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親が亡くなり、通帳や不動産の権利証をひととおり集めて財産をざっと足したら、どうやら基礎控除(相続税がかからない一定額)を超えそうだと気づいた。ここで多くの人が立ち止まります。国税庁のパンフレットを見ながら自分で申告書を書けそうにも見えるし、税理士に頼むと費用がかかる。頼むべきか、自分でやれるのか。この分かれ目は「やる気」や「時間」よりも、相続した財産の中身(構成)で決まります。現金・預金・上場株が中心で相続人どうしの争いもないなら自分でやれる余地があり、土地・非自宅不動産・非上場の自社株・各種特例の適用があるなら税理士に任せた方が結果的に安全で得になりやすい、というのが結論です。以下で、その判断の基準を具体的に整理します。
その前に「申告が必要か」を確かめる

依頼するかどうか以前に、そもそも相続税の申告が要らない人もいます。判定の入口は基礎控除です。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します(国税庁 No.4152)。たとえば法定相続人が配偶者と子2人の計3人なら、3,000万円+600万円×3=4,800万円。相続財産の合計がこの額以下なら、原則として相続税はかからず申告も不要です。相続放棄した人も「放棄がなかったもの」として人数に数え、養子は実子がいれば1人まで(実子がいなければ2人まで)人数に含めます。
ただし注意点があります。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、「特例を使った結果として税額がゼロになる」場合は、申告することが特例適用の条件です。計算上ゼロだから何もしなくてよい、とは限りません。判定が微妙なときほど、この見極めに専門家の目が要ります。
税理士に依頼するメリットと、自分でやる場合の負担
税理士に頼む主なメリットは、金額の話ではなく「間違えないこと」と「払い過ぎないこと」に集約されます。
- 財産の評価を適正にできる。特に土地は、路線価や地形・利用状況による補正で評価額が大きく動きます。ここを高く見積もると税金を払い過ぎ、低く見積もると後で加算税の対象になり得ます。
- 使える特例を漏らさない。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減は要件が細かく、適用可否で納税額が桁違いになることがあります。
- 期限内に確実に出せる。相続税の申告・納付期限は「死亡を知った日の翌日から10か月以内」(国税庁 No.4205)。遅れると加算税・延滞税がかかる場合があります。
- 税務調査への備えになる。書面添付など、後日の問い合わせに耐える形で申告できます。
一方、自分でやる場合の負担は、費用が浮く代わりに時間と正確性のリスクを自分で背負う点です。戸籍の収集、財産の洗い出しと評価、申告書の作成、添付書類の準備をすべて自力で行い、評価ミスや特例の適用漏れがあっても気づけないことがあります。
財産構成でわかる税理士への依頼要否の判断フロー
次の順に見ていくと、自分の状況がどちら寄りかが判断できます。上から順に「はい」が一つでも当てはまれば、税理士への依頼を前向きに検討する目安です。
- 土地(宅地・農地・山林など)が財産に含まれるか。 含まれるなら評価が難しく、依頼寄り。自宅の土地に小規模宅地等の特例を使いたい場合は特に。
- 非上場株式(自社株・同族会社の株)があるか。 あるなら評価が非常に複雑で、依頼をほぼ前提に。
- 相続人の間で分け方が決まっていない、または揉めそうか。 未分割のままだと使えない特例があり、依頼寄り。
- 財産の種類が多い、または名義や把握に不安があるか。 洗い出し自体に手間がかかり、依頼寄り。
- 財産が現金・預金・上場株など評価が明快なものだけで、総額も基礎控除を少し超える程度か。 ここまで全部「いいえ」なら、自分で申告できる余地があります。
相続手続き全体のうち何を専門家に任せ、何を自分でやるかという全体像は、相続手続きの費用相場をまとめた記事で手続き別に確認できます。
自分で申告できるケース・任せた方がよいケース
財産構成ごとに、自力でやれるかどうかの目安をまとめます。あくまで一般的な傾向で、金額や人数によって変わります。
| 財産の中身 | 目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 預貯金・現金のみ | 自分でやれる | 残高証明で評価が確定し、計算が単純 |
