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親を亡くし、葬儀と四十九日を終えて役所回りが一段落したころ、多くの人がまず意識するのは相続税の申告期限「10か月」です。ところが、その手前に来るもう一つの期限を見落とすことがあります。亡くなった方自身の所得税を、相続人が代わりに申告する「準確定申告(じゅんかくていしんこく)」です。国税庁は、その期限を相続の開始を知った日の翌日から4か月以内と定めています(国税庁タックスアンサー No.2022「納税者が死亡したときの確定申告」)。10か月に比べて期間が短く、対象になる人も限られるため、気づかないまま過ぎてしまいやすい期限です。
準確定申告が必要かどうかは、複雑な条件を一つずつ照らし合わせる前に、「亡くなった方が、生きていればその年に自分で確定申告をするはずだった人か」という一点で大まかに判断できます。会社員や年金だけの生活で毎年申告していなかった方なら、原則として不要です。逆に、事業や不動産の家賃収入があった方、その年に不動産や株を売った方などは、準確定申告が必要になります。以下で、期限の数え方、対象になる人の条件、手続きの順序を具体的に整理します。
準確定申告は誰の何を申告する手続きか

通常の確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間の所得を、翌年の2月16日から3月15日までに本人が申告します。しかし年の途中で亡くなった場合、本人はその年の所得を申告できません。そこで、1月1日から亡くなった日までの所得を、相続人が本人に代わって申告・納税します。これが準確定申告です。「準」は、本来の確定申告に準じて行うという意味です。
申告するのはあくまで亡くなった方の所得税であり、相続人自身の所得税や相続税とは別の手続きです。ここを混同すると、期限も提出先も取り違えてしまいます。相続に関わる税金には、亡くなった方の所得にかかる「所得税(準確定申告)」と、受け継ぐ財産にかかる「相続税」という性格の異なる二つがあり、期限もそれぞれ独立して進みます。
準確定申告の期限|4か月の起算日と提出先
準確定申告の期限は、通常の確定申告のように翌年3月15日ではありません。相続人が「相続の開始があったことを知った日の翌日」から4か月以内です。亡くなった日そのものではなく、翌日から数える点に注意します。申告と同時に、算出された所得税の納付も原則この4か月の期限までに行います。
起算日は「相続の開始を知った日の翌日」
多くのケースでは、亡くなった日の翌日が起算日になります。具体的な日付で追うと次のようになります。
- 3月10日に死亡(同日に相続人が把握)
- 起算日は翌日の3月11日
- 準確定申告・納付の期限は、その日から4か月後の7月10日
一方で、同じ3月10日に亡くなった場合の相続税の申告・納付期限は、死亡を知った日の翌日から10か月以内なので翌年1月10日です(国税庁 No.4205)。同じ「死亡」を起点にしながら、準確定申告は夏前、相続税は年明けと、半年以上ずれることが分かります。この時間差が、準確定申告を先に片付けておくべき理由です。
提出先は、亡くなった方の亡くなった時点の納税地(原則として住所地)を管轄する税務署です。相続人の住所地ではない点に注意します。相続人が2人以上いるときは、原則として全員が連署した「確定申告書付表」を添えて提出します(各人が別々に提出する方法も認められています)。
準確定申告が必要になる人・要らない人(判断フロー)

準確定申告は、亡くなった方全員に必要なわけではありません。生前に確定申告をする義務があった人かどうかで、必要・不要が分かれます。次の順で確認すると整理しやすくなります。
- 亡くなった方に、給与や公的年金以外の所得(事業・不動産・譲渡など)があったか → あれば準確定申告が必要な可能性が高い
- 給与や年金だけだったか → 原則として不要。ただし高額な給与や複数の収入源がある場合は必要
- いずれにも当てはまらないが、医療費が多くかかっていたか → 申告義務はなくても、還付(納めすぎた税金の払い戻し)を受けられる場合がある
必要になる主なケース
次のような所得や事情があった年に亡くなった場合、準確定申告が必要になるのが一般的です。金額の基準がある項目は、税制改正で変わることがあるため、最新の基準額は国税庁のページで確認してください。
| 亡くなった方の状況 | 準確定申告の扱い |
|---|---|
| 個人事業主・フリーランスとして事業所得があった | 必要 |
| アパート・駐車場などの不動産所得(家賃収入)があった | 必要 |
| その年に土地・建物・株式を売り、譲渡所得があった | 必要 |
| 給与収入が高額だった(基準額あり) | 必要 公式サイトで確認 |
| 2か所以上から給与を受けていた | 必要となる場合が多い |
| 公的年金等の収入が一定額を超え、他の所得もあった | 必要 公式サイトで確認 |
| 給与または年金のみで、勤務先の年末調整や源泉徴収で完結していた | 原則不要 |
広告この記事の結論:税理士ドットコム
相続税より先に来る4か月の準確定申告の期限に間に合わせるため、早めに税理士へ相談する方法もあります。
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申告義務はないが還付を受けられるケース
申告の義務がなくても、準確定申告をすると納めすぎた所得税が戻ってくることがあります。代表例は、亡くなる前に医療費が多くかかっていた場合の医療費控除、生命保険料控除や地震保険料控除を年末調整で反映しきれていない場合などです。特に、入院や在宅療養で医療費がかさんでいたケースでは、還付が生じる可能性があります。この場合の申告は「還付申告」にあたり、4か月の期限に厳密に縛られない扱いですが、相続手続き全体の見通しを立てるうえでも、他の期限とあわせて早めに確認しておくと安心です。
手続きの流れと必要書類|相続人が連署する
準確定申告は、通常の確定申告書に「準」の性格を持たせて作成します。おおまかな流れは次のとおりです。
- 亡くなった方の1月1日から死亡日までの収入・経費・控除の資料を集める(源泉徴収票、年金の源泉徴収票、医療費の領収書、事業や不動産の帳簿など)
- 相続人を確定させ、全員で申告する形を整える
- 確定申告書に「準確定申告」であることを記載し、相続人が2人以上なら付表に各相続人の氏名・住所・相続分などを記入して連署する
- 亡くなった方の納税地の税務署へ提出し、算出された所得税を納付する
相続人が誰かを確定させる作業や、そのための戸籍の収集は、相続税や不動産の名義変更でも共通して必要になります。実家の名義変更など相続手続き全体にかかる費用の目安もあわせて把握しておくと、準確定申告だけを切り離さず、限られた時間の中で優先順位を付けやすくなります。事業所得や不動産所得があって帳簿の集計が必要な場合は、税理士に依頼することも選択肢になります。
相続税の10か月とどう違うか(相続 確定申告の全体像)

