方不明」の場面で使うのが、家庭裁判所(家事事件を扱う裁判所)に不在者財産管理人(行方不明の人に代わって財産を管理する人)の選任を申し立てる制度です。
選び方の基準はシンプルです。行方不明の相続人が「生きているが居場所が分からない」なら不在者財産管理人、「生死そのものが長期間分からない」なら失踪宣告(法律上死亡したものとみなす制度)を検討します。どちらも家庭裁判所への申立てが必要で、特に不在者財産管理人は予納金(管理費用として先に裁判所へ納めるお金)の負担が重い点を、着手前に知っておく必要があります。
相続人が一人でも欠けると遺産分割協議は完結しない

遺産分割協議は、相続人全員の合意があってはじめて有効になります。一人でも参加していない、あるいは同意していない協議書は無効です。行方不明の相続人を除いて勝手に話を進めることも、勝手にその人の実印を押すこともできません。
そのため、預貯金の払い戻し、証券の移管、そして不動産の名義変更(相続登記)のいずれも先に進みません。相続登記は2024年4月1日から申請が義務化され、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。行方不明の相続人がいる状態を放置すると、この期限管理の面でも不利になります。名義変更にかかる費用の全体像は、相続手続きの費用相場をまとめた記事で確認できます。
行方不明の程度で使う制度が変わる(判断フロー)
「行方不明」といっても状況はさまざまです。まず、どの制度を使うべきかを次の順で切り分けます。
- 生死は分かっているが所在だけが不明 → 不在者財産管理人の選任を申し立てる
- 生死が7年間分からない(普通失踪) → 失踪宣告を申し立て、死亡とみなして相続を進める
- 戦争・船舶事故・災害などの危難に遭い、その後1年間生死不明(特別失踪) → 同じく失踪宣告を検討する
失踪宣告が確定すると、その相続人は法律上死亡したものとみなされるため、その人に子がいれば代襲相続(子や孫が代わって相続すること)が発生します。一方、不在者財産管理人は本人がまだ「生きている前提」の制度なので、管理人が本人の代わりに協議へ参加します。どちらを選ぶかで、その後の相続関係そのものが変わります。
| 比較項目 | 不在者財産管理人 | 失踪宣告 |
|---|---|---|
| 使う場面 | 生きているが所在不明 | 長期間(原則7年)生死不明 |
| 本人の扱い | 生存前提。財産を管理してもらう | 死亡したものとみなす |
| 相続への影響 | 管理人が本人に代わり協議へ参加 | 相続人から外れ、子がいれば代襲相続 |
| 主な負担 | 予納金(まとまった額になりやすい) | 官報公告など公示の期間と費用 |
広告この記事の結論:相続手続きのnocos
行方不明の相続人がいると遺産分割協議が完結せず、不在者財産管理人の選任には予納金など負担も伴うため、進め方を専門家が在籍する窓口に相談する方法もあります。
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不在者財産管理人とは|民法25条の要件

民法25条は、従来の住所や居所を去って戻る見込みのない人(不在者)に財産の管理人がいない場合、家庭裁判所は利害関係人または検察官の請求によって管理人を選任できる、と定めています。相続で協議を進めたい他の相続人は、この「利害関係人」にあたります。
選ばれる管理人は、事案によって親族が就くこともあれば、弁護士や司法書士などの専門家が選任されることもあります。専門家が就いた場合は、その報酬を不在者本人の財産(や予納金)から支払うことになります。管理人は選任後、本人の財産を保存・管理する立場に立ちますが、遺産分割のように本人の権利に大きく影響する行為をするには、別途裁判所の許可(権限外行為許可)が必要です。
申立ての流れと費用|予納金の負担が重い現実
申立ては、不在者の従来の住所地を管轄する家庭裁判所へ行います。おおまかな流れは次のとおりです。
- 申立書と添付書類(不在者の戸籍・戸籍の附票、不在の事実を示す資料、財産に関する資料など)を準備する
- 家庭裁判所へ申し立てる
- 裁判所が事情を確認し、管理人を選任する
- 必要に応じて予納金を納付する
