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親が亡くなり、実家の土地と預金をどう分けるかで兄弟の話し合いがまとまらない。そうしているうちに、相続税の申告期限が近づいてきた。分け方が決まらないのだから、税金の申告もそれまで待ってもらえるはずだ、と考えたくなります。ところが相続税の申告と納税の期限は、遺産分割が終わっているかどうかとは無関係に進みます。分けられていなくても、期限までに申告して納税しなければなりません。
ここで判断の基準になるのは、次の一点です。未分割のまま期限を迎えるときは、いったん法定相続分(法律で定められた取り分)で計算して申告・納税し、そのうえで「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を添えておくかどうかで、後から受けられる軽減の大きさが変わります。この書類を出さずに期限を過ぎると、本来使えたはずの大きな特例を取り戻せなくなるおそれがあります。揉めていても手だけは打っておく、というのがこの記事の要点です。
遺産が未分割でも相続税の申告期限は10か月で延びない

相続税の申告と納税の期限は、被相続人(亡くなった方)が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です(国税庁 タックスアンサー No.4205)。たとえば1月6日に亡くなったことを知った場合、その年の11月6日が期限になります。この期限は、遺産分割協議(誰が何を相続するかの話し合い)が長引いていても延びません。
分け方が決まっていない状態を「未分割」といいます。未分割のまま期限を迎えるときは、各相続人が法定相続分どおりに遺産を取得したものと仮定して相続税を計算し、それぞれが申告・納税します。実際の分け方とは違う「仮の申告」ですが、これを怠ると加算税や延滞税がかかる場合があります。話し合いが続いていても、期限内の申告と納税だけは先に済ませておくのが安全です。
相続放棄や名義変更など相続手続き全体にかかる費用の目安は、相続手続きの費用相場の記事で職種別・手続き別に整理しています。相続税の申告はそのうちの一つで、期限が最も重いものだと考えてください。
未分割のままだと使えなくなる二つの特例
未分割で困るのは、単に「仮の申告」をする手間だけではありません。相続税を大きく下げる代表的な特例が、未分割の状態では使えないという点が本質です。次の二つは、いずれも「誰がその財産を取得したか」が確定していることが前提になっているためです。
配偶者の税額軽減
配偶者が取得した遺産については、相続税を大きく軽減する仕組みが用意されています。ただしこれは「配偶者がその財産を取得したこと」が前提です。未分割の段階では配偶者の取り分が確定していないため、申告のときにはこの軽減を適用できません。結果として、本来なら配偶者分にはほとんど税がかからないはずのケースでも、いったんは軽減なしで計算した税額を納めることになります。
小規模宅地等の特例
被相続人が住んでいた宅地などについては、一定の面積まで評価額を大きく減額できる特例があります。これも、その宅地を誰が取得して住み続けるのか、あるいは事業を継ぐのかといった取得者の要件で判定するため、未分割では適用できません。自宅の土地の評価が下がらないまま課税されると、税額は大きく変わります。
この二つが使えないと、未分割のときに納める税額は、分割が決まった後に確定する本来の税額よりかなり重くなりがちです。だからこそ、後から取り戻すための手続きを申告と同時に仕込んでおく必要があります。
申告期限後3年以内の分割見込書とは

