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親の借金を引き継ぎたくなくて相続放棄をした。手続きは終わったはずなのに、数か月後、しばらく連絡を取っていなかった叔父から「こちらに督促状が届いたのだが、どういうことか」と電話がかかってくる。相続放棄でよく起きるのがこの場面です。放棄そのものは正しく完了していても、借金が消えたわけではなく、別の親族のところへ移っているのです。
相続放棄のデメリットを判断するときは、「放棄した本人に何が起きるか」だけでなく「放棄によって借金が次に誰へ移るか」までを一組で考える必要があります。放棄した人は最初から相続人でなかった扱いになる一方で、その分の権利と義務(プラスの財産もマイナスの借金も)は次の順位の相続人へそっくり移ります。連絡の順番を誤ると、事情を知らない親族が突然債権者から請求を受けることになります。以下では、借金がどの順番で移るのか、兄弟姉妹まで及ぶのはどんなときか、放棄しても残る負担は何かを、条文と費用の両面から整理します。
相続放棄のデメリットは本人より「次の順位の親族」に出る

相続放棄をすると、民法939条により「その相続に関して、初めから相続人とならなかったもの」とみなされます。これは家庭裁判所(家事事件を扱う裁判所)で申述(しんじゅつ=申し立て)が受理された時点で確定し、放棄した人にはプラスの遺産もマイナスの借金も一切引き継がれません。ここまでは放棄した本人にとってのメリットです。
問題は「いなかったことになる」結果です。相続人の一人が抜けると、その空いた枠は同じ順位の他の相続人に集まり、同順位が全員放棄すると相続権が次の順位へ丸ごと移動します。つまり借金だけを選んで消す手続きではなく、借金を含む相続人の地位を次へ回す手続きだ、という点が最大の注意点になります。放棄する側にはメリットでも、次に回された親族にとっては、思いがけず借金を背負うリスクという形でデメリットが現れます。
借金が移る順番|配偶者・子・親・兄弟姉妹
誰に移るかは、法律で決まった相続の順位に沿います。配偶者は常に相続人になり、それ以外は第1順位から順に相続人となります(民法887条・889条・890条)。上の順位が全員放棄して初めて、次の順位に権利が移ります。
| 順位 | 相続人 | 放棄すると次に移る先 |
|---|---|---|
| 常に相続人 | 配偶者 | 配偶者が放棄しても、血族の順位は別に進む |
| 第1順位 | 子(いなければ孫へ代襲) | 子が全員放棄 → 第2順位(親)へ |
| 第2順位 | 父母・祖父母などの直系尊属 | 直系尊属が全員放棄 → 第3順位(兄弟姉妹)へ |
| 第3順位 | 兄弟姉妹(いなければ甥・姪へ代襲) | 全員放棄 → 相続人不存在(財産清算人の手続きへ) |
広告この記事の結論:相続手続きのnocos
自分が放棄すると次の順位の親族に借金が移るため、連絡や手続きの進め方を専門家が在籍する窓口に相談する方法もあります。
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ここで見落としやすいのが、放棄は下の世代(孫や甥姪)へは引き継がれないという点です。相続人が死亡・欠格・廃除で相続できないときは、その子が代わりに相続する「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」が起きますが、相続放棄は代襲の原因になりません。したがって、子が全員放棄しても孫が代わりに借金を負うことはなく、権利は横(同順位)ではなく次の順位(親、次いで兄弟姉妹)へ縦に移っていきます。この構造を知らないと、「子が放棄すれば終わり」と考えて第2・第3順位への連絡を怠り、後日親族間のトラブルに発展します。
兄弟が相続放棄する場合のデメリットと連絡の順番