- 遺産分割など本人の権利に関わる行為は、あらためて権限外行為許可を得る
費用の内訳の考え方は次のように整理できます。
| 費用項目 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 申立手数料(収入印紙) | 不在者財産管理人選任の申立てに必要 | 公式サイトで確認 |
| 連絡用の郵便切手 | 裁判所から関係者への連絡用 | 裁判所により異なる |
| 予納金 | 管理業務や専門家報酬に充てる前払い金 | 公式サイトで確認 |
実務で最も重い負担になりやすいのが予納金です。管理人が財産を管理していく間の費用や、専門家が就いた場合の報酬に充てるため、あらかじめまとまった金額を納めるよう求められることがあります。金額は事案の内容や不在者の財産状況によって変わり、裁判所ごとに扱いも異なるため一律ではありません。行方不明者に十分な財産があれば、その財産から管理費用がまかなわれて予納金が戻ってくることもありますが、財産が乏しい場合は申立てをした相続人の持ち出しになりやすい点は、正直に見込んでおく必要があります。正確な額は、申し立てる家庭裁判所の窓口で事前に確認してください。
選任されたあとにできること
不在者財産管理人が選任されても、それだけで遺産分割協議がまとまるわけではありません。管理人が本人に代わって遺産分割協議に加わり、内容を取りまとめたうえで、家庭裁判所の権限外行為許可を得てはじめて協議が成立します。裁判所は、不在者本人が不当に不利にならないか(たとえば法定相続分に見合う取り分が確保されているか)という観点で内容を確認します。
協議がまとまれば、預貯金の払い戻しや不動産の相続登記など、止まっていた手続きを進められます。行方不明だった本人がその後戻ってきた場合や、失踪宣告に切り替わった場合には、管理の任務が終了する扱いになります。
よくある質問
行方不明の相続人を除いて協議書を作ってもいいですか
できません。相続人が一人でも欠けた遺産分割協議は無効です。行方不明であっても、その人を含めて手続きを整える必要があり、そのための制度が不在者財産管理人の選任や失踪宣告です。
予納金は必ず必要ですか
事案によります。不在者本人に管理費用をまかなえるだけの財産があれば予納金を求められないこともありますが、財産が乏しい場合や専門家が管理人に就く場合は、まとまった額を求められることが多くなります。額は裁判所により異なるため、申立て先で確認してください。
予納金は戻ってきますか
本人の財産から管理費用や報酬をまかなえた場合、残った予納金が返還されることがあります。一方、本人の財産が少なく費用に充てられた場合は、戻らない部分が生じます。返還の可否と範囲は事案ごとに異なります。
失踪宣告と不在者財産管理人はどちらが良いですか
目的と状況で変わります。生死不明が長期間続き、相続関係を確定させたいなら失踪宣告、生きている前提で財産を管理しつつ協議を進めたいなら不在者財産管理人が向きます。失踪宣告は本人が死亡したとみなされるため、代襲相続など影響が大きい点に注意が必要です。
管理人には誰が選ばれますか
親族が選ばれることも、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることもあります。誰を選ぶかは家庭裁判所が事案に応じて判断します。専門家が就いた場合は報酬が発生します。
手続きは自分でできますか、専門家に頼むべきですか
申立て自体を本人が行うことも可能ですが、添付書類の収集や権限外行為許可、予納金の見込みなど判断の要る場面が多いため、司法書士や弁護士に相談しながら進める人も少なくありません。費用と手間を見比べて選ぶとよいでしょう。
参考・出典
- 民法(e-Gov法令検索、25条ほか) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 裁判所「不在者財産管理人選任」の申立てに関する案内ページ(申立費用・予納金・必要書類は各家庭裁判所で確認) https://www.courts.go.jp/
- 法務省「相続登記の申請義務化」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html