「申告期限後3年以内の分割見込書」は、未分割で申告するときに申告書に添付しておく書類です。趣旨は「今は分けられていないが、期限からおおむね3年以内には分割する見込みがあります」と申し出ておくことにあります。この書類を付けておくと、後日実際に遺産分割がまとまったときに、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例をさかのぼって適用できる道が残ります。
逆に、この書類を添えずに未分割のまま申告してしまうと、後から分割が決まっても特例を適用できなくなるおそれがあります。分け方でもめている最中でも、申告書に一枚添えておくだけで将来の選択肢を残せる、費用のかからない防御策だと考えてください。
未分割で期限を迎えるときの流れ(判断フロー)
- 期限(10か月)までに分割が終わりそうか確認する。終わりそうなら通常どおり分割後の内容で申告する。
- 終わりそうにないなら、法定相続分で仮に計算して申告・納税する。特例は使わない金額で納める。
- その申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付する。ここを忘れないことが最重要。
- その後3年以内に分割がまとまったら、分割が確定した後の定められた期間内に「更正の請求」(払いすぎた税を返してもらう手続き)を行い、特例を適用した税額に修正して差額の還付を受ける。
更正の請求ができる期間は分割が確定してから一定の期間内と定められています。具体的な月数は手続きの時期によって扱いが分かれるため、実際の申告前に税務署または税理士へ確認してください。[[要確認: 分割成立後の更正の請求の期限(分割の翌日から4か月)の根拠URL]]
未分割で申告するといくら重くなるか(基礎控除で見る)
相続税がかかるかどうかは、まず基礎控除額で判定します。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です(国税庁 タックスアンサー No.4152)。相続人が配偶者と子2人の合計3人なら、次のようになります。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 基礎控除の定額部分 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 相続人数による加算 | 600万円 × 3人 | 1,800万円 |
| 基礎控除額の合計 | 3,000万円 + 1,800万円 | 4,800万円 |
広告この記事の結論:税理士ドットコム
未分割のままだと配偶者控除や小規模宅地の特例が使えないため、申告期限後3年以内の分割見込書の手続きを税理士に相談する方法もあります。
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遺産の総額がこの4,800万円を超えると相続税の申告が必要になります。ここまでは未分割でも同じです。問題はその先で、未分割のときは配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も外した状態で税額を計算し、法定相続分(配偶者2分の1、子はそれぞれ4分の1)で按分して各自が納めます。
本来なら配偶者分は税額軽減でほとんど残らず、自宅の土地も評価が下がるはずのところを、その効果を反映しないまま納税することになります。つまり未分割の申告では、実際に払うべき最終的な税額よりも多めのお金を先に用意して納める必要がある、という資金繰りの負担が生じます。分割がまとまれば更正の請求で戻せますが、それまでは立て替えている状態です。相続税の税率区分は財産額によって変わるため、実際の納税額は個別に試算が必要です。[[要確認: 相続税の速算表(税率・控除額)の数値と出典]]
3年以内にも分割がまとまらないとき
相続人の対立が深く、申告期限後3年以内にも遺産分割が終わらないことがあります。その場合は、3年の期限までに「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を税務署へ提出しておくと、特例を適用できる余地をさらに残せます。訴訟や調停が続いているなど、当事者の努力だけでは分割できない事情があるケースを想定した仕組みです。
ただし、この承認申請にも提出の期限と要件があり、単に話し合いが進んでいないというだけでは認められないことがあります。3年が近づいても分割の見通しが立たないときは、早めに税理士へ相談して申請の要否と様式を確認してください。[[要確認: 承認申請書の提出期限と国税庁の様式ページURL]]
未分割の相続税で失敗しないための要点

ここまでを実務の順番でまとめると、次の三つに集約されます。第一に、揉めていても10か月の期限内に法定相続分で申告・納税する。第二に、その申告書に必ず分割見込書を添付する。第三に、分割が決まったら更正の請求で払いすぎを取り戻す。この流れを崩さなければ、話し合いが長引いても税制上の不利は最小限に抑えられます。
相続税の申告そのものを税理士に頼むかどうかの判断は、遺産の内容や相続人の数によって変わります。未分割で特例の後追い適用まで見据えるケースは手続きが複雑になりやすいため、見積りを複数取って比較するのが現実的です。税理士報酬には公的な相場統計がなく、事務所ごとに遺産総額に応じた料金表があるため、内容と金額の両方で見比べてください。
よくある質問
遺産が未分割でも相続税を申告しないといけませんか。
必要です。分け方が決まっていなくても、死亡を知った日の翌日から10か月以内に、法定相続分で取得したものとして計算して各相続人が申告・納税します。期限は分割の進み具合では延びません。
未分割だと配偶者の税額軽減は本当に使えないのですか。
申告の時点では使えません。取得者が確定していないためです。ただし分割見込書を添付しておけば、後日分割がまとまったときにさかのぼって適用し、更正の請求で差額を取り戻せる道が残ります。
分割見込書を出し忘れたらどうなりますか。
後から分割が決まっても、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用できなくなるおそれがあります。未分割で申告するときは、この一枚の添付を最優先で確認してください。
3年以内に分割がまとまらない場合はどうすればよいですか。
訴訟や調停が続いているなどのやむを得ない事情があるときは、3年の期限までに承認申請書を提出しておくことで、特例を適用できる余地を残せる場合があります。要件と期限があるため、早めに確認が必要です。
分割が決まったら払いすぎた税金は戻りますか。
戻せる場合があります。分割が確定した後、定められた期間内に更正の請求を行い、特例を反映した税額に修正すれば、多く納めていた分の還付を受けられます。
期限を過ぎてから分割した場合、延滞税はかかりますか。
未分割のまま期限内に法定相続分で申告・納税していれば、その本税について期限を守っていることになります。分割後の更正の請求は還付を求める手続きなので、期限内納税を済ませておくことが延滞を避ける前提になります。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.4205「相続税の申告と納税」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の計算(基礎控除額)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
- [[要確認: 配偶者の税額軽減 国税庁タックスアンサーのページURL]]
- [[要確認: 小規模宅地等の特例 国税庁タックスアンサーのページURL]]
- [[要確認: 「申告期限後3年以内の分割見込書」の国税庁 様式・記載要領ページURL]]
- [[要確認: 「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」の国税庁 様式ページURL]]