| 上場株式・投資信託が中心 | 自分でやれる | 評価方法が公表され、証券会社の残高で確認できる |
| 自宅の土地・建物がある | できれば依頼 | 土地評価と小規模宅地等の特例で差が出やすい |
| 貸地・農地・山林・複数の不動産 | 依頼が無難 | 評価の補正が多く、漏れや過大評価が起きやすい |
| 非上場株式(自社株)がある | 依頼を前提に | 評価が高度で自力は現実的でない |
| 生前贈与・生命保険・特例が絡む | 依頼が無難 | 非課税枠や加算の計算を間違えやすい |
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土地や非上場株、特例の適用があるなら依頼が無難という判断フローに沿って、相続に詳しい税理士を無料で探せるサービスがあります。
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自分で申告する場合の具体的な手順や必要書類は別の記事で扱っています。この記事は「頼むか自分でやるか」の判断に絞っています。
依頼すると決めたときの費用の考え方

税理士に頼むと決めた場合、気になるのが費用です。ここで押さえておきたいのは、相続税申告の税理士報酬には、司法書士や行政書士のような公的な統計・基準が存在しないことです(日本税理士会連合会は報酬規定や報酬アンケートを公表していません。2026年9月時点・公式サイト確認)。
そのため「遺産総額の0.5〜1%が相場」といった数字がネット上に出回っていても、それは各事務所の料金表を寄せ集めた目安に過ぎず、公的な裏付けはありません。実際の料金は事務所ごとに「遺産総額に応じた基本報酬+不動産や相続人の数による加算」という形で決められています。したがって、金額を一つの相場で語らず、複数の事務所から見積りを取って比較するのが唯一の現実的な方法です。土地の数、相続人の数、特例の有無を同じ条件で伝えて見積もると、比べやすくなります。
よくある質問
財産が基礎控除ちょうどくらいです。税理士は必要ですか。
特例を使ってゼロになるタイプかどうかで変わります。特例なしで基礎控除以下なら申告自体が不要なことが多く、税理士は必須ではありません。特例を使ってゼロにする場合は申告が条件なので、要件確認のため一度は専門家に相談すると安心です。
自分で申告して間違えたらどうなりますか。
評価や税額に誤りがあると、後日の税務署からの指摘で追加の税金や加算税・延滞税がかかる場合があります。特に土地の過大・過少評価は起きやすいので、不動産があるなら専門家の確認を検討してください。
途中まで自分でやって、途中から頼めますか。
戸籍集めや財産の一覧づくりまで自分で進め、評価と申告書作成だけ依頼するといった分担は可能です。準備が進んでいるほど依頼側の手間が減り、見積りにも反映されやすくなります。
相続人が複数いて分け方が決まりません。先に頼むべきですか。
分け方が未確定でも申告期限は延びません。未分割のままだと使えない特例があるため、早めに相談し、間に合わないときの手当て(分割見込みの届出など)を含めて進めるのが安全です。
司法書士や行政書士に相続税申告を頼めますか。
相続税の申告書の作成・代理は税理士の独占業務です。不動産の名義変更(登記)は司法書士、書類作成は行政書士と役割が分かれるため、相続税がかかるなら税理士が窓口になります。
期限の10か月に間に合いそうにありません。
期限を過ぎると加算税・延滞税の対象になり得ます。まずは期限内に分かる範囲で申告・納付し、後から修正する方法もあるため、早い段階で税理士に相談してください。
情報は2026年9月時点のものです。税制は改正されることがあるため、実際の判断は最新の公式情報と専門家への確認のうえで行ってください。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.4152 相続税の基礎控除額 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4205 相続税の申告と納税 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
- 日本税理士会連合会(報酬規定・報酬アンケートの公表なし=公的な相場統計は存在しない) https://www.nichizeiren.or.jp/