「相続放棄 兄弟 デメリット」で調べる人は、次の二つのどちらかの立場にいます。ひとつは、被相続人(亡くなった人)の兄弟姉妹として第3順位で相続人になり、自分が放棄すべきか迷っている立場。もうひとつは、亡くなった人の子どうし(きょうだい)で、全員で放棄するかどうかを相談している立場です。どちらの場合も、兄弟姉妹まで借金が回るのは「上の順位が全員放棄した後」だという点は共通します。
被相続人に子がなく親も既に亡くなっている、あるいは子と親が全員放棄した場合、借金は兄弟姉妹に移ります。兄弟姉妹が放棄すると、次は甥・姪(兄弟姉妹の代襲)へ、それも尽きれば相続人がいない状態になり、家庭裁判所が選任する相続財産清算人が処理する流れに入ります。ここで実務上のデメリットになるのが「連絡の負担」です。順位が下がるほど、日頃つき合いの薄い親族に「あなたに借金が回る可能性がある」と伝えなければならず、放棄が確定するたびに次の親族が3か月の期限に追われます。放棄を検討する段階で、次の順位の親族へ早めに事情を共有しておくことが、親族間のあつれきを避ける最大のポイントです。
放棄しても消えない負担|管理義務・撤回不可・期限
相続放棄には、借金を回避できる代わりに残る負担があります。デメリットとして必ず押さえておきたいのが次の3点です。
放棄後も残ることがある管理・保存の負担
放棄によって所有者ではなくなっても、亡くなった人の家に現に住んでいた、荷物を管理していたなど、その財産を実際に占有している相続人には、次に管理する人(他の相続人や相続財産清算人)へ引き継ぐまで、財産を適切に保存する義務が残る場合があります。空き家の解体費用や管理義務の具体的な扱いは、放棄した土地・空き家に絞った別の記事で詳しく説明していますが、「放棄すれば家のことから完全に手が離れる」とは限らない、と理解しておくことが大切です。
一度受理されると撤回できない
相続放棄は、家庭裁判所で申述が受理されると、原則として撤回や取り消しができません。後から「実はプラスの財産のほうが多かった」と分かっても戻せないため、放棄の前には借金と資産の両方を調べ、単純承認(全部引き継ぐ)や限定承認(プラスの範囲でだけ借金を返す)と比較したうえで判断する必要があります。承認や限定承認との違いは、それぞれの専門記事で確認できます。
3か月の熟慮期間という時間のデメリット
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内(熟慮期間)に申述しなければなりません(裁判所の案内による)。この期間は順位が下がるたびにリセットされる一方、資産と借金の調査を短期間で終える必要があり、判断を急がされます。3か月を過ぎそうなときの期間の伸長(延長)については、熟慮期間に特化した記事を参照してください。
費用のデメリット|放棄1件あたりの内訳と専門家報酬
相続放棄は手続き自体の実費は大きくありませんが、人数分かかる点と、専門家に頼むと報酬が上乗せされる点がデメリットになります。次は自分で家庭裁判所に申述する場合の実費の内訳です。
| 項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 収入印紙 | 800円 | 申述人1人につき |
| 郵便切手 | 裁判所により異なる | 連絡用。申述先の家庭裁判所で確認 |
| 戸籍・住民票などの実費 | 取得通数による | 続柄が遠いほど集める戸籍が増える |
申述先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。ここで見落としがちなのが「人数分かかる」という点で、次の順位まで含めて家族3人が放棄すれば、収入印紙だけで800円×3人=2,400円と、それぞれの戸籍実費が必要になります。順位が下の兄弟姉妹が放棄する場合は、被相続人の出生から死亡までの戸籍に加えて親の死亡が分かる戸籍まで必要になり、書類集めの手間と実費が子の放棄より重くなる傾向があります。
専門家に依頼するときの報酬の目安として、司法書士が相続放棄申述書を作成する場合は平均40,892円という調査結果があります(設例=死亡後3か月以内・戸籍等5通の交付請求+申述書作成。日本司法書士会連合会 2024年アンケート、有効回答752)。これに前述の実費が別途かかります。金額は相続人の数や戸籍の通数で変わるため、実際の負担は見積りで確認してください(2026年9月時点・公式資料で確認)。弁護士と司法書士のどちらに頼むかで費用が変わる点は、依頼先を比べる専門記事で整理しています。手続き全体の位置づけや他の相続手続きとの費用感を横並びで見たいときは、相続手続きの費用相場をまとめた記事もあわせて確認すると、放棄だけを切り取らずに判断できます。
放棄すべきか|条件から結論を出す判断フロー

放棄のデメリットを踏まえたうえで、進め方を条件ごとに整理します。
- 借金が資産を上回るか不明 → まず資産と借金を調べる。判断がつかないうちに3か月を過ぎそうなら、期間の伸長を検討する。
- 借金が明らかに多い・保証債務がある → 放棄が有力。ただし放棄後に借金が移る次の順位の親族へ、放棄する意向を先に伝える。
- プラスの財産のほうが多い、または特定の資産だけ残したい → 放棄ではなく単純承認や限定承認、遺産分割協議での調整を検討する。
- 自分が第3順位(兄弟姉妹)で、上の順位がまだ放棄していない → 自分に相続権が回ってきてから3か月を数える。先回りして焦って放棄しない。
放棄は「借金を消す魔法」ではなく「相続人の地位を次へ回す手続き」です。次に回される親族への影響まで含めて、単純承認・限定承認と比べたうえで選ぶのが、後悔しない進め方になります。
よくある質問
相続放棄をすると、私の子ども(孫)に借金が回りますか。
回りません。相続放棄は代襲相続の原因にならないため、子が放棄しても孫が代わりに相続することはありません。借金は下の世代ではなく、次の順位(親、次いで兄弟姉妹)へ移ります。
兄弟姉妹に借金が移るのはどんなときですか。
被相続人に子・孫がいない(または全員放棄)、かつ親などの直系尊属もいない(または全員放棄)ときに、第3順位である兄弟姉妹へ移ります。兄弟姉妹も放棄すれば、その子である甥・姪へ、それも尽きれば相続人がいない状態になります。
放棄したのに、家の管理をするよう言われました。おかしくないですか。
放棄で所有者ではなくなっても、亡くなった人の家に現に住んでいたなど財産を実際に占有していた場合は、次に管理する人へ引き継ぐまで保存の義務が残ることがあります。空き家の解体費用や管理義務の詳細は、放棄した土地・空き家に絞った記事で確認してください。
相続放棄をやめて、やり直すことはできますか。
家庭裁判所で申述が受理された相続放棄は、原則として撤回できません。放棄の前に資産と借金を十分に調べ、単純承認や限定承認と比較しておくことが大切です。
相続放棄をすると、相続税の基礎控除は減りますか。
減りません。基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を数えるときは、相続放棄した人も放棄がなかったものとして人数に含めます。放棄によって法定相続人の数が減って控除が小さくなることはありません。
放棄の費用は一人分だけで済みますか。
いいえ。収入印紙は申述人1人につき800円で、家族が複数人放棄すればその人数分と、それぞれの戸籍などの実費がかかります。次の順位の親族が続けて放棄する場合も、同様に人数分の手続きが必要です。
参考・出典
- 裁判所「相続の放棄の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
- e-Gov法令検索 民法(相続放棄の効果・順位に関する条文を含む) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の基礎控除額」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
- 日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施) https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/11/2a2e2c594bc4cd9ff2ca0f6d916db85e.pdf