「相続 確定申告」という言葉で検索する方の多くは、準確定申告(所得税)と相続税を一緒に思い浮かべています。両者は目的も期限も別なので、次のように分けて考えると混乱しません。
| 項目 | 準確定申告(所得税) | 相続税の申告 |
|---|---|---|
| 何にかかる税か | 亡くなった方のその年の所得 | 相続人が受け継ぐ財産 |
| 期限 | 知った日の翌日から4か月以内 | 知った日の翌日から10か月以内 |
| 申告する人 | 相続人(原則全員が連署) | 財産を取得した相続人など |
| そもそも申告が要るか | 亡くなった方に申告義務があった場合 | 遺産が基礎控除を超える場合 |
相続税には基礎控除があり、その額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します(国税庁 No.4152)。例えば法定相続人が3人なら、3,000万円+600万円×3人=4,800万円までは相続税がかからず、申告も原則不要です。つまり相続税は「一定の財産額を超えた人だけ」が対象ですが、準確定申告は財産額とは無関係に、亡くなった方の所得の中身で必要・不要が決まります。相続税がかからない家庭でも準確定申告は必要、という組み合わせは珍しくありません。ここが取り違えやすい最大のポイントです。
よくある質問
準確定申告をしないと、どうなりますか。
申告義務があるのに期限までに申告・納税しなかった場合、本来の所得税に加えて加算税や延滞税がかかることがあります。金額の大小にかかわらず、義務がある場合は4か月以内の提出が原則です。判断に迷うときは、亡くなった方の前年の確定申告の有無を手がかりに、税務署や税理士へ早めに確認してください。
会社員だった親でも準確定申告は必要ですか。
給与のみで、勤務先の年末調整で完結していた場合は原則不要です。ただし、給与収入が高額だった、副業や不動産の収入があった、その年に不動産や株を売っていた、といった事情があれば必要になります。まずは所得の種類を確認するのが先決です。
相続人が複数いる場合、それぞれ別に出すのですか。
原則は、相続人全員が連署した付表を添えて1通で提出します。事情により各相続人が個別に提出する方法も認められていますが、その場合は他の相続人へ申告内容を通知する必要があります。実務上は連署でまとめる方が行き違いが少なくなります。
医療費が多かった場合、申告した方が得ですか。
亡くなる前に医療費がかさんでいた場合、医療費控除により納めすぎた所得税が戻ることがあります。義務としての申告ではなく還付を受けるための申告になりますが、領収書が残っているなら試算してみる価値があります。金額は個々の状況で変わるため、一律に得とは言い切れません。
準確定申告と相続税、どちらを先に進めるべきですか。
期限が先に来る準確定申告(4か月)を先に片付け、その後で相続税(10か月)へ進むのが自然な順序です。ただし相続人の確定や財産の把握は両方に共通するので、資料集めは並行して始めておくと後半が楽になります。
期限の4か月に間に合いそうにありません。延長できますか。
準確定申告の期限は法律で定められており、事情による個別延長は原則として想定されていません。間に合わないおそれがあるときは、放置せず早い段階で税務署や税理士に相談し、対応方針を確認してください。本記事の期限や要件は最新の取り扱いと異なる場合があるため、実際の判断は国税庁の公式ページで確認することをおすすめします。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.4205「相続税の申告と納税」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の計算」(基礎控除) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2022「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」 https://www.nta.go.jp/

